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07 ䷋  ⇋ 告白 ⇌

 「遙奈(はるな)(ねえ)、どうしたの? 俺の顔をじろじろ見つめて黙っているなんて」

 「あ、ごめん」


 いきなり知らない男の子が話しかけてきて、ボクはついどうしたらいいかわからなくて彼をじっと見て黙っていた。


 まだ誰なのかよくわからないが、この子は年下なのにタメ(ぐち)で話しかけてきたのだから、どうやらそれほど仲がいいようだ。とにかくボクも普通に答えてみたらいいよね。


 「えーと、ボクに何か用なの?」


 名前はわからないから、これ以上何も言えない。とりあえずこの子の要件に関しては直球で訊けばいいと思う。


 「遙奈姉、今日はなんか帰りが遅いよね」

 「うん、学校で色々用事があって」


 まさかこの子は、ボクが学校から帰るところを待っているのか? どうやらボクに何か話したいことがあるようだ。


 「あの人と一緒にいたの?」

 「え? あの人って誰のこと?」


 実は誰なのかは心当たりがあるけど、はっきり言わないと誰のことなのか確定できないよ。


 「誰って、もちろん遙奈姉に付き(まと)っているあの先輩だよ」

 「やっぱり、百合聖(ゆりせ)先輩のことか」

 「うん、あの人だ」


 どうやらこの子は百合聖先輩とも面識があるみたいだね。まあ、ボクはいつも百合聖先輩と一緒にいるから、この子がボクとこんなに仲良しだったら先輩のこと知らない方がおかしいかもね。


 でも『付き(まと)う』だなんて、もしかしたら『付き合う』の間違いじゃないの? なんか言葉遣いよくないような気がする。


 「そうだよ。ボクが百合聖先輩と一緒にいた」

 「昨日もデートに行ってきたよね?」


 そこまで知っているとは。


 「それは……」


 今ボクは『そんなことは君に何の関係があるのか?』と思いっきり言い出したいけど、やっぱりなんかそんな言い方は酷すぎると思うのでやめておこう。


 「ボクと百合聖先輩のことを心配しているのか?」


 ひとまずこんな言い回しがいけるだろう。


 「それは当たり前だよ。俺の気持ちは遙奈姉に伝えただろう」

 「は?」


 この子の気持ちって、これはどういう意味?


 「それより、一昨日(おととい)のあの……返事は?」

 「一昨日(おととい)? 何の返事?」


 一昨日(おととい)この子と何があったのか? ボクは全然記憶にない。


 「その……告白のことだよ」

 「は?」


 告白? 待ってよ。これは何のこと? 聞き間違いかもね。


 「俺は勇気を(しぼ)り出して遙奈姉に告白したのに、昨日はあの人とデートだなんて……」


 えっ!? ボクに告白って? この子は男の子だよね。それはまあ、確かに今のボクは女だからおかしくないかもしれないけど。


 まさかボクが男である世界線ではこの子が存在していない理由は、この子はボクのことを女の子として認識しているから? つまりボクが男だったら全然用がないってこと?


 「結局遙奈姉は、幼馴染(おさななじみ)の俺より、本当に女の人を選ぶよね?」


 幼馴染か? こんな人物がいるの? ボクとこの子がそういう関係なの? あっちの世界線ではこの子と似ているような幼馴染なんて存在していないよ。


 それはおかしいかもね。学校でボクのクラスメートたちは全部そのままあっちの世界線と一致している。関係性はちょっと変わったけど、みんなのことは知っている。


 なのにこの子だけは完全に見覚えがない。どうしてなの?


 「君は……ボクのことをどう思ってるの?」


 ()えてはっきり訊いてみる。


 「一昨日(おととい)も言ったのに。わかったよ。もう一度言う。好きです。遙奈姉、ボクと付き合ってください!」


 えぇ!? いきなり本当に告白? 男の子から告白が……。


 あっちの世界線でも一度もボクは女の子から告白されたことはないよ。生まれてから初めての告白は男の子からだなんて。


 もちろん今のボクならこの子のこと全然知らないから、受け入れる理由はない。


 だけど、こっちの世界線のボクはこの子のことを知っているようだ。しかも幼馴染だと言ったね。きっと随分仲がいい。思いっきり断ればいいわけがないよね。


 ならこの世界線のボクはこの子のことをどう思っているの? 好きなのか? こっちでのボクは女だからこれはあり得るかも。


 でもこっちのボクは百合聖先輩と付き合っているわけだし。つまり例えこっちのボクが女の子だとしてもそもそも百合(・・)だから男に興味ないはず。


 でもそれならなんで一昨日(おととい)こっちのボクはすぐ断らなかった? まさか実は脈あり? 幼馴染だから特別かもしれない。今のボクは勝手に断ってしまったらいいのか?


 どうしよう。気迷(きまよ)いしてしまう。


 「あのさ……、後でいいかな? 今まだよくわからないから」


 とにかく後回しにする。


 「そうか」

 「ごめんね」

 「ううん、まだ返事待ってるよ。遙奈姉」


 そう言い残して彼は走り去った。なんか神出鬼没(しんしゅつきぼつ)だね。


 というか、こっちの世界線のボクは『ショタコン』なのか? もしボクが本当にあの子と付き合っていたらこれって『おねショタ』になるのでは?


 絶対違うよね。ボクがショタコンだなんてそれはあり得ないよ。ちなみにロリコンでもないよ。ボクの好みは年上の女の人だからね。つまり百合聖先輩みたいな人だ。


 いや、そんなことはどうでもいいよ。今なんか意外とややこしいことになっているようだね。


 とにかく今はまず家に帰ってから物事を(まと)めてゆっくり考えよう。


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