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ばっと座っていたベンチから勢いよく立ち上がる。
早くこの場から離れたい。
「ご、ゴメン!変なこと一杯言って、聞かなかった事にして!全部忘れてしまって!…わ、私!帰るから!」
目の前で立っていた武藤君の顔はなんだか見たくなくって下を向いたまま勢いに任せて言葉を吐き捨てた。
そのまま走って逃げようとする私の腕を武藤君に痛いほどに掴まれた。
「…俺さ、お前が怖くて逃げてた」
ゾクリとするぐらいの低い声。
「あん時、居なくなるは大怪我するは、目覚ました後もどっかに行きそうなぐらいにぼんやりしてるはで、
よく考えたんだよ、お前俺と会う前はこんな怪我とか、あんな奴らに巻き込まれることも無かったんだって」
握られている腕に熱が集まる。
燃えそうなぐらい熱くてどこか痛い。
「そう思ったら関わらない方がいいんじゃねーかと思ったんだ」
ぽつりぽつりと話す武藤君の言葉に私は何もいえなくて。
「…だけど、無理だったみてーだわ」
はぁと今日何度目かのため息の後に顔を上げて私を見ているのが分かる。
視線が痛い。
「やっぱお前傍にいねーと不安でしかたねぇ。
何処に居るのか何してんのか誰と居るのか気になってしょうがねぇんだよ」
武藤君の言葉が何を言っているのか私の理解を超えていた。
「…え…?」
よく分からないと思い顔を上げて武藤君をみた。
「俺、お前が好きなんだわ、誰にも渡したくねぇ」
は?
え?
「え…?はぁ…?ええぇぇぇぇぇ!!!!??
ちょっじょ、冗談!!?冗談だよね?だってありえないから!!ホント!!マジで!!!!」
いやいやいや!!!本当!
あ!そうだよ!友達としてだよね!
やだなー何私言ってんの!!
「言っとくけど、惚れてるって言ってんだからな」
ありえない!!
「じょ、…冗談!!そんなわけ無いじゃん!?」
おかしいって!だって武藤君だよ!?
何で!?
突然のことで訳が分からなくってパニックになっていた私の腕を握る武藤君の手に力が入る。
「お前は、どう思ってんの?」
真っ直ぐすぎる瞳が怖くて体が震えた。




