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第三話 オ日様ニ嫉憎ト背後霊ノ報復(その11)

比較的に言えば。陽菜さんは明るくて太陽みたいな人だが樋上さんは静かであまり目立とうとしない影の人だと二人の姿と大海さんから聞いた話からすれば「華やか=地味」という感じになる。

性格も雰囲気も真逆な二人に生じた交友関係のヒビ。二人の間に見えない亀裂を生みだしたのがここにいる樋上さん。

陽菜さん本人は自分が嫌われている事すら全く気づいていなかったかもしれないが樋上さんからすれば恋敵としか見ていなかったのだろう。

「女って生き物は怖えよ。特に恋愛関連によるもつれ。好きだった男が別の女に取られそうになると何とか彼を振り向かせなきゃと意気込んで妙に気合い入れるし自分と相手が好きな人が同じだった時に互いを敵視して奪い合ったり〝好き〟だという理由で好意ある男を自分の物にしたいという欲望に狩られてトラブル起こすサイコパス野郎もいる。女ってのは自分の好きなものを見つけたらすぐ夢中になっちゃう乙女チックだがやや危なっかしい生き物なんだよ。男もそうだが好きな人を見たらそれに夢中になって気づいたらストーカーをやっていたというパターンが多いんだよ。知ってっか?ストーカーになりやすい女の特徴は過去の交際トラブルを抱えた奴が一番ヤベェんだよ。毎日毎日後を付きまとわれて家の窓の外から影で見張ったり復縁しようと無理矢理迫られたりあげくには包丁持って脅して刺そうとするしほんとマジでヤバいんだから。一度目をつけられたらガチで怖えよ。やめろの一言じゃ絶対に聞いてくれないし気づかない振りをしてもねちっこく追い回されるからな」

ベラベラと流暢に話すサエグサさんを見てスズメさんは

「その言い方だと経験したことがありますね?」

俺も同じ事を思った。

この人は100年も長生きしているから自分たちよりも長い人生の中で何十倍もいろんな経験をしてきているからトラブルに巻き込まれることもかなり多かったかもしれない。

前にサエグサさんは不幸体質だと自分から言っていたからもしかするとそれのせいかもしれない?

でも、今は何だか話が少しズレてるような気もする。

「それはさえて置き。君は陽菜さんが亡くなった後も時々、響矢くんに会っているそうだね?今日もそうだよね?友達の事が心配だったから様子を見に来てくれたのかな?それとも─」

サエグサさんは見透かしたような目でこう言いだした。

「今度こそ響矢くんに告白して自分と結婚しないか訊き出そうとしたのかな?だが、君は陽菜さんから奪ったペンダントを持っていた。七ヵ月前、波止場で彼女から借りたペンダントをな。ここにいるってことは、そのペンダントを海に投げ捨てるつもりだったのかな?それがある限り自分はあの時の記憶に縛られて心苦しくなる。もう過去に囚われるのが嫌だから陽菜さんの成仏を兼ねてペンダントを捨てれば楽になれるとでも?」

まるで心の中を覗かれたかのように樋上さんはピクリと動揺した。

その話を聞いて俺とスズメさん、そして大海さんは彼女が行おうとした所業を知って唖然とした。

すると、落ちていたペンダントを持っていた大海さんが「樋上・・・。なんで?」とポツリと問うた。

樋上さんは砂を強く握ったまま黙秘。

「なんで陽菜を殺した?」

大海さんの声は悲しみと怒りが混ざっていて震えていた。

そして、彼の口から出た『殺した』という言葉。まるで樋上さんが陽菜さんを殺したかのように聞こえた。

その言葉はあまりにも重くそしてどす黒くて冷たさを感じた。

樋上さんは体を震わせ俯いたまま沈黙を通した。

「そんなに俺が陽菜と一緒にいる事が気に入らなかったのか?それで陽菜を突き落として殺したのか?・・・・なぁ。黙ってないで何か言ったどうだ?!」

次第に震えていた声が怒りに変わり大声で怒鳴った。

スズメさんは初めて大海さんが怒った姿を見て驚いていた。

俺は今日初めて会ったばかりだがとても優しそうな人だなと思っていたが鬼の形相となって友人に怒りをぶつける今の彼はすごく恐ろしい。

普段優しい人がブチギレモードになると怖いと聞くが正にこの事である。

樋上さんも彼がこんなにも激怒するとは思ってもみなかったのか一瞬ビクついていたのをこの目で見た。

「・・・・ごめんなさい」

やっと重い口を開けて喋り出した。

「あれは事故だったの。殺してはいない」

殺したのではなく単なる事故だった主張する樋上さんに霊鎖に縛られた陽菜さんが「嘘つけ!!」と声を荒げた。

幽霊となった陽菜さんの声は聞こえない大海さんは「事故・・・?」と呟いた。

樋上さんは頷きこう話した。

「ちょっとだけペンダント見せてって言ったら見せてくれたの。まるで雪の結晶みたいで綺麗だったし今までペンダントなんて持ったこともなかったから。それで、ちょっとだけでいいから付けてみたくてお願いしたら陽菜ちゃんがダメって言われて。返せってしつこかったから揉み合いになってちょっと押したら海に落ちて・・・」

寒い冬空と高波がある波止場の上でペンダントを巡って二人の女性が喧嘩になり揉み合い争った反動で樋上さんは陽菜さんを海に落としてしまった。

揉み合いだからちょっとした弾みで落ちたとなれば事故になるかもしれないが問題なのはカナヅチである陽菜さんを助けなかった事だ。

事故だと主張する樋上さんは自分がした事に全く責任を感じていないようにも見えた。

自分は悪くない。落とすつもりなんてなかった。そう訴えているようだ。

「・・・・なんで」

俺とスズメさんは振り返るとさっきまでの穏やかな表情が怒り狂った形相に切り替わった大海さんが目に映る。

「なんで助けなかったんだ!!助ければ彼女は・・・陽菜は助かったんだ!!」

声を荒げて勢いよく樋上さんに摑みかかろうと襲う大海さんを見て俺は咄嗟に彼の勢いを抑えた。

今にでもぶん殴りそうなすごい勢いだったので落ち着いてと体を張って彼の行動を止めた。

大海さんの口からは婚約者を見殺しにした友人への憎しみと恨みが飛び交い罵倒の雨を降らせた。

荒々しく降り寄せる罵倒の雨を受けている樋上さんは俯いたまま何も言わなかった。

長い黒髪が彼女の顔を隠しているけどその奥からは彼女の葛藤と憎悲ぞうひが強く滲み出ているようにも感じた。

まるで昔観た法医解剖医が登場するドラマのワンシーンみたいだ。

でも、これはドラマではなく現実に起きているからあまりにもリアル過ぎてまだ高校生である俺とスズメさんにとっては刺激的過ぎる。

猛威を振るう大海さんの罵倒が樋上さんの精神を追い詰めたその時、彼女が顔をあげてこちらを睨んだ。鋭い眼光と怒りで吊り上がった赤い眼、そして大量の涙。

そして、怒気を含む震えた声が出た。

「だって自慢するんだもん!!」

彼女の頭の中には陽菜さんが大海さんから貰ったペンダントを見せてプロポーズしてもらったとの動画映像が流れていた。

陽菜さんの幸福円満な笑顔を思い出すだけで虫唾が走った。

「なんで、あんな子が私より幸せなわけ?仲良しこよしの両親がいて何も不自由なく暮らして苦労した経験もないあんな子がなんで一番幸せそうに笑っていられるわけ?あんなのただ見た目が美人なだけのよそ者じゃない!!」

ずっとここの内に秘めていた彼女への強い怨恨が一気に噴き出した。

自分はそんなに美人じゃないから陽菜さんは美しい顔と体型を武器にして男性を惑わせる魔性の女と思っていたのだろうか。

一方、陽菜さんはそんな風に思われていた事を知って余計に腹が立ち襲ってぶん殴ろうとしたが霊鎖の影響で力が思ったより発揮せずただ奥歯を噛み締めながらこの光景を傍観するしかなかった。

陽菜さんへの不満を一気に吐き出した樋上さんは「偉そうに自慢していたあの女が悪い!自業自得よ!」と張りつめた声で叫んだ。

火に油を注ぐかのようにその事を聞いた大海さんは俺を押しのけようとする勢いで樋上さんを襲いかかろうとした。

愛していた人の悪口を言われて怒りが頂点に達したのだろう。

その時だ。

「そんなの。ただの屁理屈だ!」

そう叫んだのはスズメさんだった。

スズメさんは険しい顔をして発狂する樋上さんに言った。

「話を聞いてれば、それってあなたの勝手な思い込みじゃない。あんたから見て陽菜さんは幸せそうに見えていたかもしれないけど本人はそうじゃなかった。いや。陽菜さんは早く家を出たくて大海さんと結婚したかったのよ!陽菜さんのお母さんは典型的な過保護で全部母親が決めて本人の意思を聞こうとしなかった。陽菜さんはお母さんに操り人形として自分の人生を勝手に決めようとしていた。そんなマリオネットライフを脱する為に彼女は大海さんと結婚することを選んだ。何でもかんでも自分が不幸なヒロインだと思い込むのは間違っているわ」

かなりのまともなド正論を受けて樋上さんは反発した。

「子供のあなたに何が分かるの?」

「何が分かるのとか分からないとかそーいう事じゃない!!あなたはただ自分の都合だけしかものを考えていない。陽菜さんより先に大海さんに好きだと言わないでズルズルと引きずっていたあんたが悪いの!人の事情を知らずして勝手に妬んでさその挙句自分は悲劇のヒロイン気取りするのマジでやめて!もう少し自分の立場を考えてから行動しなさいよ。それに、あんたが二人に対してどう思っているのかは勝手だけど自分の立場上を理解してからものを言いなさいよ!」

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