第1話 『旅立ち』
2007年6月。期待と不安を胸に彼は旅立った。家族や友達に見送られ搭乗ゲートに消えていった。
第1話『旅立ち』
私の名前はリカ。30歳。専業主婦。毎日平凡だけど幸せな毎日を過ごしている。で、大好きな旦那様マサシ。彼は普通のサラリーマン。とても家族を大事にし、優しい人柄で、人気者。長男ヤマトも男らしく成長し、次男アラシはやんちゃ坊主。そんな家族に囲まれて幸せに過ごしてました。周りからも羨ましがられるほどのラブラブ夫婦。休日はいつも4人でおでかけ。そんな私たち家族が思いもよらない事になるなんて・・・
2006年8月。
ある日、私の叔父が実家に来てると言うので、いつものように4人で会いに出かけた。
叔父はいろんな事業をしてる、いわゆる実業家。
「実は今度、オーストラリアで会社をすることになった。よかったら、マサシくんも一緒にやらないか?」
突然の誘いに、動揺するばかり・・・。
これから設立するため、この先はどうなるのかは保障はない。仕事に集中してもらう為1年間は単身赴任。だけど絶対成功させて見せる!と。
「いい話ですね。考えさせてもらいます。」と、マサシは返事をした。
「できれば、3日で返事がほしい」と言う叔父は、すぐにまた海外に発つ予定があったから。
家に帰り、マサシが言った。
「男としては本当に魅力のある話。俺は叔父さんを信じてついていきたい。リカも協力してほしい。俺は絶対に海外で成功してみせるから!すぐに家族を呼べるよう頑張るから!」
今まで本当に優しかったマサシ。私の気持ちを最優先に考えてくれたマサシ。
そんな彼が初めて私に自分の気持ちをぶつけてきた。
私は彼の熱意に負け、「アナタがそれを選ぶのなら私はついていきます。だけど、正直賛成も反対もしたくない」と言った。
「ありがとう・・・」
次の日、マサシは「よろしくお願いします!」と叔父に返事。
それから、彼の修行が始まった。
今まで働いてた会社を円満退職し、叔父の勧める店で修行。
苦しい生活になったけど、私は幸せ。サラリーマン時代と比べるとマサシが家にいる時間があって子供たちもとても喜んだから。
あと少し、家族で過ごす日本での生活を満喫しないとね。
旅行に行き、キャンプに行き。思いで作りをいっぱいした。
2007年6月のある日。
叔父からの電話で「2週間後にはこっちに来てもらいたい。」と。
突然の出来事で私はパニックになってしまった・・・
《マサシと、とうとうお別れの日がきた・・・》
だけど、覚悟決めないとと自分に言い聞かせた。
マサシはたくさんの人たちに送別会を開いてもらい 最後に挨拶をした。
「家族を残していくのは心残りです。みなさん、リカや子供たちのことをよろしくおねがいします!で、いつか、絶対にオーストラリアに遊びに来てください!待ってます!」
その言葉を聞き、私はこらえてきたものが一気にあふれ出し号泣してしまった。
「中年の星!」とみんなから言われ拍手喝采で笑顔でお別れ。
「私たち、遠距離恋愛したことがないから・・・悲しいよぉ・・・」と言う私に
「もう恋愛じゃないだろ?結婚してるんだから大丈夫。離れても愛してるよ。お互いがんばろう!」と言ってくれたマサシ。彼の言葉を信じて頑張ろう。大好きなマサシの言葉を信じないと・・・
私はそう心に誓った。
2007年6月。マサシ渡豪の日。
空港にはたくさんの親族&友達が見送りに来てくれた。
「頑張れ!」「応援してるから!」「遊びに行くからね〜!」
と言う、みんなの期待を背負ってマサシは旅立って行った。
私はなぜか涙が出なかった。
空港に行くときは4人だったのに、帰りの車では私と子供の3人。
「もう、遅いから寝ててもいいよ」
と言う私に長男ヤマトが言った。
「ママ、僕は寝ないよ。だって、僕大きいし重たいから、ママでは抱っこできないよ。」
長男のヤマトは誰もが認める父親っ子。
私がやきもち焼くくらい、マサシとヤマトは仲良し親子だったから。。。
よく、誰がパパの横に座るかでケンカしったっけな〜(笑)
いつもパパを取り合いしてたな〜(笑)
当時まだ6歳だった彼は、子供ながら自分が父親不在の我が家を守っていかないといけないと
小さい胸に誓ってたのでした。
《パパがいないときは僕がママとアラシを守るんだ!》と。。。
家に着き、後ろを見るとスヤスヤと寝息を立ててる2人をみて思わず涙がこぼれた。。。
もちろん、悲しい涙ではなく、決意の表れでもある涙。
《マサシ、アナタが留守の間はこの子達のことを何が何でも私が守ります!》