第一話 奇妙デ奇天烈スギル摩訶不思議ナ男(その1)
十都門高等学園。
ここは鎌倉市内にあって現在、俺が通っている学校。
校舎は三階建ての見た目は古い建物だがそんなにひどくはない。校内の敷地はやや広い。
この学校はもう五十年?いや九十年ぐらいの年季が経っていると聞いた事がある。響きだと俺たち令和世代からすれば大昔のようにも聞こえる。
この学校に入ってから早二年。俺はこの高校生活に慣れてたくさんの仲間ができた。
ただいま俺は絶賛青春満喫中である。
「パス!パス!」
体育館内は無駄に広く天井もかなり高い。天井には取れなくなったボールが柱の間に挟まっていて放置したままだ。
早く取ればいいのに誰も手をつけない。あまりにも高すぎるので断念したのだろう。
四角いコートでは体育着の上にビブスを着た男子たちがボールの取り合いをしている。
ボールをダンクしながら相手の攻撃を避け近くにいる味方にパスする。
パスされた男子は道を縫うかのように相手チームの襲来を避ける。
相手も容赦なくボールを奪い取ろうとするので奇襲をかけたりしてくる。
「ジョー!」
俺の出番が来た。
相手に奪取されそうだったボールが宙を舞い俺に目掛けて落ちてくる。
落下してきたボールをキャッチした俺はボールを弾ませこの先には行かせないぞと前に出て行く手を阻む。でも、どんなに邪魔されたって俺は止まらない。
床を蹴り相手チームの間に入り疾走する。手を伸ばして奪取しようと道を塞いでその隙にボールを盗ろうとしても俺は決して躊躇しないし足も止めない。
背の高いバスケットゴールが目前と差し掛かると俺は下半身の力を足に溜めて思い切りジャンプした。
ジャンプしたその瞬間に片手でボールを投げる。
ボールはバスケットゴールの壁に触れた途端にリングネットの中に吸い込まれた。
リングネットがボールを吐き出した瞬間、タイムアップを知らせるアラームが館内中に響いた。
「今度の大会は絶対に優勝したいよな」
教室で体育着から制服に着替えている俺たちは今年の秋に始まるバスケ大会の事で話していた。
「去年は惜しかったからな。でも東藤先輩とジョーがいれば百人力だぜ」
ジョーとは俺のニックネームだ。
俺の本名は祭城 瑠璃。十都門高等学園に通う二年B組の生徒だ。
中学の頃からバスケ部に入っていて今は秋の大会に向けて練習試合をしている。
「いや。俺より東藤先輩の方が一番期待値高いよ。それに君たちだっていい動きしているし大会の時はよろしく頼むよ」
自分で言うのも何だが上半身裸の俺の体は腹筋が割れている。日頃の部活でのトレーニングと筋トレが十分に応えている証だ。
俺は着替え終えた後、仲間より先に室を出てそのまま校舎へ向かう。
一階の下駄箱に着いた時、一人の女子が上履きと革靴を取り替えていた。
「スズメさん」
声をかけるとスズメさんがこちらを見た。
ショートヘアの眼鏡女子 朱冨 スズメ(あかとみ すずめ)。俺の隣クラス2年A組の生徒だ。
2年生の中では成績優秀で落ち着いた見た目をしている子だ。昨年、1年生の時に同じクラスで知り合っている。
「もしかして、生徒会?」
「うん。さっき終わったところ。ジョーくんも部活終わったの?」
クールなイメージがある彼女は生徒会の書記をやっている。
たまたま鉢合わせた俺たちは途中まで一緒に帰る事にした。
たまたま遭遇した俺とスズメさんは二人で下校した。
生憎、空は厚い雲に覆われシトシトと雨が降っている。今は梅雨シーズン真っ最中なので仕方がない。でも、俺はこの季節の雨はそう嫌いではない。
何だか風流っぽいから。
お互い傘を差して歩きながら雨の音に紛れて会話をしていた。
「それとほら。校舎裏にある物置小屋。あれを撤去しようって話しもしたの」
「あの開かずの物置小屋か」
開かずの物置小屋とは学校の校舎裏にある大きな物置小屋で何十年も開かなくてずっと放置したままにしていた古い小屋だ。老朽化が進み屋根も壁もボロボロで誰も使われていない。しかも、小屋の中は何が入っているのかは分からない。
噂ではお宝が眠っているとか怪しい物が隠されているかとか様々な話を聞いている。
俺もあの物置小屋の中は何が入っているのか分からないから気になってはいた。
「あの物置小屋。一体、何年ぐらいあんなとこに置いてあったんだろう?」
「さぁ。先生から聞いた話だと今川校長先生が校長になる前の前の前のそのまた前のって言ってたから四十年?いや、六十年ぐらいかな?」
そんな遠い昔からあったならボロくなって誰も使いもしないわけだ。
しかも、あの物置小屋は鍵がかかっているのか扉が錆びれているのか固くて開かないみたいだ。
「本当に完全撤去するの?」
「もちろん。するわよ。だから、先生が校長先生にあの開かずの物置小屋を撤去してもいいか許可を貰うって」
ずっと校舎裏に設置していたから時に流されてその存在自体を忘れ去られてしまったのかもしれない。
開かずの物置小屋は今でも校舎の影となりひっそりと静かに佇んでいる。
何もない校舎裏でただ一人、孤独を感じながら取り壊される日が訪れるのを待っているのだ。
そんな話をしながら俺たちは目の前に見える十字路の道に差し掛かる。
ここは信号機も無いから車は来てないか前左右をちゃんと見て確認しないといけない。
俺はこの十字路を右へ行きスズメさんはその反対側を通る。
十字路に足を踏み入れたら俺たちは別々の道へ帰るのでいつもここで別れるのだ。
すると、俺たちの隣から一人の男性が横切って走る姿が見えた。
男性は十字路の方へ急いでいるかのように走り出しているその時だ。
ドゴオォォォォォォォォン!!!!
突然、大きな音が聞こえた。
何かの大きな障害物を思いきりぶつけたような音が住宅地を響かせる。
横から姿を現したのは大型トラック。とても丈夫そうで重量感がありそうなトラックが前方を走っていた男性を勢いよく轢いた。
あまりにも突然の展開に俺もスズメさんも二人して驚いた。
衝突した音は鈍くそして重い。大型トラックが過ぎ去ると男性の姿は見えなかった。と思いきや上からドサッと落ちて仰向けに倒れたのだ。




