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※レインディア視点
―――明日にはジーク様が大迷宮攻略に向かわれる。
あのお方なら万が一はないと分かっていても、どうしても気になってしまう。本当は寂しいだけということは分かっていても、蓋をしなくてはいけない。
やることは山積みです。イーリスやお兄様達に任せてのうのうと色恋に励むほど無責任ではないのです。
勿論、目指すは両立です。ジーク様にあれこれ理由をつけてお越し頂き手伝ってもらうことで仕事も、そしてアピールもできます。私、できる女ですアピールです。
「レインディア様、こちらの魔鉱石採掘の件ですが―――」
書類を確認していたところ、メイドが私に確認にくる。内容は領内の魔鉱石採掘の許可。申請書を見ると護衛が4人、しかもE~Dランクのみである。これでは魔物に襲われた際に被害が大きくなってしまいますね。
「承認しかねます。これでは人材不足です。1ヶ月ほど待ってもらうか、護衛を増やすよう伝えてください。1ヵ月後であればこちらでも手配できるよう援助しますので、というのも添えて」
「承知いたしました」
メイドが下がると私はため息をつく。次の書類を確認し、承認。次確認、これも承認。………その合間にジーク様に協力していただいたことへの見返りとしてこの世界の情勢など公開できる範囲を資料にして纏める。
ジーク様の存在は私の恋愛感情を抜きにしても捨てがたいもの。王女としても、彼とは今後仲良くしていきたい。オルトランド皇国のような魔族への敵対意識が特に強い国などから責められる可能性もありますが、正直な話ジーク様抜きでも何かしら起こるであろうことは予測できた。
故にこそ武力に対抗できる存在が必要不可欠。ジーク様の友人の座を獲得できた私にとって対価が必要であったとしても何かしら力添えをしてもらえるならおつりがくるほど大きな価値を持ちます。恋する乙女兼王女、したたかさも持ち合わせております。
―――なんて考えていると執務室のドアが開く。
「やっと抜け出せたな………レインディア、進捗はどうだ?」
「はい、順調でございます。既に人材はある程度確保できましたので、後はマニュアル作成を行う予定です。
ジーク様、本日はどのようなご用件で?」
なんとなく分かっていますが敢えて聞きます。会話を楽しむのです。
「明日は大迷宮に行くからな。留守の間についてだ」
「何かしてくださるのですか?」
そう問いかけるとジーク様が指を鳴らし、同時に眼帯をつけた美しいメイドが現れる。
「アネモネだ。俺が留守の間はお前につける。何かあったらコイツに言ってくれればガーベラ達にも伝わるようになってる。
あとは通信用のペンダントも渡しておく。繋がるか分からないが、本当にヤバイ時はソイツに魔力を流して壊れるよう念じてくれ。1回しか使えないが、それで俺が転移してくる」
「まぁ、勿体無いですわね」
折角ジーク様から頂いたものを壊すなんて、とは思いつつもピンチの時は駆けつけてくれるというのですから、素敵ですわね。
「アネモネもそれなりの実力者だ。いざってときは頼るといい」
「ふふ、ありがとうございます」
ジーク様がそれなり、というのですからとても強い方なのでしょう。心強いですね。
「あとは他国がどうくるかってところだが………無理はするなよ?」
「えぇ、勿論です」
心配してくれているのが痛いほど分かって………それが心地よくて。あぁ、本当にお優しい方。
―――その翌日、宣言通り大迷宮に挑まれるジーク様を私は見送った。




