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第二話 七種十三郎トイウ男(その7)

休憩室の外から「ごめんください」という声が聞こえた。

サエグサさんが外へ出ると俺たちは部屋の襖から顔を覗いた。

俺たちが見たのは、人間とは違う姿をした生き物だった。

その生き物は明らかにも人外な姿であった。むしろ動物に近い。

キツネが二足歩行で立っているのだ。着物を羽織って白い尻尾を生やしていたキツネはサエグサと何やら話している。10分も経たない内にその二足歩行のキツネは笑顔で交番を後にした。

動物が二足歩行でしかも言葉を喋るなんてアニメか漫画でしか有り得ないから俺とスズメさんは仰天した顔でお互いの顔を見合わせた。

「サエグサさん。今のは?」

休憩室を出て執務室にいるサエグサさんに今のキツネ男は何なのか訊ねてみると

「この町の住人だよ。昨日、あの人の落とし物が交番に届いたからそれを取りに来たんだ。地域住民とのコミュニケーションを取るのも煉網警官の勤めの一つだからな。それだけじゃない。ここは幽霊の駐屯地でもあってあの世の裁判が終わって天国行きか転生行きを待っている霊が集まる休憩所みたいなところだ」

何が何だか訳分からなくなった俺たちは更に混乱しそうでなかなか整理がつかない。

人とは違う姿をした者を見て不気味さと奇妙さが俺たちに渦巻く。

「い、一体。ここはどこなんですか?」

信じられないどころか有り得ないこと過ぎていつも落ち着きを保っているスズメさんが動揺を見せている。あまりにも不可思議な体験が続くから気が動転しそうになる。

すると、サエグサさんの表情が一変した。さっきまで明るくて優しそうな感じだった雰囲気が嘘みたいに消えた。

視線を差すような冷たい目。明るさと温かみを全く感じない根暗さと威圧感のある表情。全く笑みを浮かばない不気味な表情。

「ここがどこなのかなんて知らない方が身のためだぜ?世の中には知らなくてもいいことがたくさんある。この町も僕の存在も。そもそも君たちはまだ生きているだろ?寿命も尽いてもいないのに生者が死者と妖が蔓延るこの町に足を踏み入れるなんてそうそうない。今回は僕が君たちと話をする為に連れてきたから仕方がないけど、次からはもうここには来ない方がいい。君たちが霊感を持っているとしてもあまり出入りしない方がいい。まぁ、誰かに話しても構いはしないが誰も信じちゃくれねぇし現世の奴らがこの場所を見つかる心配もない。だが、僕と出会った事や話した事は憶えていてもこの町の存在だけは忘れるんだな。幻でも見たとかで適当に片づけておけ。もちろん。僕の事やさっき話した内容も忘れてもいいんだぞ?僕はできれば、生者とは関わりたくないからな。死者と関わってもロクな事が起きない。だから、もうここには足を踏み入れるんじゃねぇぞ」

サエグサさんの言動からまるで俺たちを避けているかのようにも聞こえた。

生者と死者ではうまく釣り合わないという事だろうか?

彼の言葉には冷たさと厳しさがあって俺たちを遠ざけようとしているみたいで聞いていて強い念を込めながら忠告をしている事が分かる。

たまたま偶然にサエグサさんと会って詳しい話を聞く為に彼の後をついてこの交番に来た。彼の話とさっきのキツネ男からすればここは俺たちが住んでいる町とは違うという事がよく分かった。

すると、パン!とサエグサさんが手を叩いた。

「僕の話は以上。今日はここでお開きにしようか。僕もいろいろやる事があるし君らも早く帰らないと家族が心配しちゃうぞ?」

手を叩くと普段の明るいサエグサさんに戻った。

さっきまでの冷たい不気味な表情が嘘みたいに消えている。俺は自分の腕時計を見て針はもう夜の19時に回っていた。


俺たちは自分達の家へ帰る為、スクールバックを持った。

交番前でサエグサさんが俺たちを見送る時に彼は言った。

「今回の一件で祭城くんへの借りは返した。もうここに来る必要ないし僕と会う機会もないだろう。でも、君たちと喋れて楽しかったぜ。一般生者とこうして話をしたのは久しぶりだったからついつい長話しちまった。君たちの親切心には本当に感謝している。その優しさを絶対に忘れるなよ。青春の若者たち」

そう言われて俺とスズメさんは軽く頭を下げて通りを歩いた。

俺は元の世界へ帰れる方法を知っている。

交番前の通りを真っ直ぐ進めば元の世界へ戻れる。

前にも思ったがこの通りは俺が知っている場所とは少し雰囲気が違う。怪しい気配を感じながらも何か不思議と落ち着くんだ。

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