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そうだ、母さんは私を守るように父さんは母さんを守るようにして覆いかぶさっていたんだ。
赤かった空。
冷たくなっていく両親。
人々の騒ぐ音。
焼け焦げた臭い。
油の臭い。
油に引火して爆発する音。
生ぬるい液体。
それは幼かった私の脳内の記憶を全て塗り去ってしまうほど強烈で。
無理やり押し込めていた記憶はいとも簡単に出てきてしまう。
怖くて怖くて息が出来ない。
目の前には私の手があるはずなのに映るのはあの時の光景。
「…華…!涼華!…涼華!!しっかりしろ!」
「…っは…!!」
ビクリと体を震わせる。
しっかりと握り締められた手は暖かくて。
ペシンと叩かれた頬は少し痛くて。
私を記憶の奥底から引っ張ってくれた武藤君の目は赤くて綺麗だった。
「…ゴメン…大…丈夫…」
肩で息をする。
消えない。思い出したくないに。
もう随分と経ったはずなのに。
ぐっと握り締めた手を上から触れられて。
ハッと思った時には遅かった。
「ちょ…!む、武藤君!?」
勢いよく武藤君に頭を抱き寄せられた。
目の前には武藤君の胸板。
慌てる私をよそに武藤君は私の頭に顎を乗せてきた。
「いいから黙ってろ、黙って聞いてろ」
聞こえる武藤君の心臓の音。
トクントクンとなってどこか落ち着く。
「お前はさ、いつだっで溜め込んで限界まで我慢するんだよ。お前が何に恐怖して何に怯えてるかなんて俺は知りようもないし無理に聞こうとも思わない。
でも、たまには頼れよ。俺だけなんて言わねぇよ。
お前の周りには沢山の人が居るんだ。独りだなんておもうんじゃねぇよ。
独りで苦しむんじゃねぇよ」
独りで苦しんで独りで危ないことするんじゃねーよ。
こっちのことも少しは考えてくれ。
本当に寂しそうな声色で言う武藤君に素直に頷く。
「ごめんなさい。…ごめんなさい」
謝る言葉しか出ない。
いつだって、いつだって助けてくれる人が居て。
守ってくれる人が居て。
慰めてくれる人が居る。
大丈夫。もう大丈夫。
いつまでも悩んで過去のこと引きずっている場合じゃない。
そうだ、いつだって私は独りじゃなかったんだ。




