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「死闘:人間VSこ焼き!」

掲載日:2026/07/09

「…………どの時点というか、

 どのタイミングでそうだと分かったんだ?」

「どのタイミング??」

「たこ焼きって言ったら、

 小麦粉、卵、水?色々材料あるよな?

 まずタコに転生してから~の

 たこ焼き勇者?

 いきなり完成形の

 たこ焼きになってたのか?

 あとは焼き上がる前の汁の状態からなのか、

 焼き上がって、

 ソースや鰹節やマヨネーズがかかってる

 完成形の状態でなのか…

 あーネギもあるな。

 どの過程?」

「あぁ…どこだろう、どこかなぁ。

 しっかりと自分を認識出来たのは、

 熱々のプレートの中で、

 同士たちを見たからだから、

 やっぱ完成形一つ前ぐらいかな?」

「なるほど…でね…俺さ、

 もう3個ほど食べちゃったんだけど、

 12個焼ける大き目たこ焼きプレートの全部が君…

 そうだとしたら…

 聞きづらいけど…」

「それはしょうがないね。

 食べられるのが僕の、

 僕らの運命だし、

 仕方ないけど僕は僕。

 今君と話してる

 この個体一つだけが勇者!

 だから安心して。

 他のは僕と無関係、

 独立した存在…だと思う」

「そ、そうかーそれを聞いて安心だよ。

 ジャー遠慮なく食べていいんだね?」

「え?え?え!それは困る。

 馬鹿を言うな」

「なぜ?

 俺の腹を満たすために

 生まれて来たんだろう?

 よく分かんねーけど」

「いや、僕は勇者のたこ焼きとして、

 この世に転生して来たんだ。

 これから悪を討伐しに行くんだよ!!

 食べちゃだめだろ?」

「いやいやいや。

 たこ焼きなのに勇者?!

 そんなん無理だろ、

 アニメみたいに?

 悪者を討伐??

 無理無理無理無理無理!!」

「むりむり言うな~~!

 そうじゃないと僕が今ここに居る

 意味が無いだろ~!

 たこ焼きの勇者、

 従者の人間と共に、

 悪を成敗するのだー!!

 ほら旅立ちの時は来たから

 冒険の準備をしなさい」

「従者…それってまさか俺の事?」

「だろ?

 他に誰も居ない。

 この汚い部屋で

 1人寂しくたこパしてるのは誰だ!

 それはお前だー

 僕と君でいざ大魔王討伐へ」

「…まぁ当たってはいるいるが、

 彼女は急なバイトのシフト変更で

 ここに居ない…

 だから寂しいけど、

 だからってお前なんか呼んでない。

 たこ焼きな勇者など俺には無用…

 いい加減俺に喰われろ…

 うりぁああああああああ!」

 男はプレート上の勇者めがけその頭上へ

割り箸を振り下ろす!

「うわぁあああああああ」

 とっさに隣の空いた丸穴に避ける勇者。

ガンガンガンガンカシーン!

 プレート上の攻防は2分は続き、

「ハァハァハァハァハァ…

 俺はいったい何をやってるんだ…

 こんな事が現実なのかよ…

 彼女が来れなくなった寂しさで、

 幻影を見ているのか…

 ハァハァハァ」

 息のあがる部屋の主。

飲酒状態もあり目の前がふらついている。

「こら従者!

 勇者様に向かって何事だ!

 ふざけんなこのタコ!

 あ、だめだタコを侮蔑してはならない!

 こうなったら従者とて情はかけない

 反撃だ!」

 ついに切れた勇者の反撃。

マヨネーズに飛び乗り

従者の顔が軟性の液体にまみれ

ブッチャアアアアアアー

ビチョビチョビチョッリ

部屋中に飛び散り、

縦横無尽に駆け回り飛び回る勇者に、

空気よりも軽い高級かつお節も舞い、

たこ焼きの中に入れる色々な

ネタも跳ねまくり、

赤い紅生姜はまさに血の色。

「おいこらー彼女来るから

 掃除したばっかりなんだぞー

 腹も減ったままで、

 猛烈に腹が立って来た

 ゆるせーん」

 従者の怒りは頂点に達し、

箸を勇者に投げつけ右手におたま、

左手にたこ焼きのネタが入っていた

ボールを盾に、

「しねこのたこ焼き野郎!」

 防御を硬め突進していく。

「ふざけんな馬鹿従者。

 自分が何をしているのか理解しろー

 お前は…自分の主を攻撃…ん?

 あぁあああああぁああああああ!!」

 そして勇者たこ焼きは気づいてしまった。

「グワハハアハハハハハ

 御託ごたく抜かしてないで

 いい加減俺の食欲を満たす糧となれー

 俺様が従者だとー

 ふ・ざ・け・ん・なー!!

 俺はこの部屋の神!」

 その時、

突如、開け放たれた窓から突風が吹き、

カーテンが大きく揺れ、

日差しで逆行になる従者。

顔は真っ赤に目は釣り上がり、

「これでも喰らえー

 ぐわははあははははあはっ」

 口は大きく開き唸り、

暗さの中に浮かび上がるその姿まるで…

「僕は大きな勘違いをしていたぞ!

 お前がお前こそが悪の枢軸

 大魔王そのモノだったのかー!!

 ようやくここに僕が登場した意味が分かった

 いきなりボス討伐クエストだったんだ!」

 勇者たこ焼き物語の終盤へ

いきなりエンディングな展開に大興奮。

テーブルにあった爪楊枝を何本も束で抱え、

魔王の体へ飛び移ると、

プスプスプスプス刺し貫き、

楊枝の先端が潰れると何本もの替えで

攻撃を加えていく。

「ぐわははははあはは

 爪楊枝如き恐れるに足らん!

 そんな物がお前の武器だとは恐れ入る

 情けなくて涙も出ぬわー

 これでも喰らえー」

 おたまで弾かれ、

盾のボールがたこ焼きをテーブルに封じ

覆い隠し、

「ししししまったー」

 追い込まれ逃げ場を失う勇者。

ボールの上からおたまでガンガン叩かれ、

グワングワングワグワ~ン

「耳が!耳が潰れる~やめろ~!!」

 ボールの中で耳を押さえ、縮こまり

この状況を打破しようと試みるも、

何も見えず激しい音の攻撃は数分続き、

「そろそろ根を上げたかー

 クソたこ…

 いいか?

 今から開けるぞ

 大人しくしてろよ!

 その後きちんと処理、

 生ゴミへぽいっだー!

 お前の命運もこれまで

 ぐわははははははは

 たこ焼き如きが人間様に

 楯突くからこなるんだー」

 魔王の声がこれまたボールの中でガンガン響き、

『うわあああああ~

 もう駄目だぁ~』

 これまでかと思いかけた勇者ついに力尽き、

悪の権化には叶わずその運命をまっとうしようとしたその時。

アパートのドアがガチャリと開き、


「ちょっとちょっと何~

 何この匂い~うわぁああ部屋きったなーぃ

 何してるのよ、

 せっかくシフト替わってもらって

 買い物して来てみたら

 私が居なくて寂しすぎて狂っちゃったの~?」

 ぐへぐへ笑いながら

テーブルのボールを押さえている名前は裕二くん。

名を呼ばれハッと我に還り、

「あぁああああ

 沙也加ちゃあぁあああん

 来てくれたの?

 死ぬほど嬉しいよぉおおお」

 裕二は汚れた体のままさ恋人に抱きつこうとするが、

沙也加にヤメロと両手いっぱい伸ばされ拒否られている。

「何なによ何があったの?

 何かと対決してたの??

 せっかくのタコ焼きネタが全部、

 部屋中に…あぁもう…まさか

 あれが出た?

 そうなんだね!!

 いやああああ帰るぅ!!!

 だからこんなボロアパート早く引っ越して

 2人で住める所探そうよぉ」

 あれと言われて裕二。

真実は話せないと返答に困り、

「いやもう大丈夫だ。

 部屋散らかしたけど、

 退治したからご褒美のチュー」

 迫ってくる男に、

「の前にシャワー浴びて来て!

 部屋片付けるから」

「あぅうう…分かった…ごめんね…」

 トボトボバスルームへ向かい、

シャワーの音が響きだす。

「もうぅ…

 こんなしっしゃかめっちゃか…

 なんでこんなアホ男好きに

 なったんだろぅ

 あはは」

 沙也加は自嘲しながらため息一つ、

部屋を見回し真っ先に

ひっくり返ってるボールを元に戻した。

するとそこに無惨なたこ焼きの残骸が一つ、

落ちていた割り箸でつつき、

お玉にのっけると、

彼女はそのまま

窓から真下の川へ放り投げた。

ジャプン

 小さな水しぶき。

勇者たこ焼きの生死は不明だったが、

彼はユラユラユラユラ水の中。

すると行き交う魚たちが、

「また?」

「討伐失敗?」

「くすくすくす」

「叶うわけないやん人間に」

「あはははははは」

「ばーかばーか」

 と囃し立てる魚たちに声がうっすらと聞こえ、

底に付きついに目を覚ました勇者。

「そうかーやっぱ無謀だったのかー

 はぁぁあ。

 これから僕どうしたらいいのん?」

 へこたれうなだれていると、

遠くの方からおかしな魚が泳いで来るのが見え、

互いに奇妙だと見つめ合うふたり、

「あぁ君もかい?」

 その魚が話しかけてきて、

「はい。もしやあなたも?」

 たこ焼きも答え、

「あなたは誰なのですか?

 あなたも魔王と戦った末、ここに?」

 たこ焼きは身を乗り出すように質問していた。

「魔王??あぁ人間のこと?

 ならそぅだねぇ戦ったね僕も…

 そして今やこの川の住人」

 自分と同系色の色をした魚は話を続け、

「でもねー思うんだけど、

 僕らはやはり川にいては

 いけないように思うんだよ…

 これじゃまるで…」

「まるで?」

 たこ焼きはゴクリ唾を飲み込み、

「僕らのほうが魔物かもだよね…」

 話し終え去ろうする魚に、

「魔物…まさか僕らが…あ。

 あなたのお名前は!」

 聞くと、

「なんだっけな、

 もう何十年もここに居て

 自分が何者か分からなくなってね

 あぁそうだ思い出した。

 たい焼きだ!

 うんうん思い出させてくれてありがと」

「たい焼きさんですね。

 あー僕は勇者…じゃなくて

 たこ焼きです。

 どうぞ宜しくー」

  たこ焼きは言いかけて

勇者は自重し、

水の底でぼーっと

自分の前世を

思い出そうとしたが、

記憶はもうかなり薄れていた。


 おしまい

高評価・コメントなどなどよろしくね

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