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手に持ってたジュースをつい落としてしまった。
紙パックのジュースを2つと缶ジュースを3つ。
今度は左頬を殴られて髪の毛を掴まれた。
「ブスが粋がってんじゃねーぞ」
ムカつくムカつく。
自分の容姿なんか一番自分が理解してんだよ。
わはははという周りの周り声も何もかも。
ムカつきすぎて髪の毛を掴んでる奴に落ちた紙パックのジュースを投げつけた。
「ぶっ」
見事に顔面に入ったようだ。
「てめー!!」
もう一回左頬を殴られた。
意識が飛ぶかと思った。
床に倒れこんでその上からジュースをかけられた。
きっとさっき私が落としたジュースだろう。
ムカつく!!勝てるとは思わないけど!
一発殴ってやらないと気が済まなかった。
頭がガンガンして思うように動けない。
ポケットから財布を取られるのが分かった。
悔しくて泣けてくる。
「へーまじで、持ってんじゃん」
「お、ほんとじゃーん」
ゲラゲラ笑う声が耳障りだ。
「お前も馬鹿だなーさっさと金だしゃーこんな事にはならなかったのによー」
目の前で足を屈め厭らしく笑ってる一人。
ゲラゲラ笑ってるその男が一人吹っ飛んだ。
私の頭上から足が見えた。
「今、コイツから取ったモン返せ」
ドスが聞いた低い声でポケットに手を入れたまま残りの2人を威圧しているのは武藤君だった。
「は?お前何?」
「あ、もしかしてコイツお前の女ー?だったら趣味悪りーなお前ー」
そんなわけ無いない!と思いながら馬鹿にしたような2人を置いて武藤君を見た。
斜め後ろからだったけど…無表情だ。
なんで助けてくれたのかわかんないけど。
今、怒ってんのかなぁ。
薺とは違う少し藍み掛かった髪がさらっと流れたと思ったらもう一人殴ってた。
「お前さ」
静かに、武藤君が口を開いた。
「死ぬか」
その声はとても低くて、その場に静かに響き渡った。
二人をあっという間に気絶させた武藤君ともう一人を見比べた。
きっと、武藤君の方が喧嘩が強いんだろう。
相手も少し顔を青ざめている。
「くっ」
どうも相手は動けないで居るらしい。
正直、武藤君が不良だという事を少し…忘れてた。
私とは全く違うタイプだったんだよ。
でも、きっと彼のほうが優しいのだろうな。
「涼華、立てるか?」
ぼけーっと倒れていた私に手を差し伸べてくれた。
「あ、うん…」
左頬が痛いけど正直全身に力が入らなかった。
ぐいっと引っ張られた。
抱きかかえられるようにされた。
ひいぃぃぃ!! は、恥ずかしい…!!
「お前その二人連れてさっさと消えろ。二度と俺等の前に姿を見せるな」
そう言って相手から私の財布を奪い取った。




