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侵食する世界  作者: 桜花
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破壊と創造

 周りのモンスターを一掃してから自分の部屋でゆっくりすることにした。自室のベッドに横になり改めてステータスを確認すると、ゲームと何も変わってはいなかった。苦労して上げたALL9000越えのステータスに修得した超複数のスキルにレベル。これらが初期化されていたりしたらどうしようかと思った。

 その後ログアウト出来ないか試してみるがやはり無駄だった。

 プレイしていないはずの母のステータスを確認してみると、レベル1になっていたため、未プレイ者は強制的に登録されているようだ。

 そんな感じで色々とメニュー画面を弄っているとメールが届いた。誰からか確認してみると、それは運営からだった。タイトルは「ver5、破壊と創造」と書かれていた。開いてみると音声が流れる。

「皆様、お楽しみいただけているかな?彼の者より頂いた力を持って、長年の夢であったバージョンアップ、破壊と創造をリリースすることが出来たよ。君たちにとっては悪夢かもしれない。そこでだ、クリア条件を用意したから頑張って欲しい。1つ、各県に設置されているダンジョンをクリアすること。これはかなりの難易度を誇るから容易に入らない方が身のためだ。2つ、ダンジョンで手に入れた機械を設置すること。これはどこでも構わない。3つ、全ての県でそれを行うと、私がいるこの天空要塞への入口が開く。そこで私を倒せたらクリアだ。さすがに死んだ者を生き返らせることは出来ないが、願いを1つ叶えてあげよう。私からは以上だ。健闘を祈る」

 あまりに勝手な言い草だった。このバージョンアップで家族が死んだ人や、多くを失った人も多いだろう。到底許せることではない。

 憤りを感じてると家のチャイムが鳴った。誰かと思い出ると楓だった。いつもの元気がなくなにやら憔悴している様子だ。先程のメッセージを見たのだろうか。

「……どうしたんだよ。元気ないけど」

 かける言葉がわからずそんな当たり障りの無いことしか出てこなかった。

「あ、うん……。何か、怖くて。見た?あのメール」

 やはり見たらしい。これからどうするのか聞かれたため、考えていたことを話そうとすると再び来訪者が来た。釘鷺だった。良いタイミングだったため、玄関先ではなく、一緒に部屋まで案内してから話すことにした。

「まぁ、クッキーも見たかもしれないけど、あのメールについてなんだ。俺たち3人でパーティ組んでただろ?ゲームでも。皆高レベルだし、ダンジョンに一緒に行ってみないか?勿論無理にとは言わない。危険も伴うし、ゲームと違ってリスポーンも出来ないだろうから死んだらそこまでだ。だから、今すぐにとは言わないから少し考えて見てくれないか?」

 そう言うと釘鷺は笑った。

「そんなの考えるまでもねぇ。俺は行くぜ?それに俺に合わせられるのなんてお前しか居ないだろうからな。これならもよろしく頼むぜ?の・ぞ・む・ちゃん」

「おまえ!辞めろって言ってるだろそれ!」

 笑いながら頭をクシャクシャにしてくる手を払い除けると、楓も笑いだした。

「ふふっ、あははは。二人を見てると悩んでる私が馬鹿みたいに見えるね。うん、足を引っ張るかもしれないけど、私も行くよ」

「そういえば、クッキーの家族は無事だったのか?」

 そう聞くと自信満々に頷いた。当たり前だろと話し、その際に暴れすぎて家具を幾つか壊したらしく、怒られたことを気にしていた。

「あーでも、ダンジョンに行くとなると長旅になるかもしれないな。一応親に許可取っておいた方がいいのかな?いや取るべきだろうな」

 そう言うと、釘鷺は既に許可を取っていたらしく、あとは自分たち2人だけだった。

「じゃあ、楓はまた戻って親と話をしておいてくれ。迎えに行くから。釘鷺はこのまま部屋で待っててくれ」

「わかった」

 自分と楓は部屋から出て、目的の場所へと向かう。親のところへ着くと、親も何か話があることを悟ったのか、父を呼びに行ってくれた。そして揃ってリビングでテーブルを挟んで向かい合わせに座る。少しの沈黙のあと、最初に口を開いたのは父だった。

「……行くのか。あの悪趣味なメールなら見た。危険なのは分かっているんだな」

「……分かってる。けど、このまま見過ごすわけにもいかないんだ。お願いします父さん、母さん。俺を行かせてください」

 父と母はお互い顔を見合わせて、母が頷き、私からは話すと言い、少しの沈黙の後に切り出した。

「私は……正直な話反対よ。だけど、行かせてあげたい気持ちもあるの。だから約束して、無事に帰ってくるって」

「父さんも同じ気持ちだ。無事に帰ってきてくれるんだな?」

「必ず生きて帰ってきます。だから、お願いします……」

 頭を下げると、ため息が聞こえてきた。それでも下げ続けると、頭を上げなさいと言われたため、頭をあげる。父は下を向き、なにか言おうとしてることを溜めて、やがてこちらを向いた。

「行ってこい」

 絞り出すような声だったが、色々な感情のこもった声だった。伝わらないものもあっただろうが、少なくとも安全を願って心配していることや、無事に帰ってきて欲しいという思いは伝わった。

「ありがとう!絶対に帰ってくるから!」

 もう一度頭を下げ、退室し二階にある自室へと向かうと、既に話がついたのか楓が既にそこにいた。

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