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ふわふわする。
体が浮いてる気がする。
まだ、この心地よさに眠っていたい気がするけれどそれはダメだと頭の隅で反論する声が聞こえる。
起きなきゃ。
また皆に怒られてしまう。
でも、まだ眠っていたい。
もう何もない平穏な生活に戻りたい。
そう思いながらも皆で騒ぐのが楽しいと思っている自分がいる。
あのメンバーに大沢さんが加わったら更に楽しくなるんだろうなぁ、と思いながら、大沢さんに謝らなければいけないことを思い出す。
とても暖かい。
前に一度嗅いだことのある匂い。
とても安心できて守られてるんだと思わせてくれる。
いつまでも、いつまでも、この匂いの中に居たいと思ったけれどいつまでも甘えてちゃいけないのだ。
(起きて皆に謝らなきゃ)
ゆっくり、ゆっくりと目を覚ましたらそこは知らない部屋だった。
起きたばかりの頭では今の状況がよく把握できない。
体はだるい。動かすのも億劫で。
それでも首だけ動かしてあたりを見渡してみた。
右側に首を動かしたときに目に入ったのは椅子に座って腕を組んでいる武藤君の姿だった。
(寝てる…)
そうか、この感じ、前にもあった。
武藤君の部屋で目を覚ましたときと同じだ。
なんだかんだ言っても安心するんだ。
この人の傍は心地よい。
なんとなく目を逸らさずに武藤君の寝顔を見てみる。
目は閉じてしまってあの赤い色の瞳は見えないけれど。
長い睫毛。整った眉。すっと通る鼻筋。
薺とは対照的な蒼い髪。
どれをとっても綺麗だと思った。
外見だけじゃない。
しっかりとした意思を持ってる。
口は悪くて素行も悪いのかもしれない。
でも、それを差し引いても人を惹きつける魅力を持ってる。
とても、綺麗な人。




