プロローグ
-それは善意なのか、悪意なのか。
真っ暗な細い路地を一人で歩く。
次の角を曲がればもう家だというところで、背後から視線を感じる。
ゆっくり振り返ると、フードをかぶった男が一人街灯の下に居る。
さっきより早足で歩く。
あと少し。そう思った瞬間、背中に激しい痛みが襲い倒れた。
最後に聞いた言葉は、「愛してる」だった。
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ここは何処?
綺麗な女神が真ん中にいる噴水が目の前にあり、ギリシャ神話に出てきそうな風景が広がっている。
「気が付いた?」
噴水の後ろから、金髪で青い瞳の少年がでてきた。
天使っっ!!
そう、少年の背中には羽が生えており、微笑む姿はまさに天使。誰が見ても間違えないだろう。
「よくわかったね。僕は天使なんだ。」
にっこりと言われ私は首をかしげる。
私今しゃべったっけ?
「話してないよ。僕には君の心が読めるんだ。」
少し自慢げに種明かしをする天使に、イラっとした。
「ね~、天使さん?勝手に人の心を読むなんて・・・一発殴らせろ。」
「まって!ごめんって。だからその手を下ろそうっっ!その笑みも怖いから!!」
涙目になりながら謝る。脅し過ぎたかと、こぶしをおろす。
「しかたないだろ。天使は人の心の声が聞こえてしまう生き物なんだから。」
頬を膨らませて、拗ねたようにそっぽを向く。
「だからって、勝手に人の心を読むなんて最低。していい事と悪い事があるでしょ。」
私がさらに文句を言うと、天使は反省したようで素直に謝る。
「分かったならいいけど、ここ何処?」
私の言葉をまってました、とばかりに天使が説明をし始める。
「ここは生と死の狭間。君の世界でいうなら“三途の川”かな?」
「川は流れてないんだね。」
周りを見ても、真っ白は大理石の建物に広い草原があるだけで、私達日本人がイメージするような川はない。
「人によって違うんだ。森の中だったり、真っ白な光の空間だったり、色々あるんだ。」
「じゃあここが私の望んだ場所。」
「まぁ~、そうなるね。」
もう一度、あたりを見渡す。本当にきれいな場所。
「それでね、今後の君の事なんだけど・・・。」
「私、死んだんでしょ?」
「うん。君は死んだよ。正しくいうと、“七瀬 百合”は死んだ。」
そう、私の名前は七瀬 百合。会社からの帰宅時に何者かに殺された。
「百合ちゃん、君に合わせたい人がいるんだ。」
天使はにっこりとほほ笑んで言った。