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14 ䷞  ⇋ 本音 ⇌

 先ほど実頼(みらい)くんと話し合っていたらいつの間にか雲行きがおかしくなってきて、そのままボクは実頼くんの家から出て、自分の家へ帰る。


 ボクはあの子に悪いことをしたのかな? でもあの子は先に百合聖(ゆりせ)先輩のことをあのように言ったから。


 でも彼の言ったことはまだ僕の頭から消せない。今でもつい考え込んでしまう。不本意だけど、ボク自身でも彼の言ったことが案外ある程度理屈が通ると思ってしまっている。


 これからどうすればいい? 今日のことを百合聖先輩と話したら? いや、そもそも先輩から「あの子と関わるな」と言われたよね。今日あの子に会いに行ってきたことも百合聖先輩に黙って勝手に来たのだから、やっぱり言えるわけがないよね。


 色々考え事をしながら歩いたら家に着いた。


 「ただいま」

 「おかえり。今日も遅かったわね」


 この数日色々あってボクは帰りが遅くなって母さんに心配かけているよね。


 「まあ、ちょっと用事があってね」

 「また百合聖ちゃんと一緒なのか?」

 「いや、今日は違う。実はさっきボクが実頼くんの家に行ってきたよ」


 このことについては母さんに言っても大丈夫だと思う。


 「そうか。あんたがあの子の家に行くのは久しぶりだよね。なんでいきなり?」

 「昔のことを考えてみたらつい行きたくなってきた」

 「そうね。昔はよく一緒に遊んでいたのに。今度またあの子をここに連れてきてもいいのよ」

 「母さんはなんかあの子のことが気に入ってるみたいだね」

 「うん、いい子だよ。あんたも昔あの子のことが結構気に入っていたじゃないか」

 「気に入ってた? ボクが?」


 こっちの世界線のボクとあの子はどこまでの関係だったのかな? やっぱり気になる。


 「正直言って、私も2人は上手くいけるかも、って思っていたのにね」

 「それってどういう意味?」

 「そのまま付き合うかと思ってたよ」

 「付き合うって? もしかして、恋人になるってこと?」

 「まあ、そんなことだ。言わなくてもわかるだろう」


 いや、今のボクはそこまでわからないよ。


 「やっぱり、母さんはボクがあの子と付き合った方がいいとか思っているの? 百合聖先輩とよりも?」

 「そ、それは……」


 母さんは答えるのを迷っているようだ。


 「正直言ってよ。母さん」

 「まあ、ぶっちゃけ言うと、そうだよね」

 「そ、そんな……どうしてだよ?」

 「それは決まってるじゃないか。言わなくてもわかるだろう」


 やっぱり……こういうことか。


 「母さん、はっきり言って」

 「だって……、彼は男の子だからだよ」

 「……っ!」


 そうだった。こっちの世界線でボクは女の子だからこれは当然だよね。そして母さんはこんなことで悩んでいた。


 「あ、でも別にあんたが女の子と付き合ったことは今更反対するわけじゃないよ。あの百合聖ちゃんって子は本当に可愛くていい子だし。ただ、もしもできればの話だよ」

 「なるほどね」


 確かに母さんはそう考えるのもおかしくない。


 「何か悩んでいるの? この数日のあんたはなんかいつもと違って……」

 「やっぱり、今のボクは変だよね」


 今のボクは本当に母さんの知っていたボクではないから。


 「いや、そこまでは……。とりあえず悩んでいることがあるのなら私にも言ってくれればいいのに」

 「そうしたいけど、今の問題はちょっと複雑だから」


 言っても信じてくれないかもしれない。それにボク自身もまだ事情をよく把握できているわけではないから、やっぱり今はまだ何も上手く言えないよね。


 「というか、数日前も今と同じような話をしたよね? あの時は遠回りで何を言いたいかはっきりしなかったけど、今回は直球だね」

 「は? ボクが母さんとこんな話をしたの? どの日のこと?」

 「冬休み……の最後の日の前」

 「4日前?」

 「え? えーと、そうだよね。忘れたのか?」


 つまり、ボクが実頼くんに告白された日か。もちろん、これはあくまでこっちの世界線のボクの話で、ボク自身の記憶にあるわけがない。しかしボクも今元の世界線のあの日の出来事をほとんど覚えてない。


 とにかくあの日は何が起きたのか母さんならある程度知っているようだ。ならこれについて母さんから聞けば……。


 「ね、母さん、今ボクは変なことを言っているのはわかっているけど……、実はボクがあの日のことをどうしても覚えていないんだ。だから迷惑でなければ教えてもらってもいい? あの日ボクは何をしたのか? 詳しく……」


 ボクが別の世界線から来たボクだっていうことはもし説明するのならややこしくなりそうなので、今のところはまだ伏せておこう。だけどとりあえずボクはあの日のことを知らないと主張して、母さんの知っている限りのことを教えてもらうことになった。


 そして案の定どうやらあの日は意外と色々あったようだ。


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