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侵食する世界  作者: 桜花
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新しい世界

 西暦2130年。

 五感全てを再現したVRMMORPGが誕生した。

 エルガンド。それは瞬く間に国内シェア率断トツの1位を獲得した。

 ステータスやレベルに際限が無く、やり込み要素が豊富なこのゲームは国内にのみ公開されており、このために他国から移住してくるものも居たくらいだ。

 そのゲームがついこの間大型アップデートのため、1週間の休止期間に入った。そして当日……。


 今日はエルガンドの大型アップデートの日だった。

 廃人のようにプレイしてきたが、1週間も休止期間が空くと何をしていいのか分からなくなる。

 アップデート前は勉強は捨て、寝る間も惜しんでプレイしてきた。学校はただ、寝る場所と化していた。

 だが、最近はしっかりと睡眠が取れているせいか勉強をしているのだ。いや、いい事なのだがこんなのは自分じゃない。

 そんな生活ももう終わる。そう、先も言ったように大型アップデートの日だからだ。どんなものが追加されるのか、どんなことが出来るようになるのか。そんな想いに耽っていると声をかけられた。

「おやおやぁ?珍しく勉強していると思ったらそれももう終わりかな?望?」

 聞き慣れた声に振り向くとそこには学校指定の制服を着崩して髪も赤に染めている男がいた。

「クッキーか。お前も知っているだろ?今日はエルガンドのアップデートの日だってさ」

「そりゃあもう楽しみだよ。けど、俺はお前みたいに全てを捧げてるわけじゃないからな。お前もうちょっと自分に意識を向けたらどうだ?そんな腰まで伸ばした髪なんてどう見ても女の子だぜ?」

 そう、自分には悩みがあった。ものぐさなのもそうだが、中性的、というより女性寄りの顔立ちに高校生だというのに未だに来ない変声期。そして面倒くさくて伸ばしっぱなしの髪の毛。それらの要素を組み合わせると女の子にしか見えないのだ。髪を切れと目の前の友人、釘鷺雄から言われるが、何を言われようがエルガンド以外は面倒くさくてやる気が起きないのだ。

 対人関係も、女子は自分を男として見ていないのかよくご飯に誘ってくるし、ものぐさな自分の髪型でよく遊ばれている。男子からも人気は高く、よくエルガンドの話で盛り上がっている。自分では意識していないが、そこそこのクラスの人気者になっていた。

 そして他クラスだがよく遊びに来ている女子、幼馴染みで家もお隣という関係の空乃風楓もいつの間にやら釘鷺との会話に参加していた。

「今日も可愛いね、望ちゃん。いや、望くんか。またエルガンドの話をしているの?楽しみだよねぇ」

「エルガンドの話は同意するけど会う度に可愛い可愛い言うの辞めてくれない?」

「じゃあ髪切れってお前」

「めんどくさい」

「じゃあ諦めろ」

 髪の話は無視してエルガンドの話に戻る。

「いずれはゴーグルなしでプレイしたいよなー。こうやって何も無いところをフリックしてさ……って、え?」

 メニューが何も無い空間に表示されたのだ。ゴーグルもなにもしていないのにだ。これを見ていた2人も同じように空間を縦に指でフリックすると表示された。

「え?何が起きてるの?見た感じ装備は全部外れてるけど育てた能力値はそのままね。装備はゲームのままに戻しておきましょう。何が起きるかわからないから」

 冷静に楓の言うことに従っておくことにする。防具は装備しても見た目に変化はなかった。ゲーム内だと専用のグラフィックが用意されているはずなのに。武器は装備してみると光の玉が手の中に現れ、それを握ると装備が出てきた。戦おうとする意識を無くすとまた光の玉に戻り、意識しながら握ると装備が再び現れた。これでなんとなくだが仕組みはわかった。

 一通り装備が終わり、教室から出ようとすると外から悲鳴が聞こえてきた。急いで入口から出ると、ゲーム内で見慣れたモンスターが手当たり次第に人を襲っていた。中にはもう助かりそうに無い人も大勢いた。

「おいおい……なんだよこれは……」

「助けるぞ!皆を!」

 楓の声に自分を取り戻し、ゲームと同じように装備を構える。目の前にいるモンスターは下級モンスターのウルフが2体とゴブリンアーチャーが1体だった。

 今の自分だったら歯牙にもかけない敵だがアップデートでどうなったのかわからない。油断せずに全力で行くことにする。

「クッキー!左のウルフを頼む。俺は右をやる。ゴブリンの矢に気をつけろよ!楓は俺達にバリアを張ってくれ。それがあれば矢は弾けるはずだ!」

 それぞれが指示に従い行動していく。自分も飛びかかってきたウルフの鉤爪をバックステップで避け、着地を狙い加速して双剣で首を刈り取る。だがその攻撃後硬直を狙ってアーチャーが矢を打ち込んできた。だがタイミングギリギリで張られたバリアに弾かれ失敗に終わった。

「状況終了ってか?」

「まぁ、そんなもんだろ」

「はぁ……緊張した……」

 三者三葉の反応を見せ、そこでようやく気がついた。家族が危ないことに。

「みんな、家に戻ろう。危ないかもしれない!」

 それぞれが家に戻ることになり、楓とは家が隣同士なのもあり、一緒に行動することになった。

 走っている最中、ゲームのような動きも出来ることに気がついたため、屋根の上までジャンプして屋根伝いに行くことにした。道中襲われている人を助けるために、ヘイト上昇のスキルを発動しながら行動した。そのため家に着くのが思った以上に時間がかかった。

「無事でいてくれよ……」

 意を決して家の中へ入ってみると、無惨ににも家の中が荒らされていた。

「母さん!父さん!どこだよ!」

 その声に反応したのか、ガタリと近くの部屋から音がして同時に悲鳴が聞こえた。

「母さん!」

 部屋に入ると、押し入れが開けられそこに隠れていた父と母が、今にもゴブリンに襲われそうになっていた所だった。

「お前ぇぇ!」

 間一髪のところで後ろから斬りかかり倒し、助かったのを確認して楓の家へと向かう。家の中にはいると、どうやら楓の父がプレイヤーだったらしく苦戦しながらもウルフを倒した終わっていた所だった。

「ふぅ……これで安心だな……」

お互いの家族の無事を確認できたため、望は家へと戻り家族で再会を喜びあった。

よろしくお願いします

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