第十五話 帝国崩壊⑥
帝都は再び、混乱が渦巻いた。
市民達から見れば、無数に押し寄せるアンデットの大群だ。
しかも軍は役に立たず、騎士団は城から離れず、頼みの勇者も一撃で負けた。
他の戦士達も逃げていき、冒険者も自分達の身を守るので精一杯。
アンデットはそれでも進む。
無数の屍を踏み越えて。
屍を仲間に引き入れて。
一体。また、一体と仲間が増えていく。
『さあ。進みなさい。主人の敵は、すぐ目の前です』
進むのだ。
我らの敵は、城にいる。
一方その頃、ガルバリン。
「敵前逃亡とかありえないんですけど!」
「神が許しませんよ!」
吹き飛ばされたが、起き上がり走っていた。
アンデットが襲う正門の、反対側に。
「うるせえ! 俺はまだ、死ぬ気はねえぞ!」
もはやガルバリンの中に、アンデットを倒して英雄になるというプランは崩壊していた。
そもそも、カルナの魔法が効かなかった時点で、こんな作戦は無意味だ。
「どこに行くんだよ、ガルバリン!」
「殺しに行くんだよ! こうなった原因の、アレンをなぁああああああ!!!」
はあ!? とディアスは反応する。
何を言っているんだ、とカルナは思う。
頭おかしくなってるんですけど、とエリーは言う。
「いや、生きている! 必ずな! 奴は王国にいる!」
「なんでそんなことがわかるんだよ!」
「なんとなくだ! いいから着いて来い! あの野郎を、殺してやるんだよぉおおおおお!」
ガルバリンは暴走気味に走った。
ディアス達は目を合わせて、少し悩んだが着いていく事にした。
この帝都にいるとアンデットに襲われそうだし、それならワケのわからないガルバリンに着いて行った方がいい。
いざとなれば、ガルバリンに命令された事にすればいい。
この四人に仲間意識というものは無かった。
自分のために、全ては自分のために。
アンデットの大群は皇城を包囲し、騎士団を突破していた。
もはや、この城は落とされたも同然だ。
「ひぃ!」
そこに現れたのは、一体のアンデットだった。
肌色は薄黒く、髪も薄い桃色。だが、その瞳は紅く輝き、牙が見え、蝙蝠のような翼も生えている。
吸血鬼、いや、吸血鬼女王だ。
「ふふふ。いいザマね。アンドルフ」
「な、なぜワシを知っているような口振りを……」
「あら。私を忘れたかしら?」
まあ、それも仕方ないわね。と吸血鬼は笑った。
「私は死の女神ペルセポネ。今はこんな姿をしているけどね」
そんなことはありえない。
だが皇帝は否定し切れなかった。
この圧力、神々しさまで感じさせる殺気。
何度も見たことがある、女神の銅像と、全く違うはずの吸血鬼の姿が重なった。
「な、なぜです! なぜなのです! 我らは貴女を信仰して来た、崇めて来た! それなのに、何故滅ぼされなければいけないのですか!?」
そして、泣きすがった。
意味がわからない。
何故帝国が滅ぼされないといけないのだ。
「何故、ねえ。わからないの?」
「わ、わかりませぬ」
「はあ。これだからバカは困るわ」
やれやれ、と首を振るペルセポネ。
「私が帝国を滅ぼす理由はたった一つ。お前達がアレンを陥れたからです」
「………は? なぜ、あんな小僧を」
「帝国はアレンのおかげで成り立っていたんですよ?」
「アレンのおかげ? どういうことです、なぜアレンなどが……」
「本当にわかっていないのですね」
皇帝は、いや、帝国は分かっていない。
アレンは無数のアンデットを帝国中に配置して、帝国の動きを監視していた。
これまでは問題が起これば、すぐさまにアレンが皇帝に伝え、対策をしていたり
今回の一件も、アレンがいれば襲撃に備えることができたのだ。
だが皇帝はそれを知らなかったどころか、アレンが帝国にどれほど貢献して来たのかも知らなかった。
ーーーー無能。
ペルセポネは真っ赤な鞭を握り、皇帝に振るう。
「まあ、いいです。これから貴方には、アレンが味わった痛みを、悲しみを味合わせてあげますよ」
ふふふ、と笑顔で鞭を振るうペルセポネの姿は、女神というよりも、邪神のようだった。
皇帝の悲鳴が皇城に響き渡る。
しかし、誰も皇帝を助けには来ない。
もはやこの帝都には、生きている者はいないから。
帝国はこの日、皇帝が討ち取られた事で完全な崩壊を迎えた。
以降、帝国の領土を取り合って周辺諸国で戦争が起きるのだが、それはまた後の話だ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ブックマークや評価(★★★★★)などよろしくお願いします。
誰も信用できないので絶対に裏切れない女奴隷を買うことにした〜帝国に裏切られた俺は奴隷たちに癒されながら、英雄になります〜
【一章完結しました】
【現在休載中】
https://ncode.syosetu.com/n8037gs/
是非、読んでください。




