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本屋の前で立ち往生してると周りの人からの視線をすごく感じた。
薺は美人で。
葛葉は可愛くて。
武藤君はクールで。
赤里君は優しそうで。
自分の外見をソコまで気にしないけれど、
やはり周りの人の視線が痛い。
あの4人の中になんでアンナ奴が?
釣合わない
分不相応じゃないのか
結局学校で言われるような事も外でも言われてる。
正直会いたくなかった。
音楽のボリュームを大きくしたのは周りの雑音を聞かなくて済む為。
目の前でワイワイ騒いでる4人から早く逃げたくて、武藤君の腕を振り払って急いで本屋の中に逃げ込んだ。
息が詰まりそうだ。
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本屋の中はとても静かで、立ち読みをしている人たちがちらほらと。
外の4人はどうやら入ってこないようだ。
安堵のため息。
そして嫌悪のため息。
とても失礼なことをしている。
彼等は何もしてないのに。
彼等は何も気にしていないのに。
気にしているのは自分だけ。
しゃれっ気も無い自分がいけない事なんだろうけど。
似合わない物を見に付けてもそれは余計滑稽さが浮き彫りになるだけ。
沈んだ気持ちで目当ての本の前に行き手に取ってみる。
他に小説なんかも買って帰ろう。
周りを見ずに済む世界がいい。
一人で作品の世界にのめり込むのが好き。
興奮と感動を味わえる。
色々物色した後数冊の本を持ってレジに向かった。
レジのカウンター上に付いている時計を見た。
本屋に入って約20分。
皆帰っただろう。
そう思い、店員さんの、ありがとうございましたー
という声を背中に受け自動ドアを出た。
「「遅い!!」」
自動ドアを出たと同時に聞こえた声。
もしかして、ずっと居たの…そこに。
4人はいろんな男女に囲まれていた。
よくよく話を聞いてるとナンパされているようだった。
「おい、涼華来たから早く行くぞ」
武藤君は心底嫌そうな顔をしながら薺達に声を掛けていた。
その声にまわりに居た数人が、
「えーもう帰っちゃうの~?」とか
「良かったら最後にアドレスだけでも教えてよ」とか
「私達も付いて行って良いー?」
とか口を揃えて聞いていた。
薺はその言葉に無視をし、葛葉と赤里君はまた今度ね。と笑顔で返していた。
ぼけーっと突っ立てた私に、
「涼華、行くよ」
と薺が声を掛けて我に返った4人の後を付いて行く。
「涼華学校来ないんだもんビックリしたわよ」
私は皆がまだ待ってる事にビックリしたけどね。
「つーか、なんでまだ居たの。とっくに帰ったと思ってた」
この調子じゃお昼食べれ無いなーと思いため息をつく。
「そうそう、涼華学校来なかったけどね、5人で遊びに行こうかって話をしてたんだよ」
ニコニコ話す赤里君。
一体どこに!?
このメンツで何の遊びをするの!?
「え…帰りたい…ですけど」
本当、もう疲れたんだよ。
「何言ってんの?今日サボったくせに」
え、そのセリフを武藤君貴方が言うわけ?
「もう行く場所決めてるからさー」
お金持ってきてるでしょ?と薺。
どこに行くかは分からないけど、
「…うん」
としか言えなかった。
…脅迫だ!!