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(仮タイトル)天墜が還る日  作者: 久遠 ゆのか
第一章 黄の国ティワン
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[トウエンの町-7] 訓練場の激闘


「じゃあ、ここでやろうか。」


 ギルドの一角にある訓練場。土が踏み固められた地面の上には、剣や槍の練習に使われる木製の人形が並び、あちこちに打ち合いの跡が残っている。


 バッカスが腕を回しながら、余裕たっぷりに構えていた。大きな斧を片手に担ぎ、その鋭い刃先が太陽の光を反射して光っている。周囲にはすでに数人の冒険者が集まり、興味深そうにこちらを見ている。


「ルーシェ、大丈夫? やるって決めたんだから、負けるないでね!」


 アルネがルーシェの背中を軽く叩いた。彼女の顔には期待と不安が入り混じっている。


「うん。」


 俺は剣の柄を握りしめた。

 目の前のバッカスは、大柄な体格に見合った力強い一撃を繰り出すタイプだろう。まともに受ければ簡単に吹き飛ばされるかもしれない。


(でも……避けられないわけじゃない。)


 ゆっくりと息を吸い込み、目の前の敵を見据えた。


「おいおい、そんなに気負うなよ。ま、俺が軽くひねってやるがな!」


 バッカスが斧を肩に担ぎ、ニヤリと笑った。

斧の刃先が揺れ、筋肉がわずかに緊張する。


「そろそろ始めようか。」


 ギルドの受付嬢が中央に立ち、手を挙げた。


「ルールは単純。相手が戦えなくなったら終了。双方、準備はいいですか?」


 俺はは小さく頷き、バッカスは「もちろんだ」と肩をすくめる。


「では……始め!」


 −−−−−戦闘開始


 バッカスが勢いよく踏み込む。次の瞬間、斧が横に振るわれた。重く、鋭い刃が空を裂き、風圧だけでも圧倒的だ。


(想像したより速い――!)


 瞬時に身を引き、ギリギリのところで斧の刃をかわす。風が頬をかすめ、地面に砂埃が舞った。


「おっ、なかなかやるじゃねぇか。」


 バッカスは軽く笑いながら、すぐさま次の一撃を繰り出してくる。今度は斧を両手でしっかりと握り、振り下ろしの一撃だ。


 その力強い一撃を見極め、タイミングよく再び身を引く。斧の刃が地面にぶつかり、土を切り裂く音が響く。


「ちっ、上手いこと避けやがる。」


 バッカスは少し苛立ちを見せるが、すぐに冷静さを取り戻し、斧を振り回して攻撃を続ける。俺は冷静に相手の動きを見極めながら、反撃の機会を探った。


「うっ……!」


 バッカスの一撃が、ほんの少しだけ肩をかすめる。その痛みを感じながらも、歯を食いしばり耐えた。


(危なかった。あれがもう少し深く入っていたら、反撃する余地もなかった……)


 相手の次の攻撃を予測しながら、一瞬の隙を探る。それは、バッカスが斧を振り上げたときだった。腕を振り下ろすその瞬間、少しだけ力が抜けるのが見えた。


(ここだ!)


 見えた隙を突いて、バッカスの斧が降り切るより素早く自分の剣を振り抜く。剣先がバッカスの腕に触れ、斧が少し傾いた。


(よし!)


 瞬時に反応し、バッカスの一撃をかわしながらその隙を突こうと考えた。バッカスが斧を大きく振りかぶるその動きを見逃さなかった。


「今だ!」


 一気に前へ飛び込む。その瞬間、バッカスの大きな斧が俺を捉えるような形になったが、素早くその斧の下をくぐり抜け、バッカスの側面に回り込んだ。


「どうだ!」


 渾身の一撃が、バッカスの脇腹をかすめる。鋭い刃がバッカスの鎧をわずかに切り裂き、その痛みにバッカスは思わず一瞬よろけた。


「クソっ!」


 バッカスは斧を振り回す力をさらに強め、今度はそのまま正面から一撃を加えようとする。しかし、すでにこの動きは読めていた。即時に足を踏み込んでバッカスの斧を引き寄せ、足元に反転し斧の下をすり抜ける。


「勝負だ!」


 一気にバッカスの背後に回り込むと、剣を力強く振り上げた。バッカスが反応する暇もなく、ルーシェの剣がそのまま肩口に触れ、鋭く刃を食い込ませた。


「ぐあっ…!」


 バッカスは呻き声をあげ斧を落としそうになり、辛うじてその手に握り直したが、その間にバッカスの胸元に一歩踏み込み首元に剣を突きつけた。


「降参するか?」


 冷静な声で告げる。

バッカスは息を呑み、その後苦笑いを浮かべる。


「やるじゃねぇか、悔しいがお前の勝ちだ。」

 

 バッカスはゆっくりと斧を地面に下ろし、息を整える。


「…でも、これで終わりじゃねぇ。次はもっと面白い戦いをしようぜ。」


 その言葉に軽く笑って剣を下ろすと、バッカスを助け起こした。周囲からは拍手が起こり、2人の戦いを見守っていた冒険者たちも、その熱い戦いに感心している様子だった。


「お疲れ様!」


 アルネが笑顔で駆け寄ってくる。

その言葉に軽く頷きながら、疲れた体を床に下ろした。


「やったわね、ルーシェ!」


 アルネが嬉しそうに声を上げ、俺を労った。


「ありがとう。でも、危なかったよ。次はもっと強くなって、もっといい勝負をしたいな。」


 


 


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