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ブラックドックの影


『条件達成 スキル【蓄電】 を取得しました』

『条件達成 スキル【放電】 を取得しました』

『条件達成 スキル【興奮】 を取得しました』


一気に三つもの報告ウィンドウが出現した。


俺の【重荷】が発現してから20分程しか経っていない。

これにより俺だけが条件達成が速かったというわけではなくなったな。




まじで悲しい。




神薙はおもむろにそのウィンドウに触れてみると、先ほどのようにスキル一覧が書かれたウィンドウがノートブックサイズで展開された。


どうやら『スキル』と言わずとも己のスキルを把握する術はあるようだ。他にもあるかもしれんな。


俺はおんぶされたままなので花崎の頭を押しのけて神薙のスキル一覧を覗き込む。



ーーーーーーーーーーーーーーー


神薙 葵貝


【向上の因子】

現状に不満を抱くもの。

欲深くあるものの持つ因子。


スキル:

【充電】

電子機器に電気を蓄えさせる。

10秒間に1%ずつ対象の機器に組み込まれた

電池に電力を蓄える。


【蓄電】

一定時間【充電】が使用された時に得られたスキル。

外部からの電流を自身に蓄えることができる。

電気によるダメージを無効にする。

【充電】での電力も自身に貯めることができる。


【放電】

【蓄電】を取得した時に得られたスキル。

【蓄電】により蓄えられた電力を外部に

放つ。電気耐性を得る。


ーーーーーーーーーーーーーーー


むむ、アドオンがついていくタイプか。


だからなのか一つ一つのスキルがまるで歯車のようにかみ合っているように感じる。

異世界生活の文明不足によるストレスでこのようなスキルが増えたのならば、最終的に神薙の行き着くところは現代社会のような便利さだろう。


奴のスキル系統の方が妬ましいが、手練手管での解決にも向いている。


「伊勢丸卿のスマホに【充電】を使っていたら二つもスキルが手に入ったようです。花崎卿の……【興奮】ってなんすか」


いぶかしげに花崎の笑みを横目に見る神薙。


余り深入りしたくないが、危険を知りつつ深淵に踏み込む猫のようだ。



【興奮】とか地雷スキルでしかない。



「皆一様にこの辺で第二スキルを手に入れるもんなのか。神薙のスキルは、組み合わせが少ない現状雑魚スキルの寄せ集めに止まるが、花崎の【身体強化】に続いて戦力になる。スマホの充電に電力を回すのは勿体ない、【放電】に使える電力をできる限り貯めておけ」


「了解しやした。こちらお返しします」


神薙は手に持っていた俺のスマホを返す。

手渡されてきたときにピリッと静電気が俺に流れてきた。


お前ぇ……


手癖が悪いというか、意地が悪いというか。


スマホの電源ボタンを押すとちゃんと使えるようになっている。

しかしながら、時刻や日時といった記載は一切合切無くなっている。


この世界に来て数分でスマホの電池が切れたのは何らかの理由があってだとは思っていたが、時間の概念そのものがねじれているのか?


つくづくこういった隠し要素やら陰謀論っぽいものを邪推すると手が震えそうになる。


どうせ泡沫の夢だ。

嫌なことをわざわざ感じる必要も、考える必要もないだろう。



現実逃避第一だよ、こういう時は。



「お、スマホ君。これでオフラインゲームが遊べるな!」


「そんなことのために充電させたんすか?」


「こういうときだからこそ娯楽は必要なの、本当ならポテチとチョコを要求するところを我慢してんだからね!」


「さいですか……」


「伊勢丸さん!僕のスキルも見てくださいよ!それで何か言ってください!僕も二人の役に立ちたいですから!」


ゲームは一旦お預けとして、こいつの心の闇を体現したようなスキルについても把握しとかなくちゃいけないのだよな。


絶対嫌だぁ……見えてる地雷を踏むなんて嫌だ嫌だ。


でも、苦汁も灰汁も混ぜて飲み干す勢いでないと、ここでは生きていけないから。



ーーーーーーーーーーーーーーー


花崎 罔象


【狂気の因子】

人の心を狂わせる者が持つ因子。


スキル:

【身体強化】

任意で身体能力を三倍にできるスキル。

肉体を使いこなすだけの感覚も取得する。


【興奮】

一定時間興奮し続けたことで得られたスキル。

自身を興奮状態にし、一時的に戦闘続行能力を

上昇させる。冷静な判断ができなくなる。


ーーーーーーーーーーーーーーー



闇だろ。



【狂気の因子】ってところですごい闇を感じるよ。


花崎は自他の闇とか弱点とかに全く気付かないいい子ちゃんだから、かえってストレス貯めちゃうタイプだ。


とうとう異世界にまでも働き方改革の波が来ているということか。


それも問題だが、【興奮】の取得条件も闇というか恐怖。


「何に興奮し続けていたん……いや、何もいうな。聞きたくない。お前はとりあえず俺を乗せて全速力で逃げる担当だ。戦うのは勝てる相手だけだ。いいか?」


「えー……はい!」


「異世界では世紀末のヒャッハーどもに倣って必ず盗賊が出てくる。一人一人は雑魚でも武装していて、人数は俺たちの10倍はいるものと思え。秩序と頭脳を失った悲しき魔物にしてやれる救済(パイルドライバー)はない!」


「悲しき、魔物……血が滾ります!」


ぐっとガッツポーズを決めて目を輝かせる花崎。


いつからお前はそんなバトル漫画にでてくる戦闘狂キャラみたいなことを言う人間になってしまったのだ。


でも、そんなスマイルの下に闇があるって思うと、何とも言い難し。


もっと頭のねじが緩くても穏健な緩み方だと思っていたぞ。


「滾らせるな!沈めろ!」


「……お二人さん、盛り上がるのは何よりですが。噂をすれば影が射すって知ってます?」


あぁ、知っているとも。

と、俺は応えようとしたところで硬直した。


噂をすれば来ちゃった、的な意味合いだよな……

嫌な予感がビンビンにするんだが!




「え?まさか来ちゃったの?」




何度目かの血の気が引くのを感じる。



「まさかまさかの!」


「前方に3匹の黒犬の影あり。最初の会敵がチンピラ盗賊団じゃなくて魔物なのは、勘ですが恐らくここら一帯は商人や旅人が通らないために盗賊たちも待ち伏せする旨味がないからではないでしょうかね?あ、犬の方っすがその体長我々と同じくらいだと予測できます、如何するか?」


「殴り倒しましょう!ワン、ツー、ブートキャンプ!」


「戦わない!作戦コマンド『命を大事に』!」


見てみると三頭もの巨体な黒犬が赤い目を爛々と光らせて猪突猛進に突っ込んでくる。


犬というか、狼クラス?


でも下手に狼と騒ぎ立てて混乱させるのは良くないので、仮称:犬とする。


そんなこと流暢に考えてる場合じゃなくて、如何するも何も逃げる一択だ!


仮に戦ったとして人サイズの犬だ、体当たりでもされたらひとたまりもない。



この草原にはぽつりぽつりと木が生えている。



その木々の中でも最も近いものはどれだ?

犬たちの方向の木は近くても本末転倒だ!

左右も同じく距離を詰められやすい。


であれば真反対の中で1番近い木を選ぶのが定石!

アレだ!


俺は指差しして一本の木を示した。


「あの一本木に向かって退避だ!つーか、こんな状況でも冷静すぎやしないか!?花崎は頭がアレだから驚くことがないにしても、お前はもうちょっと驚け!俺だけ動揺して恥ずかしいだろ!」


「常に異世界転生の妄想をしていた時期がありましたから、これは想定の範囲内です。付け加えて言いますと、私が一緒になって動揺してもあなたのカッコ悪さはとどまることを知りません」


こんなことで言い合っている俺たちだが、俺は背中に、神薙は花崎の右脇に抱えられていて冷静に考えてみれば何方も醜態である。


だがしかし、現役高校生の口喧嘩に冷静になる期などないのだよ。


「くぅぅ!お前もそれなりに痛い奴じゃねぇか!何『私は違います、キリッ』みたいな雰囲気だしてんだ!おい花崎こいつ降ろしちまえ!こいつを生贄に俺たちだけ生き残ってやる!」


「やめろ万年貧乏!」


「貧乏じゃありません~!ブルジョワジーすぎて風呂場にマーライオンとかつけちゃいますから~!毎年ハワイで本場のブルーハワイ食べてますから~!」


「風呂場にマーライオンつけてるお金持ちなんて今日日いねぇでしょうが!あんたの中のお金持ちどうなってんすか!」


「なんだてめぇ!まるでお金持ちの風呂見てきたみたいな言い方しやがってよぉ!東京の港区辺りの銭湯ならあるかもしれねぇだろ!?」


「ねぇよ!東京タワー周辺を何だと思ってんですか!」


「二人とも喧嘩はやめてください!木の上に投げますからね!」


「唐突!?」


花崎は若干疲れ気味にそう言うと、いつの間にか木の5mほど手前辺りまで来ていたらしくそこで急停止した。


花崎クン?

まさかだけどそこから人を投げるなんていう非現実的なことはしないよね?



いや、非現実的であるからこそやるな。



急停止した花崎はその時までの運動エネルギーを俺たちに込めて荒々しいカタパルトの様に首根っこを掴んで射出した。


「ちょ、ちょっと待って花さーー


「花崎卿、待っーー




「せーの!えいやっと!」




数刻のズレはあれど、同じ様な放物線を描いて飛んでいく俺と神薙。


気分はさながら時をかける少女の如く、土手から川に向かって飛び出したかの様だ。

その先には野生で育った葉の生い茂った太い枝があり、そこに頭から突っ込む。



スローモーションの様な体感で柔らかそうな葉や枝に当たるのは痛くなさそうに思えたが、そのスローモーションが切れると鞭打つ様に全身に枝が当たり滅多打ちにされた。



幸いにも、太い枝の上に乗れたからいいものの俺は思った。





(い、異世界なんて、大っ嫌いだ!)



伊「逃げるか、死ぬか!ちょっと神薙生贄に成れよ」

神「その役回りは柔らかい肉しかもたないあなたの方が見ているのでは?」

伊「な!俺そんなに太ってないもん!55kgだもん!最近は体重気にして運動も始めてるし!」

神「乙女かよ」

花「よしよーし、今度ミスドでも行きましょうね」

伊「太らせに来ているだと!?」

神「デブ談義してどうするんすか、本編と関係なさすぎあとがきの癖にねじれの位置にいますよ?」

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