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夏休みに入り、予定があるからといって薺たちの誘いを数回すでに断った。
(暑い…なんだろうこの暑さ)
じりじりと焼け付くような太陽。
行きかう人々もどこか気だるそうにしている。
本当は家から出るつもりは無かった。
補習の日はともかく後は極力家に居るつもりでいた。
「…なーんで、こんな時に限って…」
漫画を描いてはいたけれどインクを部屋中にぶちまけてしまったのである。
掃除はしたけれどやる気が出なくて気分転換に散歩でもしようと思い家を出た。
散歩にもならないやっぱり家に帰ろうかなと思っていたらふと目に映ったよく見る友とクラスメイト。
そっか、今日遊びに行こうとかって言ってたなぁとつい数日前のことを思い出す。
あれ?とよく見てみる。
薺や葛葉、赤里君は居るけれど武藤君が居ない。
珍しいと思った。
なんだかんだで4人で居るのをよく見かけるから。
わいわい楽しそうにしているのを見送って私は足を只進める。
行き着いたのは小さな公園。
木々のお蔭で日陰が出来ているベンチに腰を下ろす。
何をするわけでもなくボーっとただ目の前の景色を見つめていた。
ジリジリと肌に刺さる光と熱。
暑くて頭がぼーとして、何も考えられなくなって、吐き気を催す。
ぐるぐる、ぐるぐる。
回る頭。
回る思考。
気持ち悪い胃。
何でこんなにも、考え込むのか。
「いいじゃないか、別に…」
公園のベンチに座り込んだまま、頭を抱える。
あれは、あの出来事はいつか無かったことになるんだ。
お腹の傷は消えやしないけど。
どうして、どうして。
何でこんなにも心が晴れないんだろう。




