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18話 君と一緒に


「ふぅ〜、結構たくさんのお客さんが来たな〜。」

「そうだな、しばらく休憩しよう。」


 今日は文化祭当日。俺達1年3組はクラス企画として、メイド喫茶を

 している。俺たちはメイド役として、接客などの仕事をしていた。

 だいぶ客の流れを落ち着いてきたということで、俺たちは休憩を

 もらっている、というわけだ。


「それにしても、佐野ばすごいな〜。いつも通りな感じなのに

 接客もうまくできていて、お客さんたちもたくさん喜んでるし。」

「——朝田も十分、仕事できていたよ。お前の噂を聞いて来た客も

 いたぐらいだし。」

「本当に?えぇ〜恥ずかしいな。」


 ひとまず休憩して、いろいろ話をしていた。

 でも、せっかくの文化祭だし、他のところも見に行きたいよな〜、

 なんて、考えていたが旬はシフトの都合で噛み合わないし、他の人も

 別の仕事や部活での企画とかで、中々誘えないし、どうしよう。

 そのとき一つ考えが浮かんだ。


「——...ねぇ、一緒に文化祭まわらない?」

「え?」

「あ、いや、ほら今日せっかく文化祭なんだし、いろいろ見て回りたくって、

 佐野がとくに他に予定がないんだったら、一緒にどうかなって...」


 佐野はとくに顔を変えず俺の話を聞いていた。とくに反応もしないから、


「あーいや、嫌ならいいんだけど...」


 そう言って立ち去ろうとしたが、


「おい待て。行きたいんだろ。じゃあ行くか。——でもその前に脱げ。」

「はっ!?」


 いきなりそんなことを言われて一瞬戸惑った。


「...違う衣装のことだ。その格好のまま歩き回るわけにはいかないだろ。

 制服に着替えろってことだ。」

「...あぁ、そういうこと...」


 彼は少し呆れ顔でため息をついて話した。


「それで、どこに行きたいんだ?」

「あっ!軽音部のライブとか、お化け屋敷とか、食べ物屋さんとか、他にも

 ステージでの出し物とか!いろいろ見たい!」


 そう言って俺たちは校内を一緒にまわることになった。

 まず行ったのは3年1組のお化け屋敷。水泳部の柊先輩のクラスだ。


「おー、朝田くんと、それに佐野くん。来てくれたん?ありがとな。」

「こんにちは柊先輩。ここのお化け屋敷めっちゃ怖そうですね。」


 それを聞いて先輩は得意げにニヤついて悪そうな顔をした。


「そうやろ?めっちゃ怖いんよ。楽しみにしとってな。」


 そんな話をしているときに


「キャー!!」「わぁ〜!!」「ドッヒャー!!」


 お化け屋敷に入っていたであろう先客たちが続々と逃げ出てきた。

 その姿を見てどれだけ恐ろしいんだ...と少し怖気づいたが、

 隣にいた佐野に目をやると、全く動じず普段通りにしていた。


「...怖くないの?」

「——怖いのか?」

「だって皆めっちゃ叫んでるし...」


 佐野は変わらず余裕そうにしていた。


「だって、急に脅かしてきたりするくらいだろ?っていうか怖いんなら

 なんでここ入ろうとしたんだよ。」

「——旬とかはこういうのめっちゃ苦手だから、一緒に来てくれないし、

 お化け屋敷とか誰かと行くの始めてだし、行ってみたかったんだよ。」


 俺は少しだけやばそうな雰囲気に身構えていたがそれでも、こいうのは

 始めてだから、しっかり楽しもうと思えた。


「——...そうか、そうか〜じゃあお前は俺の後ろに隠れていていいぞ(笑)」

「あーバカにしないでよ!ちゃんと歩くから!」


 佐野は楽しそうに俺をからかっていた。そして、いざ覚悟を決めて

 俺たち二人はお化け屋敷に入った。


 屋敷内は薄暗く足元が見えないくらい暗い。不気味な雰囲気が漂っていて、

 おそるおそる歩みを進めた。

 佐野は平気そうにしてスタスタと歩いている。後ろを振り返って俺に

 向けて言った。


「もう降参か?まだ何もでてきていないのに。そんなに怖いのなら

 俺がおぶってやっても...——」


 そのとき佐野の背後から大きな黒い影が現れた。恐ろしい顔つきをした

 幽霊が襲いかかってきたのだ!急に出てきたもんだから驚きすぎて思わず


「ギャアアアー!!!!」


 盛大に叫び声を上げてしまった。


「——...おっこの声は朝田くんか。めっちゃ怖がっとるな(笑)」


 なんて屋敷の外で先輩が俺の叫び声を聞いて楽しんでるなんて知らずに。


 腰を抜かしてしまったが、その後佐野に意識を向けた。

 彼のことだから、俺の様子を見てまた笑ってくるだろう、とか思っていたが、


「おい、佐野?佐野!大丈夫か?って、ああぁー!!」


 床に倒れて気を失っている佐野を俺は発見した。

 急いで駆けつけて体を揺さぶりおこした。


「大丈夫か?おーい。」


 しばらくして意識が戻ったみたいで、目をこすりながら起き上がった佐野は

 何があったかよく分かってない様子。


「——起きたか...。全く怖いのが苦手なら余裕ぶらずに先に言っといてよ...」


 やれやれ、と言わんばかりに俺はため息をついた。

 佐野はすぐに言い返した。


「——...少し寝てただけだ。」


 (...え?無理があるでしょ...)


 さっきまで何もなかったように平然とした態度に戻った。


「...今なら引き返せるけど...?」

「...行くんだろ?」


 また変わらずに強気な態度で彼は進もうとした。

 どうなっても知らないよ...と思いつつ、ついていくことにした。


 でも先輩のクラスの作ったお化け屋敷は本当に仕掛けとかもよくできている。

 その証拠に毎回その仕掛けに引っかかった佐野が驚きまくってるんだから。


「今のは明らかにビビって...」

「いいや、ビビってない。」


 俺の言葉を遮るようにそう言った。なんでも完璧でクールな彼に

 こんな弱点があったとは...。なんだか子供みたいで意外な一面だな。

 この光景を少し微笑ましく俺は思っていた。


 なにかあってはすぐ驚く佐野を引きずりながら俺たちはようやくお化け屋敷

 から脱出できた。それを見た柊先輩がやってきて、


「おぉやっと出てきたんか。どうやった?うちのお化け屋敷?」

「めっちゃ面白かったです!」


 感想を伝えていた俺を横目に佐野は


「——...大したことなかったですね。」

「え〜そうなん!すごいな〜」


 と、得意げに言っていた。


 (どのへんが...?)


 あれだけ驚いていたくせに余裕そうにしている佐野に思わず呆れて

 ツッコミを入れたくなったがグッと我慢した。


 先輩に挨拶した後、俺達はまた別の場所に言って、

 ライブを見たり、食べ物屋で食事をしたり、ボウリングとか占いとか

 なんかいろんな企画を楽しみ尽くした。


「いやぁ〜いろんなところまわったね!楽しかったぁ〜」

「お前がいろんなところ見てまわろうとしてたから大変だったな。」

「ごめんごめん。」


 そう言ってお互いに笑い合った。今日の楽しかった思い出がよみがえる。


「——でも、こんなにたくさん楽しめたのは始めてだよ。

 一緒にきてくれてありがとう!」


 俺は今日の楽しさのあまり満面の笑みで佐野にそう言った。

 佐野は少し黙っていた。そしてまた静かに微笑んで、


「——...そうだな。俺も楽しかったよ。」


 そういいながら佐野は体を寄せ、俺の頭の後ろに手をまわして顔を近づけた。

 急な行動に俺はおどろいて、慌てふためいた。そして、そのまま——


「——ありがとな。」


 彼はそう言って、目の前で顔を止めて笑ってみせた。

 俺はポカーンとした顔をして、しばらくフリーズしていた。

 佐野は一旦離れてクスっと笑うようにして


「さ、もうそろそろ文化祭も終わるし、教室に戻るぞ。」


 そう言い残して歩き始めた。


(えぇ〜!?何だったの今のは!?)


 驚きを隠せないまま俺は思わず顔を赤らめてしまっていた。

 彼と一気に近づいたときの緊張、胸の心拍の高まりと熱を残したまま

 俺は急いで彼の後を追いかけっていったのであった。



 



クールメモ

 「恐怖!?高校の文化祭で失神者が出るほどの最恐のお化け屋敷現る!?」との投稿が後日SNSに上がった。

屋敷内の写真は暗い雰囲気をメインにとったものがほとんどだが、その写真を見たユーザーから

「お化けが映り込んでいる」「めっちゃ怖い幽霊がいる」などのコメントがあり、投稿者は「自分が撮影したときにはそんな幽霊はいなかった」などの話をしており、「本当の心霊写真!?」「文化祭のお化け屋敷で

まさかの奇跡www」など大バズリする結果となった。

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