赤
どうして。どうして、こんな事に。ただ、バイト先の女性と会話をしていただけで。
「浮気をする悪い子にはお仕置きだよ。」
彼女は彼をスタンガンで脱力させると木の板に紐で固定する。次に自害を防止する為、猿轡を噛ませる。それから、作業が始まる。
チェーンソーで肉や筋肉、神経は裂かれて、歯に付いた肉片が飛散し血が噴き出す。余りの痛みに、くぐもる叫びが辺りに響く。途中、骨は金槌で何度も叩かれ、かなりの音を立てて砕かれる。こうして、手足が切断される。
焼鏝で左脇腹に小さな焼き印が付けられる。肉の焼ける臭いが辺りに漂い、焼ける音とまた叫びが辺りに響く。
火で切断面を焼く。焼鏝の時と同じ様な光景が展開される。
彼女は全身を彼の血で真っ赤に染め、血を手で掬って飲む。そして、壊れ物を扱う様にとても優しい手付きで顔に触れ頬擦りして、軽い口付け。それから、暗澹とした両の瞳で見詰めて語る様に言う。
「今日から、樹深君は私の可愛いお人形さん。
される事全てに従順なお人形さん。
一生、離さないから。
一生、大切にするから。
一生、ずっと私を見続けて。
一生、愛を囁いて。」
彼は思う。
嫌い。
死にたい。
僕の人生を返して。
彼女は思う。
好き。
死なせない。
生涯の伴侶に至れり尽くせりと、これ以上不自由させない。
止血を全て終わらせ、彼の体を丹念に洗ってベッドに置く。
彼は死ぬ事できず、それから死期が来るまで彼女のお人形さんとして丁寧に取り扱われ、生き続けた。