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犬割り騎士  作者: ドラキュラ
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第二十三章:影ワニ

 少年は鷲鼻の騎士に甘える影ワニなる魔物を改めて見た。


 真っ黒な体は大きく、顔などは全く見えない。


 しかし尾鰭や背鰭等は魚そのものだ。


 「度胸があるね?最初に見た大半が驚くのに」


 鷲鼻の騎士は影ワニを撫でながら少年が大して驚かなかった事を賞賛した。


 「オグルとの死闘を見ましたから。それに・・・・その影ワニは優しい気を発しています」


 主人である貴方を信頼しているからではと少年が言うと影ワニが近づいてきた。


 少年を品定めるようにグルグル周囲を回ったと思いきや自身の背中に乗せたから皆は驚いた。


 「ヒュー!そいつが初対面の人間を背中に乗せるなんて有り得ないのに」


 鷲鼻の騎士は口笛を吹き、仰々しく驚いた。


 対して少年は皆の視線が恥ずかしいのだろう。

 

 視線から逃げるように影ワニの背中を優しく撫でる。

 

 影ワニは少年の手に体を動かしたが少年が落ちないようにした。


 「ありがとう」


 自分を気遣っていると少年は解ったので影ワニの背中を再び優しく撫でた。


 「どれ、そいつに乗ったまま見てな」


 鷲鼻の騎士が言うと影ワニは少年を乗せたまま離れた。


 それを見てから鷲鼻の騎士は青年と対峙した。


 「陰の者は緊急事態以外では極力、戦闘は避ける傾向があるんだよ。何故だか分かるかい?」


 「仕事上から・・・・ですか?」


 影ワニの背中に乗ったまま少年は鷲鼻の騎士が問い掛けた内容に答えた。


 「その通り。しかも戦うにしても隙あらば逃げるのが基本なんだよ」


 「戦っても大して意味が無いからですね」


 「あぁ。ただ、どちらかと言えば戦闘技術よりは他の技術が陰の者は多様する」


 そう言って鷲鼻の騎士は懐から一本の筒を取り出した。


 「これは“打ち竹”と言って火種を入れる代物だ」


 これ一本あれば火は点けられると鷲鼻の騎士は少年に説いた。

  

 「作り方も後で教えるけど、その前に問題だ」


 俺の服には色々と道具が隠されていると鷲鼻の騎士は言いながら1回転した。


 「何処に何の道具が隠されているか言ってみな」


 「・・・・・・・・」


 鷲鼻の騎士が出した問題に少年は眼を細め、改めて鷲鼻の騎士を見る。


 先ずは上からだ。


 「・・・・胸辺り・・・・心臓部に隠していると思います」


 「何に使う道具かは分かるかな?」


 「・・・・急所を護るような道具か、または大事な書類を入れる代物ではないかと」


 「うん、正解だ。次は何処かな?」


 鷲鼻の騎士に言われ、今度は両腕に視線を少年は向ける。


 「両腕か、足首には短剣で・・・・太股あるいは臍か腰には書類または医療道具・・・・でしょうか?」


 「大体は正解だ。ただ、これは個人スタイルだから一概にこうというのは無いんだよ」


 ただ、大抵の者は君が言った箇所に何かしらの道具を隠したりすると鷲鼻の騎士は言った。

 

 「問題の次は道具について説明しよう」


 鷲鼻の騎士は左手に装備した皮籠手から黒い細長い棒を取り出して少年に見せた。


 「これは“棒手裏剣”という武器だよ」


 鷲鼻の騎士は掌から少しはみ出た棒手裏剣をクルクル回転させたが、先端が鋭利になっているのを少年は見逃さなかった。


 「こいつの使い方は刺突または投打で、隠し易いから俺なんかは2~3種類は持ち歩いているよ」


 ただ使い方は「コツ」が要ると鷲鼻の騎士は言い、白刃を構えた青年と対峙した。


 「今からコイツを“打つ”からよく見てな」


 「はい・・・・・・・・」


 少年は影ワニの背中に乗りながらジッと鷲鼻の騎士を見つめる。


 鷲鼻の騎士は棒手裏剣の剣先を指先の外側に向け、親指を添えるようにしていた。


 ただ、少年は指先と「同じ」方向に棒手裏剣の剣先が向いている点を見つけ注視する。


 「・・・・・・・・」


 鷲鼻の騎士は無言で青年を見つめるが、青年も黙って鷲鼻の騎士を見つめた。


 互いに見つめ合う事で気も自然とぶつかり合うが・・・・壮年の騎士や白髪の騎士とは違うと少年は体で感じ取る。


 刹那・・・・鷲鼻の騎士が棒手裏剣を打った。


 棒手裏剣は回転せず・・・・ほぼ真っ直ぐ青年の眉間を狙って飛んだ。


 しかし青年は湾刀に当てる事で難なく退ける。


 「今のが”直打”と言う打ち方だ。次は”回転打”だから・・・・よく見ていな!!」


 言うが早いか鷲鼻の騎士は2本目の棒手裏剣を構えたと思いきや青年目掛けて打った。


 だが少年には見えた。


 鷲鼻の騎士は回転打をやる際に棒手裏剣の剣先を「手首」に向けた瞬間を・・・・・・・・


 そして名前の通り棒手裏剣は半回転しながら青年騎士の方へ行ったが、これも青年は湾剣に当てる事で退けてみせた。


 「この2種類が打ち方の基本だけど・・・・違いは見えたかな?」


 「回転打の時は剣先を内側に向けた事です」


 少年の言葉に鷲鼻の騎士は鷹揚に頷いた。


 「正解だ。この技術は応用が利く。だから基本をシッカリ覚えなよ」


 そう言って鷲鼻の騎士は従騎士の青年に眼をやった。


 「漸く俺の番だな」


 従騎士の青年は真打ち登場とばかりに前へ出た。


 「俺が教えるのは、こっちの“ナンパ紳士”と似たような内容だ」  


 「野外生活術ですね?」


 従騎士の青年が言った皮肉とも言える台詞を少年は敢えて聞き流すようにしながら内容を尋ねた。


 すると従騎士の青年は鷹揚に頷いた。


 「あぁ、そうだ。後は弓の使い方だ」


 騎士の大半は弓矢やクロスボウを「下っ端の飛び道具」と称し戦場で使うのを嫌っているのを少年は聞いた話で思い出した。


 しかし野外で生活するには必須だし集団戦でも同じであると思い直す。


 「その様子だと弓矢の強みを理解したな?」


 従騎士の青年に問われ、少年は頷いた。


 「まるで兄ぃみたいだぜ」


 従騎士の青年は水の騎士を思い出したのか、少年に人懐っこい笑みを見せた。 


 「先日も話していましたけど水の騎士は物怖じしないんですか?」


 「色々と”経験豊富”らしいからな・・・・って何で睨むんだよ」


 ここで従騎士の青年は何時の間にか睨むように立っていた小聖職者に苦言を呈した。


 「睨まれるような言動をしたからです。何ですか・・・・ナンパ紳士・・・・経験豊富・・・・これが如何に幼子に悪影響か・・・・・・・・」


 「いや、俺が言った経験豊富ってのは”真っ当な意味”であって、姉ちゃんが思った内容じゃないぜ?」 


 従騎士の青年は自分に非は無いという態度を崩さない言葉を小聖職者に放った。


 しかし、それは少年も聞いていて納得できるものだった。


 他の者も同じ意見だったのか、鷹揚に頷くが・・・・小聖職者だけは違う。


 「いいえ!このような幼子を前に教えるなら卑猥な言葉は慎むべきです!!」


 あくまで自分の考えを曲げるつもりはないのだろう。


 小聖職者は力を込めて断言した。


 「ふんっ。自分の正義以外は異論を認めないってか?如何にも聖教らしいな」


 青年が思い切り皮肉を小聖職者に向けて呟いた。


 それを聞いて少年は嗚呼と嘆くが、他の者も「やれやれ」と額に手を当てたから・・・・後の展開は言うまでもない。


 「聖教を悪く言うんですか?!」


 「何れ知るんだ。それを早めに教えるのは良い筈だろ?大体お前は過保護すぎるんだよ!!」


 「貴方が”放任主義”過ぎるんです!!」


 「んだと?!」


 「何です!!」


 子供みたいに大声で口喧嘩を始めた2人に少年は何とも言えない気持ちになったが・・・・・・・・


 「御2人の間に挟まれる子供は困るよね・・・・・・・・?」

  

 少年は影ワニに小声で問いを投げた。

 

 それに影ワニは賛同するように体を揺らした。 


 「・・・・こんな幼子にまで言われるとは・・・・情けない」


 「まぁ、どっちも頑固で極端だからな」


 「“喧嘩するほど仲が良い”って言うが、ここま喧しいと近所迷惑だぞ」


 3人の遠慮がない言葉を少年は聞きつつフランシス修道院長の動向が妙に気になった。


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