第8.5話 フィーナside in グリットモント
某月16日21:47
「ステータスは思い切り後衛向きじゃないわねぇ。まだLv4だからどうとでもなるけど。」
腕組みしつつ、目の前に呑気に座りお茶を啜っているユッキーを見ながら私はため息をついた。
身長は140cm程。肌の色は薄めで少し弱々しく見える程度の痩せ型。長めの金髪の髪はぼさっとしてるが不潔感はなく、垂れた大き目の瞳は濃い緑色をしている。犬耳とか着けたらとても似合いそうだ。
それにしても、趣味まっしぐらな程、ショタっぽい感じのキャラだなぁ、おい。親友としてはユッキーの中の人の将来についてとても不安を感じるよ。私の好み弩ストライクだもの。斯く言う私も人に言える程まともなキャラではないけども。
「ねぇ、ユッキー」
「なぁに、フィーナ」
「あんた、前衛やるの?」
「まだ決めてないよ。どうせまだ転職レベルの20には程遠いしね」
ユッキーを始めてから約1週間程。経験も無いと言っても良いが、何より持っている装備がとても貧弱だ。初心者なんだから仕方ないと言ってしまえばそれまでだが。お金を稼ぎ、経験を積み、それなりに強い武器と自分と一緒に戦ってくれる仲間を手に入れるのにはかなり時間が掛かるだろう。かつての自分の様に。
私もユッキーとは一緒に楽しみたいが、経験もレベルも違いすぎてユッキーと現状で仲間になるのは無理だ。
私が今のユッキーと一緒に遊んだとしても、私が一方的にユッキーという足枷を引き摺りながら敵を叩きのめすという戦いにしかならないから。現状としてはユッキーのレベルが上がって私と一緒に遊べるまでに成長してくれるまでの辛抱かな。
ただ一つの不安要素は、私と友達だと言う事。
私は『クリムゾン・クロス』というギルドに所属している。名前の由来は、私が個人所有している赤い十字架型の大杖。私がこの杖を手に入れた時に作った『私のギルド』だ。
『クリムゾン・クロス』は廃プレイヤーのギルドとしてある意味とても有名だ。メンバー数は15人程度でPK(プレイヤーキラー)こそしていないが、ギルドタウン持ちのギルドはそうはあるものではない。しかもギルドメンバーの中には不正プレイヤー討伐や大手ギルドの攻防戦に手伝いに参加している者もいる上、かなり特徴のあるアクの強い古参揃いだ。知らない内に恨みや妬みくらい買っていてもおかしくない。
今更ながら、とても拙い事をしている事に気がついて頭を抱えたくなった。
そんなギルドのギルドマスターをしている私とユッキーが友達として席を並べてしまっている。ユッキーも仲間として扱われ、そういう者の対象になってしまう可能性を考慮しなければならなかったのに。たとえユッキーが、全くの素人で、初心者であろうともだ。
私の葛藤を他所に、目の前のユッキーはのほほんと垂れ目をの端をさらに下げながらお茶を片手にまったりとしていた。リアルだったら頬を両手で引っ張って伸ばしてやるのに。ていうか、これ持ち帰りしたい。私の嫁(?)にしたわぁ。さすがユッキーの中の人。なんていう犯罪的なキャラ作ってんだこの人は!
っと、思考が逃避モードになってるよ。
まぁ、なるようにしかならないか。
「よしっ」
私が勢い良く立ち上がり、両手をテーブルに叩きつけると、ユッキーがビクッっと体を震わせて目を大きく見開いた。
「なっ、なに?いきなり立ち上がるとビックリするよ」
目を瞬かせて私を見上げるユッキーに私は宣言した。
「じゃあ、今の職業(旅行者)のレベル上限70まで上げてから転職しなさい!」
「え?でも、確かLv20で転職できるよね。マニュアルに書いてあったよ?」
頭に『???』を浮かばせながらユッキーは言葉を返してきた。
マニュアル通りに育てても強いキャラなんて作れるわけないじゃない。
「何いってんのよ、普通に育てたって引き継ぐポイントが少ないだけで意味ないじゃない」
「でも、転職しないとユッキー弱いままだよ!」
「大丈夫、っていうか今決めた。よし、スパルタで今から…はもう遅いから、明日の昼から育てるから覚悟なさい」
「え、ええ〜っ」
ふふっ、私に会ったのが運の尽きと思うが良いさ。そして後々、ユッキーは私の嫁宣言してやるんだから!
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『マニュアルより抜粋』
★ギルドについて。
ギルドは構成3人以上で作成が可能となります。費用は掛からず、申請のみです。
ギルドは町の役所に2000万sigyを支払う事でギルドホーム(ギルドメンバーの集合場所)を作成・購入する事ができます。ただし、毎月賃貸料として100万sigyを支払う義務があります。
また、特殊イベントをクリアし一定額を支払う事で町(ギルドタウン)を購入する事も可能です。特典として、購入した町で発生した収益の2%をギルドの資金として使用する事ができます。譲渡は不可。
ギルドはギルドの城を所有する事ができます。城の所有については毎月開催される攻防戦により城の争奪が実施されます。城を保有した場合、その領地配下の町で発生した収益の10%がギルドの資金として運用可能になります。城の取得は攻防戦のみで費用は掛かりません。
★レベルアップについて。
各キャラクターは転職する度にレベルが1に戻ります。ただし、前職で取得したステータスポイント及び、LP(ライフポイント)、SP(スキルポイント)は継続した状態になります。
各職に対するレベル上限は以下の通りです。
1次職:最大Lv70
2次職:最大Lv90
3次職:最大Lv99
4次職:最大Lv140
5次職:最大Lv150
前回短かった上に投稿が遅かった為、今回は早めの投稿しました。
基本的に『第X.5話』となっているものは、オマケとして考えていただけると助かります。また文末に、このオンラインゲームのギルドと職業Lvについても追加記載しました。設定的にある程度溜まったら、設定を別に作成するかも思案中です。
因みに第7話でフィーナの職業「プリースト」はヒーラーの上位職と説明していますが、正確には、2次職:ヒーラー、3次職:ディーコン、4次職:プリースト、です。5次職はビショップです。
次回は『第9話 ユッキー初めての・・・』です。
ご要望・ご不満その他お待ちしています。