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頼りない意識の片隅でガチャリと音がする。
音のする方に顔を向ければ白衣を着た人と看護士さんと武藤君の姿が映る。
「月路さん意識はどうですか?」
私が目を覚ましたということを武藤君が先生に伝えたのだろう。
先生と看護士さんは私に何度か質問をしたり脈拍を測ったりしていた。
私の受け答えに先生は意識もハッキリしている。
これなら怪我が癒えればすぐに退院できそうだねと人のよさそうな笑みでそういった。
先生との会話の中でわかったのは5日間寝たきりになっていたのと、武藤君や薺たちが代わる代わるお見舞いに来てくれていたと言う事。
目が覚めたら警察の人が話しを聞きたいと言っていたらしいという事。
身内に連絡されていたと言う事。
祖父母に迷惑を掛けてしまったなぁと後で連絡を入れようと思う。
先生が先に部屋から出て行き看護士さんが2.3説明をしてくれた後病室を出て行った。
バタンという音がして扉が閉まる。
起き上がり体を起こしたら武藤君は最初のように備え付けの椅子に座って先ほどかってきたらしい水を私に渡してくれた。
ありがとう。
そういった後の会話が続かなかった。
言わなければいけないことはあったはず。
聞こうとしていたことがあったはず。
でも、何故だか言葉が出てこない。
心臓がバクバク言う音と病室に備え付けられた時計のカチコチという音が響いて気持ち悪かった。
どれほど時間がたったのだろう。
武藤君が何も言葉を言わずずっと窓の外を見続けて。
ちらりと見た武藤君の横顔は夕日に染められて赤くなっていた。
真っ赤に染められて怖かった。
背筋がゾワリとする。
感覚は無いはずなのに、手が濡れているような感覚がして恐る恐る見の平を見てみる。
真っ赤に染まったその手のひらは私に恐怖を思い出させる。
…父さん!母さん!




