第四話 加護
俺は宿に戻ると部屋に誰も入れないように、と伝えて部屋に入った。
「《召喚・フレア・スカーレット》」
俺の呼びかけに答え、フレアが現れた。
さっきと同じで全裸だった。
「どうやら私は生き返ったようだな」
フレアは落ち着いて状況分析している。
全裸だというのに、堂々としている。
「それにしても、君は何者だ? 私を使役できるほどの死霊術師なんて、この世に何人いることか……」
「何者って言われてもな。普通の死霊術師だよ」
「普通の死霊術師だと? 普通な訳があるか! 死霊術師が使役できる死者の格は術師の格で決まる! 私はこれでも、炎帝龍と相打ちになれる程度の実力は持っている。つまり、君の格は私よりも、炎帝龍よりも上と言うことだ!」
俺の格が炎帝龍よりも上?
それに、死霊術師の使役できるアンデットの格が、術師の格で決まるなんて初めて聞いたぞ、
「どういうことだ? それほどの力は感じないし、私よりも弱いだろう。私を使役するほどの力の源は…………加護、か?」
「加護?」
「そうだ。たとえば私は炎神の加護を持っている。それは精霊でも、神でも、悪魔でも。加護があれば
「うーん、無いと思うんだけど……」
加護なんて聞いたことがない。
いや、ガルバリンが何かを言っていた気がするが、覚えてないな。
「なら、確かめてみよう。加護は加護に共鳴する。私の加護で君の加護を探し出してみよう。私と握手してみてくれ」
「わかった」
フレアと握手した。
するとフレアの右手の甲に《赤い剣の紋章》が浮かび上がった。そして俺の右手の甲には《黒い髑髏の紋章》が浮かび上がった。
「ッ! こ、これは凄い! 凄いぞ!」
その紋章はどうやら凄かったらしい。
フレアは興奮して、握った右手をぶんぶんと振った。
「君の加護は《死の女神》の加護だ! だが、君と死の女神ペルセポネにどんな関係が?」
どうやら俺の加護は《死の女神》だったらしい。
どんな関係か。
「実はついさっき、ペルセポネに生き返らせてもらったんだよね」
「えっ!?」
「それで王国に来て、君の骨を見たらとても美しかったから………」
「んんっ!?」
「君の骨を見て思ったんだ。きっと君はとても美しく、そして努力家で、とても強くて………」
「ま、まままっ、待ってくれ! 話が脱線してるぞ!」
「あっ」
いかんいかん。いつの間にか骨の話をしてた。
ほら、フレアも顔を真っ赤にしてる。
きっと怒ってるんだろう。
「俺もなんでペルセポネの加護が与えられたのか、よくわからないんだ。俺が帝国で勇者に裏切られて、死んだんだけど、気がつくと灰色の世界にいて……」
「ちょ、待て待て! 灰色の世界って、全ての色が灰色の世界のことか!?」
「そ、そうだけど……」
「それは死後の世界、というよりも神の世界だ! 君は神界に入れたのか!」
神界? 聞いたことがないな。
「ええとだな、説明しにくいんだが、普通の人間では入れない世界なんだ! 私でも入ることができなかった! そこに入れたということは、神に気に入られ、神の力を使うことができるようになるんだ! 凄い、凄いぞ!」
よくわからないけど、凄いことらしい。
フレアは興奮して、俺の両手を握ってぶんぶんっ、と上下に振った。
それと同時にフレアのおっぱいもぷるんぷるんっと揺れて、俺の視線はそっちに釘付けになっていた。
だが流石に失礼なので、頑張って目を逸らした。
「そ、そうなのか。てことは、俺が君を甦らせられたのはペルセポネのおかげなんだな」
「ああ。だが、死の女神に気に入られるというのは凄く難しいことだ。これは君の実力と言っても良いよ」
「そうか、ありがとう。優しいんだな、フレアは」
「事実を言ったまでだよ。神はただの人間には興味を示さない。君はきっと、素晴らしい人間なんだろうな」
慈愛の目で俺見るフレア。
すると当然、すっと真面目な顔をした。
そして俺の前に跪き、片膝をつく。
「私の忠誠を貴方に捧げよう」
「っ。急にどうしたんだ?」
「私は貴方の死霊術で生き返った。ならば、貴方に忠誠を誓うのは当然のこと」
「だがフレアは王国の騎士だろ? いいのか、そんなことをして……」
「私の忠誠を誓った王はすでにいない。ならば、私が誰に忠誠を捧げようとも文句は言われないさ」
「………分かった。俺も丁度、仲間を探してたんだ。元々、君の骨に惚れてネクロマンスしたんだからね。だから、これからよろしく頼むよ、フレア」
俺がそう応えると、フレアは俺の手の甲にキスをした。
これが正式な騎士団の忠誠の儀式だ。
今、ここに、フレア・スカーレットの忠誠は俺に捧げられた。
この忠誠の儀式が後に、伝説の始まりとして語り継がれることを二人はまだ知らない。
「それにしても、流石は騎士団長だな。いきなり全裸でも動じないとは」
「ん? 全裸? ……………………………きゃあああああああああっっ!!!」
フレアの可愛らしい絶叫が響いた。
やけに堂々としてるなー、と思ったら気づいてなかったのか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ブックマークや評価(★★★★★)などよろしくお願いします。
本日、あとは17時に投稿します。