2
手首が痛い。
何とかならないかと思って無理やり動かしたら縄と柱とで擦れて手首から血が出てきた。
男が出て行ってずいぶんと時間がたった様な気がする。
もしかしてこのままここに放置されたり?
誰にも見つからずに…?
不安になる。
心臓がバクバクする。
助けてほしい。
何で、こんなことになっているのか。
寒いと思った。
春が過ぎて夏になりかかろうとしているこの時期なのに。
体が震える。
どうしようもない。
一人が怖い。
何も考えられなくて、少しパニックになりかけのところに聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「どお?目が覚めた?」
にやりと嫌らしいほどの笑みを浮かべて私を見下ろしたのはいつか見た、
トイレで呼び出されたときにいたリーダー核の女だ。
その後ろにも見たことのある顔があった。
「…また、あんた達ですか…」
ある意味関心するよね。
ここまでしつこいと。
「せっかく忠告してやったのにさ、
悪いのはあんたじゃん?言いつけ守らなかったから。
しかも今度は千鶴を仲間に引き込もうって魂胆?」
なにそれ?
仲間に引き込むってなに?
「…あんた達が大沢さんに嫌がらせしてるからでしょ?」
「はぁ?あれはね、千鶴が悪いのよ。
突然武藤君と赤里君に近寄らないでほしいとか、
一体何様だっつーの、あんなの顔が言いだけの女じゃない?
一人でいたのをグループに入れてやったのに」
まったく使えない。
そうはき捨てた後にゲラゲラ笑う目の前の人間が許せなかった。
「大沢さんは…あんた等の友達じゃなかったの?
大沢さんと武藤君の仲を取り持とうとしてたんじゃないの?」
「あんたバカでしょう!?友達なわけないじゃない!武藤君達に近づくのに都合がよかったから利用してただけよ!
あいつが武藤君が好きじゃない事も知ってたわ、だからなおさら都合がよかったのよ、周りの女どもが変に近寄らない為にね」
ああ、こんな、こんな人たちのせいで今まで大沢さんはどれだけ苦しんでどれだけ傷ついてきたんだろう。
「あんた等最低だな」
最低で、なんて哀しい生き方なんだ。
「何とでもいえばぁ?よくこの状況でそんな口が聞けるよねぇ?」
すっと近づいて、ひんやりとしたものが右頬に触れた。
「このまま、刺してやろうか?」
ピリッとした痛みが走ったと思ったら右頬から血が流れた。
傷はそこまで深くはない。




