黒髪紅眼の、少年
あの目が眩むほどの光がおさまると、そこには黒髪紅眼の少年が立っていた。
どう見たってこの子はまだ10歳にもなってないよな?俺はこんな子に召喚されたのか。とりあえず話しかけてみよう!
「少年よ、なぜ我を召喚した?」
こういうのは一番最初が大事だからな。ちょっと威圧感たっぷりに言ってみた。すると少年はものすごーく重たい話をし始めた。
「俺には兄がいるんだが、その兄は何をやらせても優秀なんだ。それに、優秀なうえに金髪碧眼なんていうこの国では高貴な色彩だ。……………………それに比べて俺はッ!!黒髪と赤い目の不吉な容姿のせいで使い魔召喚でさえ受けさせることを拒否されたッ!……だから俺は自分ですべてをこなす力を身につけた。そして見返してやるんだ。俺を〈悪魔の子〉と呼んだ奴等をな…………。」
ーーーーーーーそうか、こいつもかぁ。俺も前世は兄のことが嫌いで嫌いで仕方がなかった。まぁ俺は何もかも諦めることを選んだが、こいつは更に努力をすることを選ぶのか。
「少年よ、名はなんという。」
「俺の名はーーーーーアルエスト。」
「ならばアルエストよ!我と〈永久契約〉を結ぼうではないか!『我が魂に誓う。我と契約者アルエストの魂を永久に結び、我らをひとつの存在とせよ!』さぁアルエスト、俺に名をつけてくれ。お前の呼びかけだけに呼応し、お前に紡がれるだけで癒される、俺だけの名を。」
アルエストはまるで前から知っていたかのように俺の名を紡いだ。
「ーーーーーノア。お前の名はノアだ。」
これで契約は完了した。
「これからよろしくな、アル。」
契約の反動で崩れ行く身体を優しく受けとめた俺はアルエストにそう、呟いた。
ーーーーーーーーーーーつーか、途中から一人称としゃべり方がもとに戻っちまったわ。やっぱ慣れないことはしない方がいいなぁー。
ーーーーー懐かしい夢を見たなぁ。もうあの日から何年も過ぎた。アルは多分11歳になったはずだ。それにしても、長かったな。4年間の間に結構いろんなことが起きた。冒険者ギルドに登録したり、俺とアルが着々と功績を積み上げてSSランクになったり、指名依頼できたウェルジー帝国の王妃様の病気を治したり、それのお礼と若干の私情を交えた国王夫妻の厚意により帝国学院に通わせてもらえるようになったりーーーーー。
閑話休題。
まぁ、いろんなことがあったわけで。ちなみに今日はアルの入学式の日だ。
なぜ試験を受けないのかって?……アルと俺はSSランク保持者だ。そう、SSランクだ。人外だ。人じゃない。
実力はもう認められている。国王夫妻としてはきっとアルにこの世界の歴史や情勢を知ってほしいんだろうな。ついでに同年代の友達もつくった方がいいと思ってるっぽい。というわけで、2人は俺たちを学院に放り込んだ。
一応特例として座学以外は免除されている。つーか、戦闘訓練なんかしたら普通に人死ぬぜ?もう訓練じゃねーよ。ただのアル無双だ。
閑話休題。
とにかく、今日は入学式だ。………ん?アルが呼んでる?…………アルぅ~!!俺も一緒にいく~!
次回からは学院編です!一人と一匹がのんびりマイペースに生活していきます。
ちなみに、学院にはアルエストの兄もいます。波乱の予感!