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外の騒音が収まらない。
腕の痛みで体力が少しづつ落ちている。
痛い。熱い。
帰りたい。皆に会いたい。
この怪我を何とかしたい。
でも、彼女を放っておけない。
俯いたまま何も言葉を発さない彼女。
友達だと本当に思っていたのだろう。
同じ人を好きだと、憧れだと感じて。
同じ行動を共にやってきて。
誰も自分のことを拒絶しなかった。
なのに、今拒絶されたことに対してどうしていいかわからないんだ。
はぁ、と思う。
自業自得だと思う反面、此処でもし彼女を放っておいたらきっと親が夢に出てくる。
半殺しにされる。
独りになってしまったときは誰かがそばに居てくれるだけでそれでいいんだ。
「なにやってんのさ」
がしりと左手で彼女の右手を掴む。
「…え…」
なんて顔で見てくんのさ。
泣きたいのはこっちだよ。
「…きっとさ、あんたは友達の作り方を知らなかっただけなんだ。
好きな人の好きになり方を知らなかっただけなんだ。
まだ、やり直しは出来るんだよ。
いっぱい人は傷付けたかもしれないけど、アンタ此処に立って生きてんじゃん」
ゆらりと揺れる瞳。
「まだ、やり直しは出来るはずだよ」
諦めんの?此処で?
今までずっと想って来たって言ったじゃないか。
なりふりかまわずここまで来たんじゃないのか?
「アンタはきちんと言葉にしないからいけないんだよ。
失くしたらもう戻ってこないんだ。どんな結果になっても後悔しないように生きていかなきゃ、きっと辛いだけだよ」
アンタはよかったよ人殺しにならなかったんだ。
あの時私の心臓狙って刺してれば死んでたんだよ。
でも、そうしなかった。
怖かったんだよ。
当たり前なんだ。
人を殺すのが怖かったんだよ、刺したときにアンタ震えてたもん。
だから私はこの人のためにも行きなきゃいけないんだ。
「は…離しなさいよ!」
言葉ではそういってるけど目はそうは言っていない。
独りにしないで。置いてかないで。
そう訴えている。
「いや。何でアンタの言うこと聞かなきゃならないのさ」
べーと舌を出して言う私に戸惑っている様子だ。
まぁ、そうだろうね。
目の前に自分刺した奴が居るのに手掴んで。
励ますようなこと言って。
私だって驚きだよコンチクショー。
今までの人生で事故に有ったのはあるけど刺されたのは初めてなんだよ!
まぁ刺されたなんてそうそうあるもんじゃないけどね…。
「この騒動終わったらどうすんのさ。アンタ」
私が引っ張る形で歩いていく。
「え…」
早くとめないと、本当に怪我人だけじゃ済まない事になる。
「告白したら?きちんとしたこと無いんでしょう?」
そうだ、武藤君の話からしてもそう言う様な事を聞いたことは無い。
「…アンタって…結果が見えてるのに?」
それでも言えって言うの?と言われた。
「どっちでもいいけど、私は、このままじゃスッキリしないだけなんじゃないかなーと思っただけですよ。
私はよくわかんないけど…次に進むためには吹っ切れたほうがいいんじゃないかと思っただけですよー」
少し、羨ましく思ったのは事実だ。
はっきりとどんな形でも好きだと言える事が。
「…アンタに、言われてってのがしゃくだけど、まぁそうね、…終わりにしなきゃね…」
哀しそうに笑う彼女は、綺麗に笑った。
ああ、こんな風に綺麗に笑う事が出来るのか。
「…アンタ笑ってた方がいいよ、綺麗だもん」
そう言ったら少し驚いた顔をして当然よと憎らしく笑ってきた。
たった少しの間だったけど、彼女の重荷が落ちたように感じた。
後悔しないように生きていてほしいと私は空を見上げて願った。




