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「ま、ま、ま待って!おかしいって!何で!?どうして!?私!?あ、あり得ないよ、武藤君」
とてもじゃないけど顔を見れなくて俯いて地面を見る。
ジリジリと焼けるような日差し。
そうだ、こんなに暑いんだ。
だから武藤君も暑さでちょっとおかしくなってるだけなんだ。
背筋に冷や汗をかく。
暑いはずなのにどこか寒気がする。
どこか遠くで子供の声がする。
段々と大きくなってくる耳鳴り。
ドクリとさっきから激しくなっている心臓。
「涼華」
武藤君が話すたびに息が、呼吸が出来なくなる。
「っわ、分からない…何で私なのか…」
突然のことで頭がパンクしそうだ。
最近の出来事で一番衝撃的かもしれない。
わからない。
わからない。
武藤君が握っている手を少し緩めたと思ったら体が勝手に動いていた。
今までに無いぐらいに全力で走ってた。
武藤君の呼ぶ声が聞こえた。
でも、私は怖くて逃げ出した。
何で?
わからない。
好きだとか、嫌いだとか。
友達じゃぁいけなかったのか。
わからない。
とにかく逃げたくて震える足で走っていた。
どこかぼんやりとする視界。
気づけば駅近くの裏路地についていた。
乱れた呼吸を抑えようと壁によりかかりズルズルと腰を下ろしていく。
「っは、な、んでっ…」
あんなの知らない。わからない。
あんな感情は私なんかに向けるべきじゃないんだ。
武藤君にはもっと可愛くて綺麗で頭がよくて優しい人が居るはず。
だから、武藤君のあの気持ちは間違いなんだ。
「…冗談、からかって…」
からかっているだけだよ。
そうだよ、だって武藤君に好きになられる理由が無い。
何一つとりえも無くて、何やっても駄目駄目な私なんだ。
あれはきっと、何かの間違いだよ。
ズキリと痛む心臓には気づかないフリをする。
時間が戻ってほしいと願う。
ただ、皆と笑い合えることが楽しかっただけなのに。




