表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好き・苦手  作者: な吉
11・泣く事話す事
40/67

3





スッと武藤君が立つ気配。


帰るのかな。

あきられたんだろうな。



テレビの音がすごく遠くに聞こえる。




何もかも忘れてしまいたい。

時間が戻ってくれたならばといつも後悔をする。






「涼華」



近くで声が聞こえる。



「俺はお前のことを嫌いになったり、見捨てたりしねぇー。

お前の事を守りたいと思うし、不安なものを全部壊してやりたい。

お前が話すのが苦手なのも知ってる、でも何があったか言ってもらわないと俺等はわからねぇ。

涼華、話せることから話してくれ。

全部自分の中にしまいこまないでくれ。

でないといつかお前が壊れてしまう」





気づけば、私は武藤君の腕の中に居た。



ああ、人ってこんなに温かいものなんだ。



こんなにも言葉をかけて貰えるって嬉しい事なんだ。



泣けそうなことなんだ。



「しゃ…写真を…撮られて、あの日、呼ばれて、考えずに…

トイレで、付いて行った私がいけないんだけど、色々言われて、言い返したんだ。ムカついて…」


きちんと言葉を整理出来ずに言った言葉は文章になってない。


それでも相槌を入れながら、話を聞こうとしてくれる武藤君に感謝する。




「今日、写真持ってきたんだ、あの人が。

渡されたって。私を良く思ってない人からって…」





そうだ、あの人は個人的に武藤君に恨みがあるとも言ってた。


上手くない説明でも何とか武藤君は分かってくれようとした。


「涼華、話してくれてありがとう」



感謝するのはこっちの方だよ。


いつもいつも。




「ううん。話したら…意外と落ち着いたかも…」



はっと気づいて慌てて武藤君の腕から逃げた。



「そんな逃げなくても…」



「ご…ごめんなさい…」



武藤君はいつも慣れない事をしてくるから、ドキドキする。

心臓に悪い。




「はは、まーいーや」


安心してる。

武藤君が笑ってくれてる事に。


笑って優しくしてくれるから頼り切ってる自分が居る。

いつも武藤君が助けてくれるから。




…駄目だ。頼り切ったら。


頼り切ってしまうから。





そんなことを考えてたら武藤君の携帯が鳴った。




相手は薺だったらしい。



電話から薺の大きな声が聞こえた。




最初は普通に話してたけどだんだん喧嘩腰になっていた。



「ちっ。涼華、薺が今こっちに向かってるらしい」


パタンと携帯をなおしながら武藤君は言葉を発した。



「あ…そうなんだ」


薺が来たらなんて言おう。




怒られるかもしれない。

飽きられるかもしれない。



あれだけ、力になってくれると言っていたのに。




薺がくる数分間がとても長く感じて、胸の辺りがムカムカした。




ああ、私は一人でも生きていけると思ってた。



だけど、こんなにも私を心配してくれる人がいる。


怒ってくれる人がいる。





そう思ったら目の前が滲んでた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ