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虚無を知った日
溺れる。触れないものを手にしようともがく。
愚かだったと感じさせないでくれ。それでもなお探そうとするおれを止めてくれ。
哀れな夢にすがる。固まらずに冷えている。
――何故手に入らないのか
引き裂かれるというにはあまりに静かに崩れ去った
二人は消えていった
違う。消えたのはおれだけだ。揺れているのもおれだけだ。
――何だというのか‼
叫びは届かない。うねり、底に溜まっていく。変わらずに生きていく。
黒い海の中に落ちていく。溺れて窒息することも出来ずに、揺蕩い続ける。