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02 ䷇  ⇋ 自我 ⇌

 ボクは涼原(すずはら)遙奈(はるな)。名前はちょっと女っぽいとよく言われたけど、れっきとした男だ。いや、『だった』と言うべきかも?


 名前のせいで女だと思われることも多いが、せっかくお母さんが付けてくれた名前で、ボク自身もこの名前が好きだから不満を感じるわけではない。


 体も男にしては小柄で、身長は168センチくらいしかない(一応百合聖先輩よりちょっと高い)。顔も女の子っぽくて、高校生になってもよく女の子だと見間違いされている。


 それでもボクは男だ。本当に男だよ……。だったよ?いやいや、なんで過去形にしなければならないの?


 ボクは男だ。そのはずなのに、今の体は……なんかいつもよりも更に女の子っぽい。顔はなんかいつもより丸くて柔らかい気がする。


 髪の長さは今までと変わらず首くらいまでの長さで、色もいつもの黒髪だ。とにかく男にしては長いけど、女にしては短いという高さで中性的っていうイメージ。だけど今はなんかいつもより(つや)やかに見えるような気がする。


 「あー」


 声もやっぱり高くて女の子みたい。


 そして何よりこの胸の膨らみだ。パジャマ越しでも中になんかいつもより何かあると感じられる。


 そしてパジャマのボタンを解いて、その中身を確認してみたら……やっぱり!


 別に大きいとは言えない。美人の百合聖先輩とは比べ物にならないかもしれないけど、少なくともちょっとくらい膨らんでいる。今までのように平らではない。触ってみたら……なんか柔らかい。


 ということは下の方も……恐る恐る脱いで確認して見たら……。


 やっぱりだ! こうなっている! どうなっているのかは今のところひとまず省略して言いたくないけど、とにかくこれで確定だね。なんか泣きたいという気分になった。


 どういうこと? 何が起きたの? 確かに体格や顔や髪は大きく一変したというわけではなく、ただ微妙に変わっただけだという程度。服を着たら見た目では誤魔化(ごまか)せるだろうけど、詳しく見たら体のラインとかも随分変わった。曲線が目立つようになって、色々丸くなった。何より、あるはずのものがない。その代わりになかったものがある。


 「遙奈、まだシャワーなの?」

 「母さん……?」


 扉の向こう側から母さんの声が入ってきた。幸い母さんは中に入ってきていない。


 「もしかして寝坊か?」

 「うん、ちょっと」


 ボクは扉越しに母さんと会話をしている。


 「まったくね。とりあえず早くしなさいよ」

 「うん、わかったよ」


 今はいつもと変わらない母さんとの会話。でももし母さんが中に入って今のボクの姿を見たらどうなるの?


 あれ? そういえば母さんはボクの声を聞いても疑わないのか? こんな高くて女の子みたいな声になっているのに、なんかすぐこれがボクだと認識したようだ。


 それより、今はどうしよう? とりあえず服も脱いだからまずはシャワーを浴びよう。でも今の体はいつもとは違うよね。いつものように洗ったらいいものなのか?


 でも考える時間はないよね。とにかく早く何とかしよう。






 やっとシャワーは終了。意外と順調だった。


 女になった自分の体を見てもあまり興奮とかしなかった。多分、これは自分だからかな。それになんか違和感なく自然と動けるね。


 シャワーもまるでいつもこのようにちゃんと浴びて、どう洗うかすでによく知っている。まるでボクはすでにこの体に慣れているような? そんなはずがないよね? 今までずっと男として生活していたはずなのに。


 まあ、でも問題ないならそれでいいか。とにかく今はまだ裸のままで、あまりよくないから早く服を……。


 「は?」


 服を着るために箪笥(たんす)を開けてみたら、この中にはいつもとは全然違うと気づいてしまった。


 紺色(こんいろ)のシャツに水色のリボン、いわゆるセラー服だよね。それと紅色のスカートと長い靴下。


 「女子制服?」


 いつも着ていた男子生徒の制服はどこにもない。代わりに女子制服はここに入っている。なんで? これはどういうこと?


 確かに今のボクの体は女になっているのだから、制服も当然女子のものを着用した方が自然であるかもしれないけど、この状況はどう見てもおかしすぎるだろう。なんで体だけでなく、服まで勝手に代わっちゃったの?


 それに下着も……。全部女のものになっている。パンツとかも……、ブラジャーとかも……。


 どうしよう? このまま着るのか? 今は女になったのだからこれを着てもおかしくないかもしれないけど、どうやって着るの?


 とにかく、裸のままよりいいか。さっきのシャワーみたいに自然と何も考えないでやっていこう。まずは、えーと……今は冬だから冬服の長袖のシャツ。なんか夏服より落ち着くかも。




 すると意外と問題なく自然に着用できる。なんでだろうね? 女の下着や女子制服なんて全然身に着けたことがないはずなのに、今はまるで手慣れているような感じ? もちろんサイズも全部合っている。


 多分動作や動き方はこんな体に合わせられているかも? どうしてかわからないけど、これで助かったね。


 「よし、どう見ても女子高生……」


 制服装着完了。そして鏡に映っている自分の姿を見たら……、なぜか意外と違和感が少ない。まるで今までもこんな姿を見ていたような? そんなはずがないのに。


 女子制服なんて初めてだよね? しかも体つきもこんなに女の子らしくなっているなんて。


 このままの流れでは恐らくいずれ自分が男だったということを忘れてしまいそう。なんか不安だな。


 体つきは結構変わったけど、身長はほぼ変わっていないようだ。まだ168センチのままかな。女の子にしては比較的に高い。髪の長さもそのままだから女にしては短め。意外といける? でも可愛い女の子というより、ボーイッシュでかっこいいタイプかな? いや、こんなこと自分で言うのか?


 こんな姿では『男っぽい女』って感じだね。男だった時は逆に『女っぽい男』だと言われたけど。つまり『中性的』ってやつ? 結局のところいつでも中途半端なままの自分にがっかりしてしまう。


 実は外見があんなに変わっていないから、この様子では男の格好をしたら男だった元の自分だと誤魔化(ごまか)すことができるかも。


 でも今服は全部女物になっているから、今は仕方なく女子制服を着るしかないよね。


 母さんに見られたらどう思われるだろう? 心配だけど、とにかく母さんはボクのお母さんだから、息子のことを覚えないわけがないよね? ちゃんと説明したらきっとわかってくれるよね?


 とりあえず、今はいつまでも鏡を見つめて溜息している場合じゃないよね。母さんも朝ご飯の準備が終わったはずだから早く行かないと。


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