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秋の原

試験投稿中です。作者迷走中ため、連載はアクセス数、評価に依存します。誠に勝手ながらご了承下さい。

「これは召喚とかではなく、りっぱな拉致という犯罪である。断固、俺は訴え・・・モゴ」


後に、如月キサラギ勇吾ユウゴが語ったかどうかはさだかではないが・・・


金髪碧眼の少女と出会う、2時間前、都内某所というかアキハバラ駅構内。


そう、ユウゴはいつもの週末を過ごしていた。


「ぐふふ、メイ様に踏まれたい。」


メイド服姿にホウキではなくライフルを構える気の強い女性を模したフィギュアを握り締める、


こいつは、何故か幼馴染の神宮寺ジングウジ吉良キラ


「ユウゴもそう思うだろ?」


「あぁ、そうだな。相変わらずの阿呆アホウには付き合いきれんわ。」


家は隣同士。歳も同じ。家族ぐるみの付き合いもあり。家から帰ればたまにこいつが俺の部屋にいる。


幼馴染と言ったら、そこそこかわいい女の子が相場だろ。それに引き換え、超がつくほどのM男ときたもんだ。


せめて、普通の奴が良かったな~。と中学の時分はよく思っていたが、最近では完全にあきらめた。


「そういうなよ。アホウはやさしさがない。せめて、”あんた、バカぁ~”って言ってほしいな」


「バカは死ぬまで治らん。」


キラは普通ではなかった。渋谷や新宿をあるけば、名刺をもった芸能スカウトマンがほっとかないくらいの


美形なのだ。ただし、フィギュアを握りしめてない時に限るが。


改札を出て、中央通りの交差点を渡り電気街へ。


それ故に、高校1年の冬は本当に寒かった。母親からは、どうせあんたはもらってないでしょかわいそうだから


買ってきてあげたわよと、スーパーの特売のファミリーパックの板チョコ。どうやら、買い物先でキラの親と


出くわして、持ちきれないほどの本命チョコをもらってきたという恒例の自慢話を聞かされたらしい。


「そういうなよ、ゆうタン。」


「その呼び方はやめろよ。前も言ったろ。」


「最近流行ってるんだぜ、ゆうタン」


「お前の中だけだろ、きらタン」


と他愛のない会話をしながらケラケラと笑う。神宮寺吉良にとっては、見た目の問題もあるからか、


学校などではオタクキャラではない。そういう意味で如月勇吾は、全力で自分をさらけ出せる相手であり


親友だと思っている。


ユウゴにとっても趣味が全く違うわけではない。育った環境の半数を共有している相手なのだから。


「どこから行く?クレにする?劇場?」


クレとは彼が握りしめてるようなフィギュアが所狭しとショウケースに並ぶ、5階建てのビルのことで、


劇場とは人気絶頂のアイドルグループが毎日公演を行う専用ホールのことである。とは言え、劇場に関しては


チケットが簡単にはとれないため、ここではプロマイドなどファングッツを扱うショップをさしている。


「あぁ、そうだな。今日は却下だ!」


「え~、どうしてだよ。メイ様の新作が入荷してたらどうするんだよ。一生怨むぞ。」


「メイ様の新作がでるのは来週、お前予約しただろ。並ぶの付き合ってやるから今日は俺に付き合え。」


ユウゴはそう言うと、明朝体で招待状の印が入る封筒をコートのポケットから引っ張りだす。


「I、N、D、E、X、いんでっくす?インデックってあのばりばりの銃とかミサイルとか作ってる会社のことかぁ?」


掲げた封筒に書かれた会社名を目を白黒させながら覗き込むキラ。


「ばりばりの銃ってなんだ、そんな恐ろしい会社が日本のど真ん中にあるわけないだろ。インデックスっていうゲーム会社。」


「ゲーム会社?聞いたことないな~。ゆうタン、ギャルゲーいっぱい買ってるから招待されたのか。」


「そうそう、ってそんなわけないだろ。それにギャルゲーではなく美少女ゲーム、略してビショゲーなのだ、きらタン。」


株式会社インデックス・ファクトリー 創業2000年3月 資本金520000万円 


創業時よりネットワークゲーム、いわゆる、「多人数同時参加型オンラインRPG(MMORPG)」を多数運営する会社であり


2年前に発売された”グランドゲート”というゲームから搭載された機構により全世界に数万のユーザーを抱え、大企業に成長したのである。


「で、ゆうタンにインデックスタンは何用?」キラは手に持ったメイ様の人形の銃を構えるとユウゴに狙いをさだめる。


「何用って?ギアメモリーに不具合がある可能性があるから持って来いって。」


もう片方のポケットから携帯電話のハンズフリーマイクのようなものを取り出す。


「あぁ、それってギアメモリーっていうのか、てっきりハンズフリーマウスと思っていた。」


キラの言っていることは大方間違ってはいなかった。インデックスはゲームだけで急成長したわけではなく、


その新搭載の機構、脳波の読み取り装置にあった。ギアメモリー、パソコンのカーソルを動かすだけでなく、


文字も打てるし、図面も引ける。パソコンの中のゲームキャラを自由に操れるのだからそんなことたやすい。


小型なその機器は、あちらこちらの分野でひっぱりダコになっている。


不具合のようなものは、感じていなかった。レベル依存のRPGとは違い、プレイヤースキルが物をいうゲーム。


思ったようにキャラが動き、初心者でもとっつきやすい。ハイレベルプレイヤーになると、動きが何倍ものスピードで


動く。感覚が引き伸ばされたような、1秒が何秒にも感じる感覚。これを感じ始めると病みつきなるプレイヤーも続出し


今ではちょっとした社会現象にさえなっている。


だが、キラが知らないのもうなずける。単純に”グランドゲート”と言うゲームはグラフィックがよくないのだ。


こいつの大好物の萌えなキャラは一切出てこない。女好きなキラにとっては眼中に入らない分野に違いない。


粗方説明し終えると、封筒に入った地図を広げ目的地に向かう。


さも、巨大な自社ビルだろうなと思っていたが、どんどん裏道に入って行く。


さえないアダルトなゲーム屋を通り過ぎ、薄汚いパソコンのパーツショップの脇に入り、


もはや何が売りたいのかさえわからないジャンクショップのカドを曲がるとそれはあった。


「ここか、ユウゴ。お前、道間違ったんじゃ。」


地図を見返すがやはり間違っていなかった。


目の前には、高度成長期に立てられた雑居ビルを引っこ抜いてきたような建物があった。


「傾いてないか?」とキラが言う。


「大丈夫だろ。」とユウゴが言う。


「俺、ここで待ってるわ。」とキラが言う。


それ以上は言い返せなかった。3段上がった低い階段、コンクリートの塊りを昇ると


頭が天井に着かんばかり低さ。小学校の階段なみの狭い低い2階へ続く通路。


さずがに、5階までこれを登るはきつそうだと思った瞬間。目の前に、鉄扉を見つけた。


恐らく、エレベーターであろうその扉は通常のものより3回りは小さい。


「人、乗せる気あるのか。」と呟き振り返ると、遠くでキラが早く言って来いと天を指さしていた。


仕方なく、上向きの矢印が入る丸いボタンらしきものを押し込む。汚れきったそのボタンは


中の電球が切れてるのではないかと思うほど、薄く色を変えた。


しばらくすると、ベルの鈍い音が響き、鉄扉がゆっくりゆっくりと開いた。


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