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16 ䷆  ⇋ 追跡 ⇌

 放課後、ボクは一人であの日先輩とデートに行ってきた商店街にやってきた。


 あの日のデートの内容は百合聖(ゆりせ)先輩と確認しておいた。だいたいはどっちの世界線でも同じのようだけど、完全に一致しているわけではない。


 それに欠落してどうしても覚えていないところもある。実頼くんに告白された日の記憶のように完全に忘れたのではないが、一部曖昧(あいまい)になって思い出せないことがある。


 だからあの日のデートの途中で何か起きた可能性が随分高い。


 ボクは今この商店街を歩き回っている。怪しいものはまだ何も見つけていない。


 と、思ったその時……。


 「痛っ!」

 「すみません」


 ついぼーっとしたらある女の人とぶつかってしまった。


 「あ、キミはあの時の……」

 「ふん?」


 この人はボクのことを知っているのか? でもボクは彼女のことなんて見覚えがない……と思う。


 というより、顔はあまりはっきり見えないよね。黒眼鏡をかけているし、頭は黒い頭巾(ずきん)に被られているから髪の長さや髪型ははっきりわからないが、とにかく白っぽい色。白銀色かな?


 年齢は……判断しにくいが、声はこんな高らかなソプラノだからとにかく老人ではなく、若い女性だと推測できる。ボクより年下だという可能性もある。


 でも一番気になるのはやっぱり服装だよね。なぜか顔の一部以外体のほとんど全ての部分は服の中に隠れている。手袋もつけている。


 まあ、今は冬で天気がこんなに寒いのだから、こういう服はただ防寒着だと見做すことができるからそんなに珍しくないかもしれないけど、何となくボクはこの人は絶対何か怪しいと感じている。


 「えーと、どちら様ですか?」

 「……ཡ་ཧ་རི་(ヤハリ)ཀོ་ནོ་ཀོ་(コノコ)འི་མ་(イマ)ཝ་རེ་(ワレ)ནོ་()ཀོ་ཏོ་(コト)ཝ་སུ་(ワス)རེ་ཏེ་(レテ)འི་རུ།(イル)……ཡོ་ཤི་(ヨシ)ཀོ་རེ་(コレ)སེ་འི་(セイ)ཀོ་འུ་(コウ)ཏྟེ་ཀོ་ཏོ་(ッテコト)མི་ཏ་འི་(ミタイ)ནེ།()……」


 今彼女は小さい声で何か呟いているようだけど、ボクはよく聞き取れない。


 「今何か言ってるんですか?」

 「いや、人違いのようだネ」

 「はい?」

 「何でもないヨ。別に(われ)は怪しい人なんかではないゾ。それじゃネ」


 そう言い残して彼女はいきなり走り出した。


 「おい、待ってください」


 ボクもすぐ慌てて足を動かして追いかけようとしたが、アッという間に彼女はそのまま人混みの中に消えていった。


 さっき彼女は『怪しい人なんかではないゾ』と言ったけど、普通の人ならこんなこと自分で言う? しかもこんな風体(ふうてい)で不審な行動を取っている人はどう考えても何もないわけがないだろう。


 それに喋り方はなんか(なま)っているようだね。何弁? いや、ひょっとして外国人かもしれない。


 せっかく何か手がかりになりそうな人物を見つけたが、逃げられてしまって残念だよね。


 もう一度見つけることができるかどうかわからないけど、とりあえず今ボクはさっきあの女性が走っていった方向へ向かってみる。




 で、その後1時間経過した。ずっと探していたが……。


 「全然何も見つからない……」


 悔しいけどやっぱり今日も何の進展もないか。


 と、思っていたその時……。


 「あれ、あっちは……」


 ボクと同じ学生服を着ている女の子を目撃した。それはボクの知っている顔だった。


 「百合聖先輩……」


 なんで百合聖先輩はここに?


 しかもうろうろ周りを見て、何か探しているようだ。今隠れているから彼女はまだボクがここにいることに気づいていないみたい。今ボクは彼女の目の前に現れた方がいいかな? それとも黙っておいてしばらく彼女の様子を観察したらいい?


 いやいや、観察だなんて……。こんなこと考えると、まるでボクは先輩を不審者扱いしているのではないか。


 でも実際に先輩は何か隠しているってのは確かだ。だからボクも気になって真相を突き止めたい。


 もしかしたら、実は百合聖先輩は何か関係あるとか? いや、絶対にそんなことはないよね。そう信じたいけど、やっぱり気になって仕方ないから……。


 こんなことやったらなんかボクがストーカーみたい? そんなつもりじゃないのにね。


 百合聖先輩、ボクはストーカーのような真似をしてしまって本当にごめんなさい。でもやっぱり……。


 頭の中でそう思って罪悪感を抱いていながらも、結局ボクは百合聖先輩を尾行すると決心してしまった。


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