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人間諦めとか開き直りとか、とても必要だと思った。
「はぁ…」
朝、下駄箱を見てため息をつくのが日課になったかもしれない。
上履きを取り靴を逆さにしてみる。
ぱらぱらと落ちる無数の画鋲。
いったい私の足にどれだけの穴を開けるつもりだ。
コンチクショー。
「涼華さん、また??」
後ろから声をかけられたと思ったら大沢さんだ。
「あ、おはよー」
にこりと笑っておはようと声をかけてくれる大沢さんは最近やつれてきた気がする。
最近朝、必ず大沢さんと挨拶を交わして昼休みも大沢さんとご飯を食べて、帰りもよく一緒に帰るようになった。
あの日、みんなに色々と言った次の日からだ。
学校内であの脅してきた男子生徒を見かけることもない。
いや、すれ違っているかもしれないけど私は人の顔をよく見ないから気づかないだけなのかもしれない。
だからと言って何もないかといったら嘘になる。
今のように上履きに画鋲なんて毎日のように。
上履きがなくなったり、体操着がなくなったり、教科書が破かれたり机に落書きされたり。
まぁ俗に言う陰湿なイジメなんだろうけど…
おかげで出費がかさむかさむ。
「涼華さん…ごめんなさい何もかも私のせいで…」
大沢さんがすごく悔やんだ顔をして、泣きそうだった。
「なに言ってるのさ。大沢さんのせいじゃないよ。
それに…こんなのもう慣れてるから。別に今更どうってないよ」
強がりじゃない。
昔から慣れてるから。別に今更だとおもう。
「それに、今はこの程度だからね。
これから先がまだあるんだろうし。今から怒っててもどうしようもないじゃん?」
まだこれは序の口なんじゃないかと思ってる。
例の写真や男子生徒とか、あれから結構経つのに何もない。
寧ろそのまま何もないならそれにこしたことはないけれど。
大沢さんがじっと私の顔を見てくるから何事かと思った。
「何か…ついてる?」
「えっ!いや…涼華さん、最近明…るくなった?」
少し遠慮がちに聞いてくる大沢さん。
「えぇ…そうかなぁ…あーしいて言えば諦めた。
人生諦めと開き直りが大事だと気がついたからかなぁ」
うん。確かにあれからウダウダ考えるのが減ったと思う。
諦めたって言うより開き直った感じかも。
前に比べてムカムカするのが減ったのかも。
何か言われても気にしなくなったのかも。
「最近、涼華さん笑ってるのが増えたと思うのよ。
そっちの方がいいと思うわ」
最近、笑ってる?
確かに、増えたかもしれない。
でも…
大沢さんは…?




