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中二病は喋りたい

「なあ美波、なんであいつと絡んでんの? あいつと絡んでっと彼氏できねーぞ?」


「……涼香は引子ちゃんのこと嫌い?」


引子が教室に入ろうとすると、なんとなく入りづらくなるような会話が展開されていた。


「いや別に嫌いってわけじゃねーけどさ、あいつよくわかんねぇじゃん? なんつーか怖いんだよな、突然封印されし右腕が……とか、まだ私は器たりえない……とか、待っててくれ姫! 必ず私が助け出す……とかさ、よく分かんないじゃん? いや中二病だってのは分かるけどあれは相当重症っていうか……」


「あー……まあ確かにそんな感じはあるね、シスドでエンジェルフレンチのことエンドレスエンジェルって言ったり……でもそれも含めて引子ちゃんのことは好きだよ? ほら、面白いじゃん! それに彼氏とかは要らないかな。なんなら引子ちゃんを彼女にしても面白いかもね」


冗談だ、冗談だと分かっていても引子は美波の言葉を聞いた途端思わず赤面してしまう。

 そして少しだけ体が見えていたようで、顔を覗かせると美波と目が合ってしまった。


「……え?」


それと同時に間抜けな声を出して赤面する美波。


「あ、いや……あの、ち、違くてぇ!」


「ふ、ふ……わ、私を恋人にしたいなどひゃ、百年早いわっ! も、もっと邪眼の力を、つ、つけてから、で、出直してこい!」


「二人とも動揺しまくってんじゃねぇか」


ずっとあわあわしている美波に引子、そしてそれを見守る涼香。よくわからない構図が出来上がっていた。


「とりあえずお前ら落ち着け」


「う、うん! 落ち着いた!」


「わ、私が取り乱すわけなかろう!」


「……あとは頑張ってくれや、美波、今日は先帰ってるぞ?」


「……え!? ちょっと待って!? 一緒に帰ろうよ!」


美波が全力で引き留める。


「無理、今日は葉山とかえれば? 変にギコいままだとこのまま疎遠になってくぞ」


「……疎遠に……それはやだ! 引子ちゃん、一緒に帰ろ!」


「あ、ああ……」


どうやら二人で帰ることになったらしい。しかしお互い少し気まずそうな表情をしていた。



(無言で帰るのは気まずい!)


現在、二人並んで帰っている。引子と美波だ。鳴り響く音は靴と地面が接触する音のみで、話し声は一切聞こえない。そんな状況に美波は心の中で叫んでいた。


(あいつら何してんだ?)


そしてその光景を見守る人物が一人、涼香である。なんだか二人が(というよりは美波が)心配になり、後ろからこっそりつけてきてたのだ。


「ね、ねぇ! 人って何のために生きるんだと思う?」


先に沈黙を破ったのは引子だった。この無言の下校に耐えきれず、話を振るが……いかんせん今までぼっちで、誰かと帰る機会なんていうものはなかなかないもので、話題の振り方が下手すぎた。


「え!? きゅ、急に言われても……そうだな……それを探すために生きるんじゃない?」


「そ、そうだよね!」


再び沈黙が流れる。むしろ先ほどよりも気まずくなったのではないだろうか?


「……ね、ねぇ! その包帯ってどうかしたの? 怪我?」


「こ、これは……わ、私の封印された力が……」


「え? ごめん、後半よく聞き取れなかった」


「……怪我だよ」


怪我は怪我でも心の怪我だが。


「そ、そうなんだ……」


普段は一緒に帰る友達も沢山いる、非ぼっちの美波だが、今日は何故だか会話をするのが壊滅的に下手である。これも動揺故だろう。


「それじゃあ私ここだから……またね」


結局何も話せぬままに美波の家に着いてしまった。


「……また明日」


この言葉を聞いた美波はとてもいい笑顔になって


「うん! また明日!」


と、大きな声で返した。シスドに行った時は返してくれなかったこの言葉。今日は気まずかったが、美波は確実に心の距離は近づいてきていると実感することができた。

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