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18 ䷜  ☯ 逢瀬 ✡

今回からしばらく百合聖先輩の視点になります。

 私は由良(ゆら)百合聖(ゆりせ)。ちょっと顔がよくてスタイルがいいだけで、高校ではつい人気者になってよく男子生徒から告白されていた。


 もちろん、全部断ったよ。別に私は男に興味ないというわけではないけど、ぶっちゃけて言えば、今まで話しかけてきたのは駄目なやつばかりだったから。


 つまらない男と付き合っても碌な高校生活にはならないはずだよね。まったくこんなのは私にとってただの迷惑に過ぎない。


 1年の時は何度告白されたかしら? やっぱり数え切れないからそんなことはどうでもいいわ。覚えたいわけでもないしね。


 だけど高校2年生になってある日、私はあの人と出会ってしまった。


 「好きです。ボクと付き合ってください!」


 いつもみたいな告白だけど、今までとは違うところがあるとすると……、彼は……いや、彼女は女の子だから。


 「あの……、君は何者なの?」

 「ボクは涼原(すずはら)遙奈(はるな)、1年生です」

 「君、女の子だよね?」


 彼女は女にしては背が高くて髪が短くて言葉遣いも男っぽい。一見すると男だと思われるかもしれないが、こんな綺麗で甲高(かんだか)い声だから、すぐ女の子だとわかった。いや、その前に何より彼女は女子制服を着ているからね。女装男子っていうわけではないようだ。


 「はい、そうです。ボクは女の子ですが」

 「何それ? こんなこともあるんだね。うふふ」


 なんか受けるわね。今まで告白しに来たのは男子生徒ばっかり。でも彼女は女の子だ。そう考えたらなんか頭可笑しくてつい笑い出してしまった。


 「そこまで笑われると……」

 「ごめん。なんか意外なことだからね。これは何の冗談?」

 「ボクは本気ですよ!」


 どうやらただの冗談ではなさそうだ。


 「もしかして、君って百合なのか?」

 「はい!」


 そんなにあっさり答えるとはね……なんかすごいよ、この子。興味が湧いてきてしまったわ。


 「あはは、君は面白い人ね」

 「可笑しいですか?」

 「そうね。確かに可笑しいわ。今まで私は君みたいな人に会ったことなかったんだもん」

 「やっぱりボクは変ですよね」

 「ところでなんで私と付き合いたいと思うのよ? 今まで私はたくさん男の告白を断ったのに」

 「だから先輩も男に興味がないかな……って」

 「は?」


 な、何それ? どうしてこういう結論になったの? 私はただまだいい人が見つかっていないだけで、別に百合っていうわけではないわよ。


 「それに名前もそれっぽいです」

 「名前関係ないし!」


 確かに私の名前に『百合』がついているけど、別に深い意味なんてないはずだよ。ただお母さんが百合の花が好きだから。


 「違いますか?」


 違うのよ。絶対勘違いしている。そう答えたいけど……私もなんか彼女に何か感じている。面白い人であるのは間違いないだろう。


 「違うかどうかわからないけど、どうやら私も君に興味があるわ」


 彼女と一緒ならもしかしたら何か新たな扉を開けられるかもしれない。女同士だから変なことされる心配もないしね。


 それに、私が彼女と付き合ったら、私が百合だという噂が広がって、告白しに来る男はいなくなるだろう。


 「だから……その……」


 よく考えた結果として、この子と付き合ってみる甲斐があるね。


 「私、君と付き合ってもいいわよ」

 「本当ですか? やった! ありがとうございます。先輩」


 彼女は本当にとても喜んでいるようだ。


 「うん、これからよろしくね」


 こうやって、私は遙奈くんと付き合い始めた。初めて彼氏(? )ができた。


 正直言って最初は別にあまり本気じゃなかったよ。だけど遙奈くんと一緒に時間を過ごしていく間に、なんか楽しくて幸せだった。私の高校生活は少しずつ色鮮やかになってきた。次第に私も本気で遙奈くんのことが好きになってきた。


 このまま百合(・・)でもいいじゃないか? 悪いことなんてないと思うわ。周りから変だと思われるかもしれないが、相思相愛の二人なら何でも乗り越えられるはずよね。


 私は遙奈くんのことが大好きだ。本気で生涯一緒にいたいと思っている。


 でも、色々不安がある。その一つは彼女の幼馴染の男の子の登場。あの子は遙奈くんより2つ下なのでまだ中学校に通っている。


 違う学校だから会う機会があまり多くないが、確かに2年前遙奈くんとあの子は一緒の中学校だった。あの時はとても仲がよかったそうだ。


 そして何より、あの子は遙奈くんのことを一人の女性として好きだと、私はつい感づいてしまった。


 遙奈くんは百合(・・)だから、あの子のことなんて好きになるわけがなくて、これはただの杞憂(きゆう)かもいれないとはわかっているけど、やっぱり二人はすごく仲がよかったってのは事実のようだ。


 何より私よりあの子はずっと前から遙奈くんと知り合っていたし。私の知らない遙奈くんのこともたくさん知っているはずだ。


 遙奈くんも私が嫉妬しているとわかっているようで、あの子から距離を取ってくれた。


 しかもあまりあの子のことを私に話してきていなかった。だから私もあの子に関することをよく知っているわけではない。


 確かに遙奈くんは男っぽい性格だけど、身体も自己の性意識も普通の女の子だ。自分が男だと思っているわけではない。ただ女の子が好きだけだ。


 だからこんなに仲のいい幼馴染の男の子がいるのに、全然興味ないわけではないはずだと思う。


 私が気になって仕方なく遙奈くんをこっそり尾行してみたら、やっぱり彼女は時々あの子と会っていると知ってしまった。そして毎回遙奈くんは私に知られないように黙っていた。


 こんな行動はどう思わせる? 浮気じゃないか? どう考えてもつい不安になってしまう。


 そしてついに冬休みのあの日がやってきた。いきなりあの子が遙奈くんに告白したあの日だった。


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