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※ジーク視点
―――翌日
俺達は砦に向かっている。
セラフィとミレイナの間に険悪な雰囲気はない。寧ろ他愛ない話などをできるくらいには回復していると言っていい。それもこの街の危機であることなどから一旦保留になったからだろうが、それでも本来は姉妹のように気の置けない関係であることはよく分かった。
「因みにカガリはこの事知ってた?」
「知りません。私とセラフィは1ヶ月前に知り合っただけの関係ですから」
そう言いつつも何処か不機嫌な様子。なんというかこう、弄りたくなるな。
「ふーん、なるほどねぇ?」
分かりやすく声色を変えつつニヤけると面白いくらい簡単に乗ってくれた。わ、私は別に!とかそんなんじゃないから!とか。ツンデレかよ。
「セラフィのことを大切に想ってるのは知ってるよ。だからあの時もセラフィを守る為に俺に立ち向かっていた。俺は気に入ってるんだぜ、カガリ達のこと」
そこに嘘偽りはなく、しかし何処か穏やかに告げられてカガリは俯いた。そんな顔で言われては毒気も抜けてしまう、何も言い返せない、ズルイ、と小さく愚痴をこぼしている。
「あら、カガリったらすっかりジークと仲良―――」
「なってないから!!!」
セラフィが言い終える前に顔を真っ赤にしながら否定しているのが肯定とも言える。なんとも分かりやすい娘だとここにいる全員が思ったが口にしない辺り空気を読んでいる。
「ハッハッハ、お兄さん人気者である」
「調子に乗るのは勝手ですがあまりカガリを苛めないでくださいね?ね?」
セラフィの目が怖くなっていくが同時に弄りたくなるこの感じ。たまんねぇ!
「見てくれミレイナ。お宅の妹さんにはこんなに仲の良い友達ができてるんだぜ?」
「あら……セラフィは昔から頑固だったからお友達は少なかったのに………お姉さん感動したわぁ」
「ちっがーう!!」
袖で目元を隠して泣き真似をするくらいにはノリノリのミレイナ。旨い酒が飲めそうだ。
「ねぇセラフィ………ジークはいつの間に打ち解けててびっくりなんだけど………」
「実は見た目はカッコいいけど性格に難アリの成人男性であの光景は夢だったんじゃないかって思ってきたところよ………」
二人とも同じことを考えていたらしいがあれは夢ではないことは本人達も理解している。
実際に起こったことであり異質な力を持った存在、そして異世界の魔王と名乗る者ですよ俺は。
「真偽はどうであれ、この戦いが終わったら―――」
そういって二人は手をつなぐ。
「うん、分かってるよカガリ。恨みっこ無しだからね」
二人が決めたこと、分かれ道はもう目の前まで来ている。そのことは二人しか知らない。