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犬割り騎士  作者: ドラキュラ
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幕間:獣の追跡

 村落の外に当たる森林の中に2人の男性が居た。


 その2人は村外れに暮らす少年の家に厄介となっている青年に仕える鷲鼻の旗騎士と、従騎士の青年だった。


 2人は折れた木の枝や凹んだ地面、果ては糞尿がないか朝から探している。


 「おかしいな・・・・ここまで痕跡が見当たらないなんて」

 

 従騎士の青年は片膝をつきながら首を傾げた。


 「確かにな。しかし、あの司教の事だ。必ず“墓穴”を掘っている」


 尖った鷲鼻が特徴の騎士は従騎士の青年を励ますように言った。

  

 「そりゃ聖教だからな。ただ、犬を媒体にしているなら“縄張り”があるだろ?」


 従騎士の青年は獣が持つ「特性」を口にし、それに対して鷲鼻の騎士も同意するように頷いた。


 「確かにな。イヌ科の動物は糞尿をする事で自分の縄張りを強調するが”調教”すれば・・・・多少は抑えられる。そして司教に従う奴等を見たろ?」


 鷲鼻の騎士が含みある言葉を言うや青年は「マジかよ」と眉を顰める。


 「あくまで可能性だ。しかし・・・・その答えは直ぐ判る」


 鷲鼻の騎士が視線を村が在る方に視線を向ける。


 それに釣られて従騎士の青年も視線を向けた。


 深く木が生い茂っているが2人には見えたのだろう。


 「へぇ・・・・居るんだな」


 「度胸」がある者が、と従騎士の青年が言うと鷲鼻の騎士はこう答えた。


 「あの少年が動いたからさ。いやはや・・・・我等が主人は子供を育てる才能があるな」


 「兄ィを追い越すと誓っているからだろうぜ?まぁ今の状態じゃ兄ィには勝てないけどよ」


 「まぁな。ただ最初に比べれば8対2だったのが今は6対4にまで縮んでいる」


 ここまで短期間で距離を縮めたのは大したものだと鷲鼻の騎士は言いつつ葉巻を懐から取り出すと銜えた。


 「おいおい、また姉ちゃんにどやされるぞ?」


 「生憎と彼女は村に行っている。それに生憎と彼女では俺を従わせる事は出来ない」


 我等が主人の場合は何とか出来るだろうが、と鷲鼻の騎士は言うと打ち竹で葉巻に火を点けて吹かし出した。


 「はぁ・・・・あんたみたいな男を従わせられる女が居るのかよ?鍛冶屋の姉ちゃんなら出来そうだが」


 「あの御婦人の命令なら従うさ。ただ俺が心から従うのは他ならぬ主人と・・・・・・・・」


 「おっと!それ以上は言わなくて良いぜ」


 従騎士の青年はバッと手を前に出すと鷲鼻の騎士が何か言う前に抑えた。


 「おいおい、その態度は酷くないか?」


 「何度も聞かされる“惚気話”には飽きたんだよ」


 「やれやれ、年を取ると嫌だねぇ。可愛くなくなる」


 「浮気癖のあるおっさんに言われたくねぇよ」


 皮肉と毒舌の応酬をしながら2人はサッと身を隠した。


 それは間もなく度胸のある者達が来るからだった。

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 ガサガサッと茂みを掻き分けて10人の男が姿を見せた。


 格好は修道士で、辺りを見回す姿勢も素人と一目で判る。


 しかし鷲鼻の騎士と、従騎士の青年は暫く気配を殺して様子を窺った。


 対して修道士達は声を発して呼び掛けた。


 「も、もし・・・・!近くに居るなら答えて下さい・・・・貴方達は、王室が送った監査官ですか?いえ・・・・”炎の騎士”である・・・・様の家臣ですか?」


 『・・・・どう思う?』


 従騎士の青年は樹齢50年近くの大木から生えた枝に隠れながら鷲鼻の騎士に問いを投げた。


 『我等が主人は”堂々たる武人”だからな。あの”気”に圧倒された気もしなくもないな』


 鷲鼻の騎士が答えると従騎士の青年は確かにと頷くが、彼自身は修道士達を信用するに値したのだろう。


 『俺が話をするから頼む』


 了承も得ず従騎士の青年は枝から飛び降りた。


 しかし鷲鼻の騎士は従騎士の青年が主人と似ていると解っていたのだろう。

 

 何も言わずジィッと気配を殺し修道士達と会話を始めた従騎士の青年を注視する。


 「あんた等、何の用だ?」


 「そ、その前に・・・・貴方は、誰ですか?」


 修道士達は突然、木の上から現れた従騎士の青年に驚きつつ姓名を尋ねた。


 それを鷲鼻の騎士は「当然の行為」と見つつ・・・・油断ない眼で修道士達を見つつ周囲に気配を張りながら耳は会話に傾けた。


 「あんた等が言った炎の騎士に仕える従騎士だ。で、あんた等は・・・・あの慇懃無礼な司教に何か言われて来たのか?」


 「い、いえっ!違います!!」


 「私達は・・・・もう・・・・我慢できなくなりました!!」


 「これ以上・・・・この村落を・・・・いえ、ソワソン地方に平和を齎したいんです!!」


 「・・・・詳しく聞かせてくれないか?」


 従騎士の青年が少し声のトーンを落として問うのを鷲鼻の騎士は聞きながら周囲に気配が無いのを確認しながら耳を傾け続ける。


 修道士達の話によれば例の魔獣が騒がしくなったのは今から数ヶ月前だったらしい。


 最初は村人たちが耕した田畑を荒らす程度だったが次第に修道院の中も荒らされるようになったと修道士達は口を揃えて言った。


 「当初は私達も調査しようとしました。ですが・・・・フランシス修道院長が調査は打ち切るように指示を出したんです」


 それでも調査しようとした者達は破門され修道院から追放の憂き目に遭ったが・・・・・・・・


 「・・・・私達で匿った者も居るんです」


 「・・・・そいつは居るのか?」


 従騎士の青年は問いを投げたが、話を聞いていた鷲鼻の騎士は「昇天」したと察した。


 その証拠に修道士達は首を横に振った。


 「残念ながら・・・・姿を消しました」


 「私達が普段の仕事をやっている間・・・・ほんの僅かな時間です」


 「ただ、部屋の中で争った痕跡もあったので・・・・・・・・」


 「・・・・あの私兵団に殺されたと考えるべきだろうな」


 修道士達の言葉を聞いて従騎士の青年は「だから聖教は嫌いだ」と悪態を吐いた。


 しかし、直ぐ気持ちを整理したのか魔獣について問いを投げた。


 「獣の特徴とかは何か知らないのか?鳴き声からイヌ科の動物とは思うんだけどよ」


 「残念ながら姿を見た者は誰も居ません。ただ、フランシス修道院長を支持する村民達の家にフランシス修道院長は暫し足を運びました」


 「その際は私兵団が護衛し、何時も樽を1つ各家に持って行きました」


 「中身が何なのかは判りませんが・・・・その・・・・かなり酷い悪臭で・・・・・・・・」


 「・・・・そうか」


 修道士達の青褪めた表情と、震える唇から離れた説明を聞いて従騎士の青年はゲンナリとした表情を浮かべながら相槌を打った。


 もっとも鷲鼻の騎士も自身が言った「可能性」が的を見事に射た為だろう。


 「・・・・・・・・」

 

 言葉こそ言わなかったが、静かに天を見上げた。


 しかし修道士達は、ただ自分達が知っている情報を提供する為ではなかったのだろう。


 意を決した表情で従騎士の青年を見て言葉を投げた。


 「炎の騎士様は聖教の荘園を幾つか御自身の領土へ併合されたと聞いております」


 「しかも王室の許可を得た上で・・・・・・・・」


 「お願いです!どうか、この地も・・・・あの方の治める領土に入れて下さい!!」


 「私達も出来る限り御協力致します!!」


 「・・・・まぁ兄貴の言動から・・・・この地を自領へ併合する気持ちはあるぜ」


 従騎士の青年が呟いた言葉に修道士達は「おぉ!!」と歓喜の声を上げた。


 「だが勘違いするなよ?兄貴は聖教を毛嫌いしている。まぁ”例外”という形はあるが・・・・今の状況を見たら”血の雨”は必然だ」


 修道士達の気持ちを落ち着かせるように従騎士の青年は言うが鷲鼻の騎士は嘆息しつつ枝から立ち上がった。


 「そんな馬鹿正直に言ったら駄目だろうが・・・・・・・・」


 鷲鼻の騎士は音もなく枝から飛び降り従騎士の青年の隣に立った。


 「たくっ・・・・言っただろ?言葉を”選べ”よ」


 「選んで言ったぞ」


 従騎士の青年は鷲鼻の騎士の言葉に何が悪いと言い返す勢いだったが鷲鼻の騎士は肩を落とすと唖然とする修道士達を見た。


 「悪いな?こいつも修行の身なんだ。ただ、こいつの言う通り・・・・我等が主人は、血の気が多い。だから・・・・血の雨を”最小限”に済ませる為にも協力してくれないか?」


 あんた等を悪いようにはしないと鷲鼻の騎士は言うが修道士達は覚悟を決めていたのだろう。


 神妙な表情で頷いた。


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