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犬割り騎士  作者: ドラキュラ
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第三十一章:騎士達と別れ

 意識を失った少年は夢を見ていた。


 夢の中で自分は年齢を重ねており、冒険者となって村を出た。


 冒険者となった自分は幾つもの冒険をしたが、誰かを探すような素振りも見せており少年は不思議だった。


 しかし、誰を探しているのか・・・・それは夢の中で自分が言った言葉から解った。


 『我が主人・・・・私は貴方を護る騎士です。ですが貴方様を御護りする”騎士団”は、未だに創設できておりません』


 これを聞いて少年は自分が騎士団を創設せんが為に旅をしていると解ったが、同時に青年達が何処へ行ったのか気になった。


 何せ青年は国王陛下から領土を任された領主の身。


 ここを考えれば自然と自領に居る筈だが・・・・夢の中で自分を見る限りそうではないらしい。


 だが、この点は直ぐに察するものがあったので少年は疑問を直ぐ消した。


 そんな中・・・・夢の中の自分は、旅を続ける中で戦友と言える人物達と出会い、そして旅を続けて行く中で・・・・騎士団を築き上げていった。


 そして・・・・ついには海を渡った末に青年達と再会を果たした。


 再会を果たした青年達は年を取っていたが、それでも出会った時と変わらぬ感じでいた。


 それに夢の中の自分は安堵しつつ・・・・青年に剣を捧げたが・・・・ここで少年は声を掛けられて目を覚ました。


 「漸く目覚めたか・・・・・・・・」


 少年は自分の枕元に座る青年から声を掛けられて体を起こそうとしたが、青年の横に立っていた小聖職者が抑えた。


 「起き上がってはいけません。傷に障ります」


 小聖職者に言われて少年は起き上がらせようとしていた体を再びベッドに戻した。


 ただ小聖職者に怪我は大丈夫か尋ねた。


 「心配するな。こいつも馬鹿じゃない」


 青年は許可も得ず小聖職者の服の袖を上げた。


 当然のように小聖職者は抗議の声を上げるが少年には小聖職者が服の下に皮鎧を着ているのを見て青年の言葉に納得した。


 何せ皮鎧はメイルなどの攻撃に対して多少だが衝撃を緩和できるのだから。


 小聖職者が無事な事に安堵した少年は自分が何処に居るのか知る為に視線を周囲にやった。


 簡素な造りの部屋には十字架などが立て掛けられており、それを見て少年は何処に居るのか分かった。


 「ここは・・・・修道院の中・・・・ですか」


 「あぁ・・・・修道士達が用意したんだよ」


 青年の言葉に少年は「そうですか」と相槌を打ちながら魔獣の事を尋ねた。


 「気になるのか?」


 「貴方が倒したのは見ましたが・・・・改めて確かめたいんです」


 「・・・・そういう所も似ているな」


 あいつに、と青年は言いながら椅子から立ち上がると背中を屈めた。


 「おら、俺の背中に乗れ」


 「え?そんな・・・・・・・・」


 「良いから乗れ。じゃないと・・・・小娘が騒ぐんだよ」


 「・・・・・・・・」


 少年はチラッと小聖職者を見た。


 小聖職者は温和な笑みを浮かべたが、少年には自分が寝ている間に青年と激しい口喧嘩を繰り広げた末に「妥協案」を2人で出したと察した。


 「では・・・・御言葉に甘えます」


 「あぁ、そうしろ」


 ぞんざいな口調で青年は言いつつ自身の背中に乗った少年を逞しい腕で下から支えるとドアの方へ歩き出した。


 だが、それより早く小聖職者がドアを開けた。


 「そういう所は”気遣い上手”だな」


 「これ以外にも気遣い上手です」


 「ケッ!何時もは”余計な世話”なんだよ」


 「なん・・・・コホンッ・・・・後で覚えていて下さい」


 小聖職者は青年の言葉に怒声を上げようとしたが、少年が居るからか怒りを抑えた。


 もっとも青年には関係ないのだろう。


 「てめぇの事なんざぁ知るか」


 ここぞとばかりに小聖職者を挑発するような台詞を言いながら悠々とドアを潜り外へと向かった。


 そんな青年の背中で揺られながら少年は別れる瞬間が頭に過ぎったのだろう。

  

 僅かに痛んだ胸の痛みを我慢するように歯を食い縛った。

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 青年に背負われて少年が修道院の外に出ると人集りで一杯だった。    


 皆、思い思いの感想を言い合ったり、祈りを捧げたりと千差万別だった。


 しかし、少年は当然と思った。


 何せ修道院の外を見渡すと至る所に飛び散った鮮血が見えたのだから。


 「・・・・・・・・」


 少年は昨夜の激闘を思い出しながら魔獣を探したが、直ぐ見つかった。


 魔獣の側には鷲鼻の騎士、壮年の騎士、白髪の騎士、そして従騎士の青年が立っていた。   


 「やぁ、起きたかい」


 鷲鼻の騎士が声を掛けてきたので少年は青年に背負われたまま挨拶をした。


 「君の性格からして確認したがるだろうと思ってね。始末しなかったよ」


 「ありがとうございます・・・・・・・・」


 少年は礼を言いながら青年の背中越しに事切れた魔獣を見た。


 魔獣の大きさは雄牛並みで、山羊のような角に白と黒の斑模様が全身にあった。


 耳は猫みたいに三角形だが兎みたいに長いのも特徴だったが少年は疑問に思った。


 『最初に見た時と・・・・違う』


 「気が付いたかい?」


 鷲鼻の騎士に言われて少年は頷いた。

  

 「君が見た魔獣と、こいつは同じさ。ただ・・・・まだ、こいつは“完全体”ではなかったんだよ」


 「え?ですがフランシス修道院長は・・・・・・・・」


 「それは奴等の勘違いさ。まったく自分達の飼い犬の成長過程も知らないとは笑い種だよ」


 鷲鼻の騎士はニヒルな笑みを浮かべながら言った。


 「しかし、我が主人の手で倒された後で完全体になったんだよ」


 死ぬ間際になって完全体になる。


 それを知り少年は憐れみを魔獣に抱いたが、青年は倒した魔獣を見向きもせず鷲鼻の騎士に問い掛けた。


 「首尾はどうだった?」


 「問題ありません。ただ“事後報告書”を早く出すようにと宰相閣下の部下から言われました」


 貴方様の「領民」からの声も添えてと鷲鼻の騎士が言うと青年は嘆息した。


 「・・・・“書類との戦争”は大嫌いだ」


 「貴方様の“大望”を叶える為です。諦めて下さい」


 鷲鼻の騎士に言われた青年は再び嘆息したが、直ぐ気持ちを入れ替えると集まっていた村民達に宣言した。


 「今日より俺が聖教に代わって村を治める。これは宰相閣下も承認されている」


 後日、改めて証明書の類は送られると青年は戸惑う村民達に言った。


 「いきなりの話で戸惑うのは解る。だから暫く俺達は滞在する。その際に何か不満や問題などがあったら遠慮なく言ってくれて構わない。以上だ」


 青年の宣言に村民達は戸惑いこそ隠せなかったが魔獣を飼い、そして同じ村民をオグル達にした聖教に義理立てする気なんてサラサラないのだろう。


 最終的には何も言わず新たな領主となった青年に深々と頭を下げた。

 

 「では領主として最初の命令だ。男達は大量の薪を用意しろ。女子供は“鎮魂歌”の用意をしろ」


 薪と鎮魂歌と聞いて少年は直ぐ察するものがあった。


 『魔獣とオグル達を・・・・燃やすんだ』


 亡骸を燃やす。 

  

 これは死後に行われる「最後の審判」を受けられない事を意味しているので西方派聖教では禁忌とされている。


 しかし悪しき者となれば話は別だし、再びフランソワ修道院長のような人間が現れる可能性もある。


 ここを考えれば・・・・・・・・


 『灰も残さず焼いてしまうのが後世の為になる』


 そう少年は思いながら暫く滞在する事になる青年との別れが延びたので小さく笑った。


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