ようせいのしらべ
ある日、女の子はお父さんといっしょにスキー場に遊びに来ていました。
女の子はスキーがうまくなりたくて、お父さんにむりを言って中級のコースへ連れてってもらいました。
女の子はいつもと違う高さで少し怖くなりましたが、勇気を出してすべりました。
それはうまいと言えるものではありませんでした。
女の子はあっち行ったり、こっち行ったりで、なかなかまっすぐすべることができないのです。
見かねたお父さんはさきにすべり、女の子をおいこして下で待つことにしました。
それがいけなかったのでしょうか。
女の子はひとり道にそれて林の方へ行ってしまいました。
お父さんはあせりました。
女の子をさがしにお父さんは林の方へ向かいました。
女の子は林の中へ入ってしまって、どうしよう、と困ってしまいました。
すべって、転んだひょうしに足をくじいてしまったのです。
自力で立ち上がることもできずにとほうにくれる女の子は、気づきます。
自分がいる場所は、木々が大きく、回りがよく見えないのです。
だんだんと霧がかかり、視界もわるくなり、足の痛みもひどくなるばかり。
女の子は泣きそうになりながらも、がんばってこらえます。
女の子は痛みをこらえ、涙を流さずにいると、どこからか、声が聞こえたような気がしました。
――だれ?だれなの?
女の子は問いかけます。
ですが、だれも答えてくれません。
それでも声はかすかに聞こえ、音は、大きくなっていました。
そこで声は、歌なんだと、女の子は気づきます。
――♪
楽しそうな、すんだ声でした。
女の子はその歌声に耳をかたむけ、じっくりとききました。
時間は流れ、また、どこからか、別の声が聞こえます。
それはよく聞く声でした。
いつのまにか霧は晴れ、たくさんあったはずの木々もいっかしょだけなかったのです。
そこから声は聞こえ、見てみると、お父さんのすがたがあるではないですか。
お父さんに女の子はかかえられ、立ち上がり、女の子は足の痛みが引いているに気がつきました。
女の子はお父さんに連れられ、来た道をもどりました。
女の子はさきほどまで聴いていた、女性のすんだ明るい声が、しばらく耳からはなれませんでした。
あとでその話をお父さんにしてみると、お父さんは、
――それはきっとようせいのしわざだろう。
と、言いました。
その土地の言い伝えでは、ようせいがいたずらに人をおどかしては楽しんでいたそうな。それも治癒に長けた歌声を披露するというオチャメなものだった。