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第三話 オ日様ニ嫉憎ト背後霊ノ報復(その10)

俺とサエグサさん、スズメさんに大海さんは彼女たちがいると推測していた由比ヶ浜海水浴場に辿り着いていた。

初めはダッシュで由比ヶ浜に向かおうとしたがさすがに時間はかかるし中華レストランを離れた時間帯だと次の電車が来るのを待たなければならない。駅で電車が来るのを待っていたら手遅れになるかもとサエグサさんが言うので至急タクシーを呼んで海水浴場近くまで運転してもらい降りた後、みんな総出で樋上さんを捜した。

辺りは真っ暗で波の音だけしか聞こえないから人らしき影が見えないので大変だったがサエグサさんが偶然見つけたかのように樋上さんが背後霊だった陽菜さんに殺されかけているのを見かねて霊石で出来た鎖〝霊鎖〟で荒れ狂う陽菜さんを拘束したのだ。

陽菜さんの幽体は黒く染まっていてほぼ悪霊状態になっていた。

サエグサさんは必死な顔で霊鎖を強く握りしめ樋上さんから引き離そうとしている。

そして、サエグサさんはこう叫んだ。

「やめろ!!もうやめるんだ!!これ以上やったら取り返しのつかないことになるぞ!!」

自分の計画を妨害されたかのように陽菜さんは怒声をあげた。

「だ、誰だ!!あんた?!何しやがる!!?」

彼女の金切り声が耳の奥を刺すかのように響いた。

しかし、サエグサさんは決して怯みはしなかった。

「君がやっているのは殺人未遂だ!!これ以上、彼女を引っ張って殺したら君は逮捕されて強制的に地獄へ送ることになるぞ!!あの世の裁判は泣きたくなるほどシビアで公平で厳しいんだ!!相手が例え業界や政界のお偉いさんでも一歩間違えれば大泣きしたくなるぐらい怖くて恥さらされて今頃になってめっちゃめちゃ後悔しても後の祭りになって取り返しのつかない事になるんだぞ!!死んだ人間が人を殺すなんて間違ってる!!」

「うるさい!!こいつは、私の人生を台無しにしやがったんだ!こいつを痛めつけたら私より先にあの世へ送って次は私を人形みたいに扱ったババアを連れてこいつらまとめて地獄へ叩き落すんだ!!」

「ふざけるな!!仮に彼女たちが地獄行きだと決まったとしても君も一緒に地獄へ堕ちるんだぞ!!地獄は言葉では言い表せないぐらいヤベェとこなんだ!!堕ちたら待っているのは獄卒たちの拷問暴力怒責激痛の絶望オンパレードだ!SMの世界とは丸っきり全然違って亡者たちの阿鼻叫喚の声がそこら中に聞こえたり血生臭さやこの世のものとは思えぬ悪臭が充満していて何度も切り刻まれたり焼かれたり食い殺されても亡者だからすぐに再生してまた同じ苦痛を何回何百回何千回も繰り返す終わりのない無限ループが続くんだ!地獄の刑期を知っているか?2年とか10年とかじゃないぞ?最大でも数兆年も同じ刑罰を受け続けるんだぞ!君はその数兆年分の刑を受けるかもしれない決して許されない行為をしているんだぞ?!」

「そんなもん知るか!!」

「知るかで済ませるような事じゃない!!言っておくが俺は警察官だ!悪霊を捕まえて取り締まってそしてあの世へ強制送還する仕事をしているんだ!今ここで君に手錠をかけたら今の罪状とプラスされて罪が更に重くなって裁判も更に厳しくなる!!そしたら、君は天国行きへの切符は貰えず輪廻転生もしばらくできなくなる!あの世の手錠っていうのは現世とは違ってマーキングだけで罪の重さが加算されるんだ。そして地獄へ堕ちる確率が高くなる!それが例え、〝未遂〟だとしても今ここで俺が君に手錠をかけて強制送還したら君の罪状は更に重くなり裁判に不利が出る!だから──」

「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!!私がやんなきゃ響矢くんは救われない!こいつは自分が可愛くて響矢くんに辛い目を遭わせたんだぞ!?私が助けなきゃ誰が響矢くんを助けるんだ?!」

「それでも人を殺しちゃダメだ!!君みたいな誰かを助けたいと思っている子が分け隔てなく地獄に堕ちるなんてそんな理不尽な事僕は認めない!認めたくいし僕が嫌なんだ!!」

「訳の分からない事をベラベラと言ってんじゃねえ!!邪魔すんな!!」

霊と警官が言い争っていたその時だ。

樋上さんの頭を鷲摑みしていた手の握力が突然弱まり始めた。

異変に気づいた陽菜さんは何が起きたのかさっぱり分からなかった。サエグサさんは霊鎖を勢いよく引っ張ると陽菜さんの手が樋上さんの頭から遠のいた。

樋上さんの幽体は自然に自身の肉体に戻った。

「な、なに?!何が起きたの?!なんで?力が?入らない??」

何がどうなっているのか混乱している陽菜さんにサエグサさんは平静とした声で言った。

「この鎖は黄泉の国にある霊石で作られた代物だ。この霊席には霊の能力を弱まらせる作用があるんだよ。ジョー!樋上さんを」

丁度、サエグサさんの近くにいたので彼に呼ばれた時、俺は頷いて靴と靴下を脱いで海の方へ駆け走った。うつ伏せになったまま動かない樋上さんを抱き上げ岸へ運んだ。

樋上さんは全身ずぶ濡れでぐったりとしている。まるで電池が切れたブリキのロボットみたいに動かなかった。

「サエグサさん!どうしよう?樋上さん全然起きない!」

魂は確かに肉体に戻った。脈は弱々しいが動いている。

しかし、独リンゴを食べた白雪姫みたいに眠っていて目を覚まそうとはしない。

「仕方がない!」

サエグサさんは鎖で陽菜さんを拘束したまま角灯の蓋を開けて霊丹を取り出した。

「これを樋上さんに!!」

取り出した霊丹を差し出すとスズメさんはそれを受け取り意識が無い樋上さんの口に入れて飲み込ませた。

すると、水蒸気みたいに樋上さんの身体からフシューッと煙が噴き出した。

「ゲホッ ゴホゴホゴホ」

喉に詰まっていた物が取れたみたいに咽頭に空気が通れるようになった事で樋上さんは激しく咳をした。

霊丹のおかげで樋上さんは命を取り留めた。

肉他界から離れて魂だけとなった樋上さんが復活をしたのを見て陽菜は唖然とした。

「そんな・・・なんで・・・」

せっかくの復讐が水の泡になってしまったかのように陽菜さんは絶望したような顔で命を取り留めた樋上さんの姿を見ていた。

「お嬢さん。どんなに彼女を恨んで殺したって虚しいだけだ。何も得られないし何の得にもならない。空虚感だけしか残らない。僕は長年、君みたいな殺意に捉われた霊を何人も見てきた。取り殺したとしても怨んでいた人間を殺すのを成功したとしても最後は閻魔様にお叱りを受けて真っ先に地獄へ堕ちていった霊も何人もいた。それとちゃんと周りを見ろ」

そう言われて殺意剝き出したった陽菜さんは俺たちの近くに大海さんがいた事に気づいた。

大海さんは砂浜に落ちていたペンダントを手にしながら立ち尽くしたまま陽菜さんがいる方を見ていた。

「陽菜・・・?そこにいるのか?」

どうやら大海さんは目の前にいる陽菜さんの姿が見えないみたいだ。

俺とスズメさんはハッキリと彼女の姿が鮮明に見えているのに対して大海さんの目には霊鎖が宙に浮いているようにしか見えていない。

もちろん。陽菜さんの声も聞こえない。ただ、分かるのは陽菜さんが樋上さんに復讐をしていたというだけ。

「樋上さんとやら」

霊鎖で陽菜さんを拘束したままサエグサさんは真顔で言った。

「君の口から聞きたい。なぜ。陽菜さんを見殺しにした?」

さっきまでの明るい声が嘘みたいに静かで冷静なトーンで訊き出すが樋上さんは俯いたまま何も答えなかった。

「要するに二人の仲に嫉妬した。てとこか?」

その言葉に一瞬だが樋上さんがピクリと反応した。

「大方、二人がとても仲良しだってことを密かに妬んでいたんだろ?実は君も響矢くんが好きで常に彼と一緒にいた陽菜さんの事を疎ましく思っていたんだろ?それに、こう言っちゃ申し訳ないが陽菜さんと君には明らかに比較さがある。見た目か?それとも中身か?それか陽菜さんには持っていて自分には持っていないものがあったとか?君は響矢くんが陽菜さんにプロポーズしたと聞いて自分がどれだけ彼が好きだったのか告るチャンスを逃してしまった。いわば、絶賛片思いのまま終わった。そのうえ、陽菜さんはプロポーズと同時に彼から貰ったというペンダントを嬉しそうに手に持っていたからあまりにも彼女が幸せそうに見えたから羨ましくなった。そして憎んだ。二人は結婚の約束までもして今まで支えてくれた人がいなくなってしまう事に焦っていたんだろ?」

あくまで推測にものを言っているが彼が発言したその話は全て正しいと俺は思う。

もし、この仮説が本当ならば樋上さんはずっと陽菜さんに対して羨妬せんとうを抱きつつ彼女の良き〝友人〟として振舞っていたのだろう。

それにこう思っちゃあ樋上さんには悪いが樋上さんと陽菜さん。比べてみると確かに二人の間には明確の差がある。

この差に気づいた樋上さんは自分より陽菜さんの方が上手うわてなんだと思っていたのかもしれない。

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