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兎田明里は愛してる
アスファルトの枯葉が舞うのを見て、マフラーをしてくるべきだったと後悔した。自転車通学に於いて、風は肌を刺す。それはさながら、大紅蓮地獄だ。ただ、自転車通学に於いて、基本的にマフラーは邪魔だ。風に煽られて顔にかかるし、或いは、飛んでいってしまうかもしれない。きっと、マフラーをしてくれば、それはそれで後悔したのだろう。何だか、私の人生そのものの様だ。
(一)
狐森征が会いたいと言ってきた。
征くんは私の彼氏だ。今まで付き合った誰よりも良い感じがする。ただ、最近、デートに誘うのはいつも私からだった。だから飽きられちゃったのかな、と少しだけ思ってた。でもそうじゃないみたい。よかった。今日はなんて良い日なんだろう。
今までの彼氏に対しては、心の中のどこかに何時別れてもいいやという気持ちが多分あったと思う。けれど征くんは違う。ずっと一緒に居たい。離したくない。