09 ䷳ ⇋ 恋敵 ⇌
さっきは長風呂でその間にボクは色々考えすぎたようだね。なんかまた頭使いすぎたかな。
そして今ボクはお風呂から上がって寝室に戻ってきた。
とりあえず今は百合聖先輩に電話をかけて、さっきの男の子のこと……実頼くんだったっけ? ……を伝えておきたい。先輩もあの子のとは知り合っているようだから。
『もしもし、遙奈くん? どうしたの?』
「実は夕方ボクたちが離れた後のことですけど」
ボクはさっきの出来事をそのまま百合聖先輩に伝えた。
『あの子か。私も会ったことがあるわ』
やっぱり百合聖先輩もあの実頼という男の子のことを知っているようだ。
「どんな子だったんですか?」
『私もよく知っているわけじゃないよ。一番知っているのは遙奈くん、君自身であるはずよ』
「でもあれはこっちの世界線のボクのことですよね? 今のボクは全然彼のことを知りません」
『そうか。よかった』
百合聖先輩はなんか嬉しそうに呟いた。
「は? 何がですか?」
『いや、何でもない。まあ、正直に言うとね、あの子は私にとって恋のライバルだろう。なら君があの子のことを忘れたら私にとって都合がいい』
「あ、そうですね」
百合聖先輩、確かに合理的だけど、こんなこと堂々と言うのはなんかね……。独占欲いっぱい伝わってくる。
『とにかく、あの子は今の君にとってただの赤の他人だろう。なら放っといていいわ』
「え? そんな……」
それはそうかもしれないけど、あの子の方はちゃんとボクのことを知っているようだし。ボクが彼のことを無視したらそれはなんか酷いじゃないか。好きな人から他人扱いされるなんてあまりにも。
『どうせあの子はあっちでの男の君のことなんて知らない。なら君の言ったパラレルワールドの問題について彼は全然無関係だろう』
「そう思いますか?」
そうは考えられるかもしれない。でもボクは逆にそれは怪しいと思っている。
よく考えてみようよ。他の人はどっちの世界線でも存在しているのに。ちょっと違う形なのかもしれないけどちゃんと存在している。ボクはよく覚えている。
なのに彼だけはあっちの世界線で存在していない。これってどう考えても何か意味があるよね。
つまり、この異変の鍵は彼にあるという可能性が十分高いかもしれない。ならボクはまた彼に会って確認してみたいと思っている。手がかりになるかもしれない。
だけど、百合聖先輩はボクがあの子に関わることを望まないようだ。だったらこの子のことを伝えずにしばらく自分で考えた方がいい。
「わかりました。じゃ明日また学校で」
『あの、まだちょっといいかしら?』
「はい」
百合聖先輩はまだ何か言いたいことがあるようだ。
『あの子より、私の方が君のことを考えているはずよ。それだけは信じてくれ』
「百合聖先輩……」
やっぱりそんなことで心配しているよね。
「わかりました」
『大好きだよ』
「ボクも先輩のことが好きです」
『ありがとう。じゃ、おやすみ』
「はい、おやすみなさい。百合聖先輩」
今日はもう寝よう。本当に疲れた一日だった。明日はどうなるかな?
もしかしたら明日起きたら男に戻っているかもしれないよね? そんな簡単にはいかないと思うけど、その可能性があるかも。
そう考えたら早速寝よう。
今日のことはひとまずこれで終わり。