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ざわざわと。
体育館での長い話が終わり、教室に向かう途中。
薺は先生に呼ばれた。
ふと、教室の前で足が止まってしまう。
なんとなく…入りずらい。
理由は分かってる。
私は人見知りが激しい方だ。
見知らぬ人間とまともに会話なんか出来ない。
ましてや、教室を空けたときの皆が振り向くときの視線なんか逃げたくなるほどに耐えられない。
どうしよう…
「どうしたの?涼華」
「ぎゃああ!」
突然の背後からの声に思わず叫んでしまった。
振り返るとーあ、問題児1号。
赤里 陽
彼がニコニコと笑っていた。
「あはは、相変わらず色気も何も無いね。涼華」
にこにこ笑いながら毒を吐く。
そう、彼は所謂美形と言うもので。
いやいや、彼以外、私の友人はそれはそれは皆様綺麗で。
顔も、性格も頭も良くない私の周りにこんな人たちが集まることに不思議だったりする。
「あ…赤里君、おはよう。今日は一人なんだ…」
清涼感溢れて優しそうで物腰柔らかそうなどちらかと言うと王子みたいな感じの彼。
そんな彼の周りをいつも取り巻く女生徒は居なかった。
「ああ、せっかくの始業式だからね。丁重にお断りしたんだよ。それより邪魔だから早く教室入ってくれないかな」
ニコニコニコニコと。
ああ、彼はこうだから薺と喧嘩になるんだな、と阿呆な事を考えつつ渋々教室のドアを開けた。
ガラガラガラ。
以外にも教室にはまだ生徒は少なく10人程度。
前の黒板を見て、席は自由に座れ!
というのが書いてあった。
教室を見渡し、一番前の窓際の席に座った。
一番好きな場所。
鞄を置いてほっと一息をついた。
「涼華はいつも角の席に座るよね。好きなんだ?」
椅子に座った直後後ろから赤里君の声がした。
「好きって言うか…落ち着くだけであって…」
つーか!なんでアンタ後ろの席に座ってんの!?と
思いつつそれは口に出して言えなかった。
「ふーん。どうでも良いけどね」
本当にどうでも良いように欠伸をしながら携帯を取り出す彼。
どうでも良いなら聞いてくんなよ。
「あ、赤里くんだぁー!!」
キンキンする女生徒の甲高い声。
入り口入ってすぐに聞こえた。