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第二話 七種十三郎トイウ男(その2)

夕焼け色の空の下で俺はスズメさんを自宅まで送った。

彼女の荷物は俺が持って辛そうだったらおぶってやろうかと思ったがおんぶだけは断られた。恥ずかしいからと。

体調が悪いとはいえ自力で歩ける力は残っているみたいだがいざという時には俺が背負って彼女を自宅まで運ぶ。

それにあまりにも気分悪そうなので話しかけにくい。会話するだけでも体力が消耗させてしまいそうで俺はスズメさんのスクールバックを持って様子を伺いながら見守った。でも、話しかけるより一番気になるのはスズメさんの背後にベッタリとくっついている奇妙な黒い影だ。

人の形をした黒い影はじっと彼女と密着して動かない。。

この影は一体、何なんだ?

「おっ。この前の青春坊やじゃん」

突然、後ろから声が聞こえたので振り返るとなんと、自転車に乗ったサエグサさんが姿を現した。

「サエグサさん」

「学校帰り?ん?」

中古自転車を乗っているサエグサさんはスズメさんの方を見た。

いや、スズメさんの方というより彼女の背後にくっついている黒い影の方だ。

黒い影もサエグサさんの存在に気づいて一瞬、固まった。

その時だ。サエグサさんが目を大きく見開いて「あっ!てめぇ!!」と急に大声を出した。

今の大声で黒い影はビクッと驚いた。すると、黒い影はスズメさんを盾にして突然しゃべりだした。

「マ、マテ!チカヅクナ!コノコガドウナッテモイイノカ?」

黒い影は慌てた声で言い出した。ノイズで太く聞こえる声でサエグサさんが近づいてこないようスズメさんを人質にして拒み始めたのだ。

ますます体調が悪くなっていくスズメさんはさっきより顔色が悪化してきている。もしかして、この黒い影のせいか?

「な、なに?今、声が・・・」

弱々しくスズメさんは何かを聞き取ったかのような反応を見せたがまだ黒い影の姿は見えないらしい。奴が彼女の背後にいるせいで体調が悪化して後ろを振り向くことさえもできないでいる。

黒い影は目をバッキバキにさせて力強く訴えた。

「ボクハイマサイコウナキブンナンダ。ボクノジャマヲシナイデ!!」

最高な気分って・・・。

よく見たら影の片方の手がスズメさんのアソコを触れている。

「ダカラ──」

言いかけたその時、突然「バルス!!!」とサエグサさんが叫びだして勢いよくランプを投げ放ったのだ。飛んできた角灯は力強く黒い影の顔面にクリーンヒットした。

あまりの強い勢いに黒い影は攻撃を受けてスズメさんの体から離れて地面に倒れた。

「・・・・あれ?寒気と頭痛がなくなった」

黒い影が離れた同時に体調を悪くして今にでも倒れそうだったスズメさんの顔色が元通りになった。さっきまで歩くだけで精一杯だった彼女が信じられないぐらいケロッと体調が治ったのだ。それを見て俺は驚き理解した。

スズメさんが具合悪くなったのはあの黒い影のせいだったということを。

「てめぇ。あの時はよくも逃げてくれたな。おかげでこっちは大変な目に遭ったんだぞ」

何だかサエグサさん。怒っているみたいだ。

不機嫌な表情を浮かべ自分が大型トラックに轢かれたり植木鉢が頭の上に振ってきて怪我したのは黒い影のせいだと責めたてた。

「シ、シルカ!!」

黒い影は全く身に覚えがないことを勝手に自分のせいにされて納得いかないまま逃げ出した。

「待ちやがれ!コノヤロー!」

サエグサさんは急いで自転車に乗って砂埃を撒き散らしながらすごいスピードで黒い影を追った。

「な、なに?!何があったの?!」

理解が追いついていないスズメさんは少し混乱するも俺はサエグサさんの後を追って走り出した。


サエグサはすごい勢いで黒い影を追いかけた。

尋常じゃないぐらいペダルを思いきり漕いで自転車のタイヤを強い勢いで回転させる。

まるで人力発電みたいに目一杯自転車を漕いで電気を作るみたいなすごい勢いでペダルを回している。

黒い影は浮遊しながら必死に逃げる。

曲がり角を曲がるとそれを付いて行くかのようにサエグサはレースコースを走るドラフト車みたいに勢いよくブレーキをかけた。斜め45度に傾いた自転車は曲がり角を通ったら元の体制に戻した。

必死に飛び回る黒い影だがサエグサに追いつかれてしまい「ドワハハハハ!追いついたぞ!」と高らかに笑った。

あまりの信じられないスピードで追いついてきたから黒い影は驚いた。

これで同等の早さで奴に追い抜かれる心配はない。これで奴は逃げられないとサエグサは余裕ぶって「あの時のお礼。きっちり返してや──」と言いかけた瞬間、ドカン!と目の前の電柱にぶつかってしまった。

電柱にぶつかったサエグサは崩れて自転車ごと一緒に倒れてしまった。

呆気なく自滅した彼に黒い影はホッとしたのか安堵の息を吐いた。

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