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第二話 七種十三郎トイウ男(終)

あの交番もそんなに緊張感ある空気ではなかった。むしろ、なんか懐かしい感じがした。

でも、まさかの交番が刑務所だったとは全く予想もしなかった。

真っ直ぐ進むと静かな路地裏に着いた。

ブロック塀に挟まれた短い道だ。その先には路地裏の道が広がっていて街灯が光を照らしていた。人の気配もなく目に見えているのは緑に染まる木々とブロック塀に仕切られている人家が建っているだけで特に変わった様子はない。

夜になっても空気の湿気が高くジメジメ感が残っていて蒸し暑い。

さっき来た道を振り返ってみると俺たちの目に映ったのはただのブロック塀の壁。

あの不思議な町へ行ける秘密の通路が煙のように消えていた。

夢だったのか?それとも幻だったのか?

最初、俺はそう思った。でも、夢でも幻でもない。現実に起きたことだと脳がそう言っている。

「夢・・・だったのかな?」

スズメさんは今までの出来事は夢じゃないかと思っているみたいだが俺は否定した。

「いや。夢なんかじゃない。現実だ。」

夢にしてはあまりにもリアル過ぎるから俺は現実に起きた事だとそう信じている。

「サエグサさんが言っていた事。全部ほんとかな?」

「ほんとだと思うよ。作り話にしてはあまりにもリアル過ぎるし嘘を言っているようには見えない。仮に作り話だったとしてもなかなか信じ難い部分はあるけどあの人の言葉と態度には俺たちを騙そうとする姿勢はなかった。サエグサさんは本当に地獄から来て自分が犯した罪を償う為に悪霊と戦っている。俺たちも見ただろ?君がおっさんの霊に取り憑かれていたところをあの人が助けてくれたことを」

そうだ。スズメさんが体調不良で危うい状態に陥っていたのを見てサエグサさんはその原因と正体を一瞬で見抜いた。おかげであの悪霊はあの世へ強制送還してスズメさんの命を救ってくれた。

俺たちを救ってくれたサエグサさんが嘘をつくはずがない。俺はそう信じていてスズメさんは「そうだね」と頷いた。幽霊とかオカルトの話はあまり信じないスズメさんは今回の一件で目には見えない存在が本当に実在するという事を認めざるを得ないと判断したのだろう。合理的主義な彼女でも今回の体験はうまく説明がつかないらしい。

空は月が上っていて街灯の明かりの下で路地裏を歩きながら話す俺とスズメさんは静かな空間の中で二人だけの会話を続ける。

「それにしても。忘れるんだとか幻でも見たとかで片付けておけって言われても早々に忘れられるわけないよな」

「うん。ああいう不思議体験はなかなかできないから一番印象に残るよね。科学の常識では解らない出来事だから説明しようにも具体的にどう説明すればいいか分からないもんね」

そう互いの思ったことを話しているうちにまだ残っている疑問もあった。

「サエグサさんは一体、何の罪を犯して地獄に堕ちたんだろう?」

スズメさんは彼がどんな罪状を持って地獄に堕ちたか気になっていた。

もちろん。俺もそれ気になっていたところだ。

「俺も同じ事を思ってた。あの人が何の罪で地獄に堕ちたのか訊けるチャンスはいくらでもあったけど、言えなかった・・・。あまり余計に詮索したらきっとサエグサさんは嫌がると思って言葉を飲み込んだよ。どんな理由があれ人の事情を根掘り葉掘り訊きだすのはあんまり良くない気がするんだ。それに、見ず知らずのしかもあんな怪しい人を助けたうえ栄養バーや衛生材料を買って渡すなんてお人好しにも程があるって自分でも理解しているつもりなんだ。でも、なんかほっとけられないしこれって俺の勝手な自己満足かな?」

十字路で轢き逃げ事故が起きた時、俺は真っ先に救急車を呼ぼうとした。そして、心配だったから小遣いを使って薬局で衛生材料や栄養バーなどを買ってサエグサさんに渡した。

サエグサさんにも言われたがあまり親切すぎるのもよくないと言われたが、祖父から教わった『人の役に立つ』精神を持っているから俺は常に困っている人を助けたいという気持ちが強くて手を差し伸べてしまう。

自分が取る行動はあまりにも都合のいいエゴとしか思えないかもしれない。

サエグサさんみたいな見知らぬ得体の知れない人を助けるなんて普通はできない。

俺はただのお人好しバカなのだろうか?

「他人から見ればとても良い人だって思うけど、友達目線から見れば親切すぎるのはもちろん度を越え過ぎたお人好しは身を亡ぼすからやめた方がいいって思われるかも」

スズメさんは歩みを止めて俺の方を見た。

「でも、そこがジョーくんの良い所でもあるから悪いことじゃないよ。ジョーくんはいつも友達思いで優しいから。私が霊障で体調悪くした時も家まで送ってあげようとエスコートしてくれたし。それに、私もジョー君と同じで困っている人を見たらほっとけられないし。私も同じお人好しかもね」

そう言って笑ってくれるスズメさん。

彼女の話を聞いてやっぱり親切心は大事でお節介だとしても誰かを想う気持ちを持つことは悪くないよなと思った。

あの時、サエグサさんと遭遇した時は迷うより『すぐ助けなきゃ!』という気持ちが先に出て救急車を呼ぼうと行動を起こした。

でも、正直に言えばあまりの突然に起きた事故で目の前の人が撥ねられ血を流していた時は気が動転しそうだった。事故を目撃するなんてそうそうないから動揺を隠しきれなかったのは認める。

そして、あのサエグサという男が一体どんな罪状で地獄へ堕ち煉網警官になったのかその経緯は気になったりもしたが雰囲気的にあまり相手の過去を掘り返すのは控えた方がよさそうだと俺の〝勘〟がそう囁いたのだ。でも、サエグサさんはそんな悪い人ではなさそうだし危険人物には思えないご普通でどこにでもいそうなおっさんだった。


七種十三郎。悪霊を捕える役目を持ちながら霊丹を集めて転生を望む地獄から来た煉網警官。

彼にはまだ謎が多く何をして罪に問われたのか?なぜ地獄へ堕ちたのか?

その経緯と理由を知る事になるのはまだまだ先である──

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