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今日も、同じ一日が始まる。
そう思い、家を出たはずだった。
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ぼんやりとする意識の中で、考えてもよくわからなくって。
何がどうなってこうなったのかよく思い出せない。
「目、覚めたみたいだね」
ぞくりとする。
時間は経っても体は覚えていたみたいで。
「あ…あんたは…」
自分でもさっと血が引いていくのがわかる。
怖いとか、恐ろしいとか。
ついにやってきたんだとか。
「久しぶりだね。涼華さん。元気みたいで何よりだよ」
くすくす笑う目の前の男に吐き気がする。
「覚えていてくれたみたいで嬉しいよ。前回は邪魔が入ったしね…」
そうだ、初めて会ったときは途中で武藤君が来てくれたんだ。
嫌でも思い出されてしまう。
あのときの写真、言葉、場所。
二度と見たくない人間だった。
背中の柱に両腕を縛り付けられた状態で。
軋む腕。
ガンガンして吐き気がするほどの頭痛。
意識が回復したばかりで、
もう一度気絶でもして次に起きたときは布団の中だとか。
そんなんだったらいいなとぼんやりと考えながら。
まさか、ゲームや漫画やはてはドラマのようなことが自分の身に起きるとは想像なんか付くわけがない。
一言二言私に声を掛けたあの男は私を残してどっかに行ってしまった。
首を動かし辺りを見る。
どこか廃れたような工場のような。
屋根はぽっかり空いていて、綺麗な月が見えていた。
「…なんなのさ…」
ぼんやりとする頭で考えた。
何で私はここに居る。
気を失う前には何をしていた。
もうあたりも暗く月が出ているくらいだ。
一体どれほど気絶していたのか。
これはシャレにならない事件だ。
キラキラ輝く月を見て、あ、っと思った。
「大沢さん…どうしたんだろう」
もしかして怒っているかも。
自分から一緒に帰ろうと言ったのに。
悪いことをしたなぁ
皆何しているのか。
見たいアニメがあった。
したいゲームがあった。
読みたい漫画があった。
食べたいものがあった。
飲みたいものがあった。
私は、どうなるのだろうか。
…まさか、このまま殺されてしまったりするのだろうか。




