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犬割り騎士  作者: ドラキュラ
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第十七章:真夜中の来訪者

 壮年の騎士と白髪の騎士が青年と出会った時を語るのを少年は物語でも読むような気分で聞いていた。


それは水の騎士と目の前の青年が出会った時と同じ感じだったが・・・・それを差し引いても少年には一冊の物語のように思えた。


 語り終えた青年に少年は興奮を抑えながら感想を述べた。


 「凄い出会いですね・・・・そして貴方は凄いです」


 単身で水の騎士を助けに行った所が特にと少年は言ったが、青年は恥ずかしそうに首を横に振った。


 「俺より凄いのは・・・・こいつ等だ」


 青年の言葉に壮年の騎士と白髪の騎士は沈黙した。


 だが、鷲鼻の男は「そうでもないです」と自画自賛し、弓矢を装備した青年も「褒められる程じゃねぇ」と悪のりした。


 「お前等の実力は認めるが・・・・坊主の手前だ。“高すぎる誇り”は禁物と教えてやれよ」  


 「この少年なら“一を聞いて十を知る”って諺を地で行きますよ」


 鷲鼻の騎士は青年の言葉に異論を唱えつつ尋ねた。


 「それはそうと・・・・教えるんですか?」


 「当然だ。ここで出会ったのも縁だからな」


 青年は鷲鼻の騎士に平然と答えるが壮年の騎士達は少し沈黙した後に改まった様子で尋ねた。


 「・・・・ああは言ったが・・・・本当に覚えたいか・・・・・・・・?」


 皆を代表する形で壮年の騎士が問いを少年に投げ、少年は「覚えたいです」と答える。


 すると壮年の騎士は更に問い返した。


 「・・・・"要らぬ厄介事"を背負い込む事になる覚悟はあるか?」


 「武芸を覚えたが故に・・・・命を落とした者が居るんですか?」


 少年の問いに壮年の騎士は静かに頷いた。


 「腐るほど見てきた。それでも覚えたいか?」


 壮年の騎士は淡々とした口調で答え、そして問い掛けてきた。


 それに少年は一瞬の間を置いた末に・・・・頷いた。


 「覚えたいです・・・・・・・・」


 「・・・・・・・・」


 壮年の騎士は少年をジッと見つめたが、暫くすると優しい表情を浮かべた。


 「良き眼だ。御大将・・・・良き少年ですな」


 「あぁ・・・・ここで腐らせるには勿体ないだろ?」

   

 壮年の騎士の言葉に青年騎士は口端を上げて頷き、4人を見てから・・・・命じた。


 「この地に居る間・・・・坊主を鍛えろ」


 『御意』


 青年の命令に4人は声を揃えて頷いた。

  

 「よし。なら手始めに・・・・今夜、来る奴等を坊主の前で倒せ」


 青年が発した言葉に少年はピクリと反応した。

 

 今夜、来る奴等・・・・・・・・


 それは・・・・・・・・


 「心配いりませんよ」


 ポンッと小聖職者が肩を叩いてきたので少年は小聖職者を見た。


 「この方達なら問題ありません」


 「あぁ、こいつ等が負けるなんて事は無い。お前は目を開けて見ていろ」


 こいつ等が魔物を倒す姿を・・・・・・・・


 小聖職者に続いて青年が少年に語り掛けるが、言葉の節々からは4人を絶対的に信用していた。


 それが少年には解ったのだろう。


 静かに頷いた。

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 夜は直ぐ訪れた。


 しかし、何時もと違い妙な感じが少年の胸を掻き毟る。


 それは言葉で表す事が出来ないものだったが何なのかは少年には解った。


 『先日の邪悪な者達が来る』


 名前を邪悪な者達は言わなかったが小聖職者は知っていたのだろう。


 「今から来る奴等は“オグル”です」


 「オグル・・・・・・・・?」


 少年は聞き慣れない名前に首を傾げ小聖職者を見た。


 「魔界の住人です。知性は人並みにありますが聖職者ではない人間でも倒せます」 

 

 それを聞いて少年は敵について少し解り安堵の息を漏らした。


 しかし、それが強さではない気がしたので小聖職者に問いを投げた。


 「彼等は・・・・仲間を“増やせる”のですか?」


 少年は教会に有る書物や人伝に聞いた話を小聖職者に思い付く限り言おうとしたが、最初に出たのが正解なのか?


 小聖職者は頷いた。


 「そうです。オグルは仲間を増やせるんです」


 方法は簡単と小聖職者は言いながら牧杖で少年と自分の周囲に円を描いた。


 そして詠唱した。


 「全てを癒し、そして照らす光の精霊達。どうか、か弱き私達を邪悪な者達の魔手から御守り下さい」


「光の護壁」・・・・・・・・


 小聖職者が詠唱すると円を光の輪が包んだ。


 「そこから出るなよ」


 光の護壁が完成するのを見てから青年は倒木から立ち上がった。


 ただ昼間とは違い青年は鎧を身に纏っているが、少年には奇妙な鎧に映った。


 何せ青年が着ている鎧には右の袖が無いのだ。


 兜も変わっていたが少年にはフランソワの私兵団に比べると異国風にも見えるも輝かしい存在に見えた。


 後から来た青年に従う4人も同じように少年には見えたが・・・・・・・・


『皆、自分達を表す何かを身に纏っている』

  

 少年は恐怖を紛らわすように5人の出で立ちを見た。


 最年長である壮年の騎士は「笹の指し物」を背中に背負っていて、白髪の騎士は右籠手だけ白く塗っている。


 鷲鼻の騎士は藍色に塗ったラウンドシールドを左手に取り付け、最年少の青年は獣の毛皮を腰に巻いていた。


 「坊主。“自分色”を考えておけ」


 青年は腰に吊した反りの浅い湾刀をスラリと抜きながら少年に語り掛けた。

 

 「それは・・・・信念のような物ですか?」


 「そんな高尚な物じゃねぇよ。ただ、自分色を持て」


 それだけ言うと青年は湾刀を握り直した。


 「・・・・・・・・」


 少年は無言で間もなく来るオグル達が現れるのを待った。


 だが自分色とは何かと考える。


 恐怖を抑える効果もあったが・・・・・・・・


 ビュウウウウウウ!!


 突然、突風が吹いて少年は顔を左手で覆ったが青年が「目を開けてみろ」と言ったので再び戻す。


 『フフフッ・・・・可愛くて“食い応え”のありそうな男子だな』


 『そちらの小柄な聖職者も同じだな』


 『しかし・・・・“不味そう”な男が5人も居るぞ』


 『まったく我等と契約したフランソワも嗇いな』


 『わざわざ異界より来た我等を労う気持ちが足りん』


 『聖教の人間は常にそうだ』


 突風に乗り血生臭い声が少年の耳に入ってきたが、その言葉からフランソワの名前が出て少年は怒りを覚えた。


 それは聖職者が対なる者を私欲の為に呼び出した点に尽きたが・・・・・・・・


 「おい、低能野郎共!さっさと姿を見せやがれ!!」


 青年がオグル達を罵声すると突風は止み、暗闇の中から巨体の者達が現れた。

 

 明らかに人間ではない姿を見て少年は息を飲むが、それでも小聖職者を護るように前へ出た。


 それを見て姿を見せたオグル達は耳辺りまで裂けた口を開いて笑った。


 『フハハハハハッ!幼いのに勇敢だな?』


 『その勇敢な表情を恐怖に震えさせるのが楽しみだ』


 2匹のオグルが少年を見て舌舐めずりした。


 そして他のオグル達は青年達を見て鼻を鳴らす。


 『フンッ!如何にも不味そうな人間だな』


 『特に我等を罵倒した者は“一番”不味そうだ』


 『此奴は例の獣に食わせてはどうだ?』


 『名案だな。このような人間は我等の口には合わん』


 「美味しそうに見えなくて悪かったな。だが・・・・坊主も小娘も食わせねぇぞ」


 青年は湾刀を頭上近くで高々と掲げてオグル達に宣言した。


 それに続いて4人も武器を構える。


 『フンッ!面白い・・・・ならば“(なます)”にしてやる』


 オグル達は青年達に対抗するように何処からともなく巨大な肉切り包丁と、棍棒を取り出した。


 「てめぇ等、木偶の坊を叩き潰せ!!」


 『ほざくな!人間が!!』


 青年とオグルの声が混ざり合う中で風は一層強く吹いた。


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